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14/22

夕方の路上

*クロウ・ナガミネ(アルキュール王国 ゴートの町)



 夜の帳が降りかけた頃。

 遠景には高い城壁。

 辺りには盛り場の賑わい。



 夕刻。盛り場を奥へ奥へと進んでいく。

 遠くに見える城壁は、戦争に備えたものだ。

 この近辺では、ゴートの町ならではだろう。


 ゴートの町は、二つの顔を持っている。

 一つは、「鉄の道」を中継する商人の町という顔。

 もう一つが、東の大国ラグマータと面する潜在的な最前線という顔だ。


 小国の側からすれば、大国とはいつ何があってもおかしくない。

 「鉄の道」を敷設するときから、そうした緊張感はあったに違いない。

 だからゴートは、侯爵家の直轄地にもなっている。

 アルキュールにいる六人の侯爵の一つ、アオスタ家。

 その邸宅が住宅街にはあり、私兵がこの街には駐留している。



 ともあれ、人が集まれば酒場も賑わうわけで、この町は夜も賑やかだ。

 商人や冒険者たちが一区切りつけるのに、夜の店をよく使うせいもあるだろう。

 労い、縁切り、交渉。いくぶん酒でも入っていたほうが都合がいいに違いない。


 もうじき「青龍祭」というアルキュールの建国記念祭があり、物流が増えているからなおさらだ。



 盛り場の角を入って少し。

 僕は小さな店の前についた。

 少し汚れた木の看板を見れば酒場だとわかる。

 しかし、こじんまりとしていて、それほど賑わっているようには見えない。


 ぎい、と扉を開けて、店の中に入る。

 中には椅子が二十ほどか。

 外見とは違って、そこそこの人が入っている。


 その半分ほどは冒険者で、残りの半分は情報屋だろうな、となんとなく察する。

 じつはこの店、冒険者協会から援助を受けている、情報屋のたまり場なのだ。



 昼にゴートの町へと入ってからのことだ。

 依頼主の商人マティスや、「ロウキーパー」の他の面々と別れたあとで、僕たちは宿をとり、冒険者協会に向かった。


 一つは、ベノムさんに言われていた仕事を受注するため。

 ちなみに、依頼受注は殆どの場合、協会が仲介する。

 もちろん個人的に依頼をすることもできるが、トラブルを避け、より適切な冒険者に依頼しようとするなら、協会へと依頼を持ち込むのが無難だからだ。

 僕たちは目標の依頼を、無事受注することが出来た。


 二つには、「ロウキーパー」本部あての連絡を出すため。

 冒険者協会は、簡単なものなら、連絡の仲介もしてくれる。

 わざわざゴートの町まで来てから本部あてに連絡を出す理由は、ゴートの町まで来てから予定を変更した、という体裁をとるためだ。

 とりあえず、「ロウキーパー」本部宛てに「少し長く寮を空ける」という手紙をだした。

 

 そして重要な三つ目の目的は、情報屋を探すことだ。

 冒険者協会では、町で冒険者が利用することのできる情報屋の斡旋等もしていることが多い。

 このゴートの町、ラグマータとの国境に近いこの町なら、情報屋の仕事はさぞ多かろう。

 情報屋の紹介を頼むことはさほど不自然ではない。

 そこで僕たちは、ベノムさんからあらかじめ聞いていた一人の情報屋の名前を挙げて、その人物に会いたいと言った。

 そして僕たちが紹介されたのが、この酒場というわけだ。



 酒場の中をぱっと見まわすと、指定された外見の男がいた。

 壮年の男だ。くすんだ灰色の髪の毛をしていて、筋肉質な体つきをしている。

 傭兵か冒険者、という印象を受ける。

 というより、そうとしか見えない。


 「あなたが?」

 「おう、どうも。協会の方から紹介を受けてるよ。

  俺はウーディットっていう。

  なんか知りたいことがあるそうだな」


 豪放というか、どうも情報屋らしくない人物のように見える。

 まあ、事情を知っている人物を「情報屋」と呼ぶなら、色々な人種がいるのは当然のことか。


 懐から二通の書簡を出して手渡す。

 一つは「ロウキーパー」の封蝋つきだ。


 「さっそくで悪いんですが、これを読んで頂けますか?」

 「おう、なになに……」


 さて、欲しい情報は、行き先の村について。

 何か資材が運び込まれているっていってたけれど、絶対に商人の耳には入っているだろう。

 まずはそこからあたってみようかな。

11/19 加筆、再構成しました

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