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第91話「T-5F」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ


10日で10000PVとありがとうございます。ブックマーク、いいねもありがとうございました。

2027年10月下旬。深夜。FEPA基地。第2滑走路。


管制塔の最低限の灯りだけが光っていた。


滑走路の照明が最小限だけ灯された。


4機が降りてきた。音は小さかった。機体はほとんど見えなかった。


着陸した。そのまま誘導路を進んだ。


格納庫のシャッターが開いた。4機が滑り込んだ。シャッターが閉まった。


以上だった。




翌朝。格納庫内。


整然と並んだ8機を前に、黒田が空軍要員60名を集めた。


「本日をもって、FEPAは正式に航空部隊を発足する」


静まり返っていた。


「この機体の正式型式はT-5F。愛称は心神Fとする。本国で開発されたX-2心神の発展型だ。これまで第1陣4機で完熟訓練を行ってきた。本日、第2陣4機が到着した。8機が揃った。正式に部隊として動く」


黒田がしばらく機体を見た。


「本日夕刻、初出撃を行う。フーシ派の弾道ミサイル発射機及びミサイル集積地2か所への爆撃だ。詳細は各担当から伝える。以上だ」





同日夕刻。FEPA基地。エプロン。


8機の心神Fが格納庫から引き出された。


ウェポンズベイにGPS誘導爆弾が搭載されていた。


国連軍士官たちが集まっていた。フランス、ドイツ、英国、サウジアラビア、イタリア——各国の士官が機体を見ていた。


ドールAが1体、説明員として脇に立っていた。


フランス軍士官が機体を見回した。「あれはGCAPか?」


ドールA「違います。あの機体は今回はお披露目の純日本製マルチロール練習機です」


フランス軍士官「ふーん?君はロボット?いやAIか?中国製?」


ドールA「失礼な方ですね。あんな鉄くずと一緒にしないで下さい。私はHighlander社製の純日本製、ヒューマノイドのAttendoll-A、簡易呼称ドールA。個体番号10002号です。私はMAGI-2のリアルタイム統合学習制御を採用した世界初の量産型ヒューマノイドです」


フランス軍士官「日本てやっぱりウチの国の30年先を生きてないか?会話が自然過ぎるだろう」


ドールA「お褒め頂き光栄です」


フランス軍士官「いやいや、でも練習機って……ポーランドが掴まされたT-50じゃあるまいし」


ドールA「T-50と一緒にしないでください。あれは心神Fです」


ドイツ軍士官「あの形状はステルス? 日本では独自に第6世代機が完成していたのか?」


ドールA「T-5Fは世代で言うと5.5世代機になります」


ドイツ軍士官「するとグリペンEやKF-21とは世代が違うのか……」


ドールA「あの子はXF9-1の双発機ですよ。合計推力が200kNでA/B時には330kNを発揮します。巡航速度はマッハ2、A/B時はマッハ2.5ですので、F-22を超えます。軽量さだけが取り柄のSTOL機などと比べないで下さい。継ぎ接ぎだらけのハリボテはもってのほかです。私と同様に100%日本製のスーパークルーズも可能なAI制御機です」


ドイツ軍士官「怒ってるのか? 悪かった。あんなガラクタと一緒にするなって事だなw」


サウジ軍士官「あの形状はウェポンズベイ付きでステルス形状なんだが、5.5世代という事は……」


ドールA「はい。GCAPへ採用候補のステルス塗料が使用されています」


サウジ軍士官「もう、第六世代機でいいじゃないか……」


ドールA「いえ、無人機の僚伴の機能はございません。現在は……」


サウジ軍士官「現在は……って将来があるって事だろ……」


ドールA「その情報に関する公開権限は当機には備わっておりません」


イギリス軍士官「では、この機体の特徴は?」


ドールA「この機体は当拠点のUSCであるMAGIに直結しており、Link22他、様々なネットワーク網で連結されて、戦域管制に従い、統制を受け入れます。極端な話、MAGIが存在しないと自立飛行すら困難になる制約があります。まあ、搭載コンピュータでもコブラターン程度は難なくこなしますが」


イギリス軍士官「では、ここが攻撃されてしまえば終わりって事か?」


ドールA「いえ、MAGIシステムは複数のバックアップ機能を備えています。代表的なのはアンコーナ、愛知、ジブチの3拠点に全く同じUSCが設置され連携されていますので、その可能性は皆無に近いです」


イギリス軍士官「なんてことだ」


ドールA「補足しますと心神FはステルスF機ですが、ステルス性能はF-22級であり、GCAPとは比べ物になりませんので、あくまでGCAPの下位互換が適当だと思われます。またこの機体はFEPA専用であり、現時点では本国でも採用の予定はございません」


フランス軍士官「は? なぜだ! 売らないのか?」


ドールA「正確にはT-5A(心神A)が販売と日本の練習機として採用予定です。心神Fのステルス塗料を通常塗料にスペックダウンして、初期コスト、ランニングコストを抑えた仕様になります。価格や納期等についてはJDETAの担当者様にご確認ください」


フランス軍士官「ほう、なるほど。F-22のランニングコストを負担できる国は限られているからな。だが、これでT-50を買ったポーランドが哀れだな」


黒田が口を開いた。「一応言っておきますが、正直こいつは形状自体は完全にステルス性を追求しきれた機体では無いので、ステルス塗装無しだとKF-21よりわずかに勝る程度と思って頂いた方がいいと思いますよ。尚、本国は心神Fの国外販売は恥ずかしいから絶対にしないそうですw」


国連軍士官たちがしばらく黙った。


フランス軍士官が静かに言った。「……日本は恥ずかしいものを我々に見せているのか?」


「そういうことです」と黒田が静かに笑った。





日没後。コックピット。


ライアン・コールが心神Fのコックピットに収まっていた。


第一小隊の小隊長。元米空軍F-22ラプターパイロット。テキサス出身。36歳。コールサイン「カウボーイ」。


ヘルメットディスプレイが点灯した。正面の液晶パネルが情報を展開した。


「こいつ、F-22より圧倒的に電子化されてるんだよな。なんだよ。ヘルメットディスプレイと液晶1枚って」


シートに体を預けた。


「推力変更ノズルの効きがF-22よりいいんだよな。もうちょっとシート倒れればGに耐えられるのに……」


MAGIとのリンクが確立された。バイザーに目標情報が展開された。


「MAGIっちが今までの攻撃地点から衛星画像を元に割り出しているのか。日本てこんな偵察衛星持ってたのかよw」


今回の目標はフーシ派弾道ミサイルの発射機及びミサイル集積地2か所だった。


自分の目標はミサイル集積地の1か所だけだった。


エンジンを点火した。XF9-1双発が唸りを上げた。F-22とは違う音だった。もっと鋭く、もっと滑らかだった。


離陸した。


コックピット内。飛行中。


暗闇の中を飛んでいた。


僚機とは光通信のみで連携をとっていた。電波は一切発しなかった。


バイザーにMAGIからのデータが流れ続けていた。目標の位置、進入ルート、脅威情報——全部MAGIが計算していた。


「バイザーの情報に従がうだけの簡単なお使いですよッと」


あっという間に目標地点に近づいた。


バイザーが投下タイミングを示した。


ウェポンズベイが開いた。


速かった。F-22の半分以下じゃないか?


GPS誘導爆弾4発を投下した。


ウェポンズベイが閉まった。


数秒後——地上に火柱が上がった。


燃え盛る火柱を背に離脱した。


バイザーに僚機の状況が映った。発射機2か所への攻撃も完了していた。


「子供のお使い程度の任務だ。早く帰って牛丼を食おう」


マッハ2の心地よい轟音もわずかにジブチ基地に帰還した。


結局彼らは格納庫を出てから格納庫に駐機するまで、ただの一度も電波を発しなかった。




格納庫。


シャッターが閉まった。


コールがコックピットから降りた。


整備士が機体を確認していた。


コールが格納庫を出た。食堂に向かった。


牛丼を注文し、すかさず提供される牛丼を口に運ぶとつぶやいた。


「安い、早い、うまい」とコールがつぶやいた。





東京。内閣官房。


城島が橘に報告した。「心神Fの初出撃が成功した。全機帰還した。損害なし。電波封止を完璧に維持したそうだ」


「そうか」


「国連軍士官の反応はかなり大きかったそうだ」


「そうか」


「ドールAが説明員として大活躍したそうだ」


橘が少し間を置いた。「そうか」


「ライアン・コールという元F-22乗りが第一小隊長に就いた。牛丼をこよなく愛する男らしい」


橘が少し間を置いた。「それは重要な情報か?」


「——いや、俺が気に入っただけだ」


城島がため息をついた。「怖いな、あのパイロット。F-22より電子化されてるって言ってたそうだ」


「そうだろう」


「電波も一切発しなかった。MAGIとの光通信だけで動いた」


「そうだ。それが設計思想だ」


城島がしばらく橘を見た。「最初からここまで計算していたのか?」


「さあな」


橘は答えなかった。冷めたコーヒーに手を伸ばした。飲んだ。やはり冷めていた。


窓の外に霞が関の秋の夜が広がっていた。


ジブチでは心神F8機が格納庫の中で静かに冷えていた。コールが牛丼を食い終えていた。MAGIが今回の出撃データを解析していた。国連軍士官たちはまだ話し合っていた。


冷めたコーヒーに手を伸ばしたが、もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。

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