窓口への道すがら
*マディン・ソルネイル(アルキュール王国「鉄の道」ギメリア~ゴート区間)
緑色の草原に柵。
足元には石畳。
空の色はあいにくの曇天。
晴れていれば見栄えがいいだろう街道に、ごとごとと揺れる荷馬車が二台。
「なあ、クロウ」
「なんですか?」
「……ほんっと、ひまだよな」
「マディンさん、さっきからそれ四回目です」
クロウが苦笑いする。
王都は東、ゴートの町へと続く石畳の道。
アルキュール王国に通る街道、「鉄の道」を俺たちはてくてくと歩いていた。
商人のおっさんたちは慣れたもんだが、一日中歩かされる俺たちの身にもなってほしいもんだ。
クロウに頼まれてずっと警戒態勢をとっているから、余計疲れる。
道幅が広くて石畳が歩きやすいことだけが救いだな。
なにせ交通量が多い。
さっきも逆方向の荷馬車とすれちがったばかりだ。
「というか、荷馬車しか面白みのある変化がないともいうが……」
「景色も変わってるじゃないですか」
いつからクロウは俺の考えを読めるようになったんだ、と思ったら、気怠さのあまり口に出していたらしい。
まあそりゃ景色に変化はあるがなあ。
「のんびり見られない景色が変化してもねえ」
「休憩時間を早めにとって、荷馬車で休ませてもらったらどうです?」
と悪い顔をして笑われた。
こいつ、悪巧みするときだいたい悪い顔するんだよなあ。
悪いことが出来ないタイプというか。
頭を妙に回転させるくせに根がいい奴というか。
「やめやめ。
どうせもう暫く歩かなきゃならないんだしな」
休憩するなら迂回路に入った時にするさ、と話を打ち切る。
迂回路とは言ったものの、この「鉄の道」が枝分かれしているわけではない。
今俺たちが歩いているこの「鉄の道」は、東の大国ラグマータの出資で、大陸の西端まで作られたただ一つの街道だ。
アルキュール以西に乱立する小国家群さえ一致団結で受け入れた「富をもたらす道」。
大規模流通の間隙で日々の糧を得るべく、商人たちが足繁く往来する道でもある。
きちんとした舗装が施されており、この道を使えばアルキュールを東西に横断するのに一週間ほどで移動できる。徒歩での話だ。
ちなみに、俺は、舗装された街道というのを「鉄の道」以外殆ど見たことがない。
南方のトミナール領での暮らしを思い出しても、ラグマータやアルキュール本国との取引に使われる街道はあったが、道は土が殆どだった。
ともあれ、野盗からの荷物警護ということでうすうす察してはいたが、おっさんたちは「鉄の道」を途中で外れて迂回路をとるらしい。
あまり商人が寄らない小さな村を敢えて寄っているんだとか。
村からすればありがたいおっさんだろうな。
盗賊からしても襲いやすいだろうが。




