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第80話「SUNOMATAオペレーション」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ


2026年12月初旬。北京。中国外務省。


在中日本国大使の田辺が呼ばれた。


中国外務省の担当者が向かいに座った。表情が固かった。


「先日のジブチでの事案について抗議します。中国軍駐屯地にミサイルが着弾しました。日本政府の見解を伺いたい」


田辺が静かに答えた。「日本政府としては、当該PMCとは一切の指揮命令関係にありません。FEPAは国連安保理決議に基づき設立された国連軍の実務を受託している民間組織です」


「しかし日本企業がFEPAの株主ではないですか?」


「民間企業の投資判断です。日本政府としては関与していません」


担当者がしばらく黙った。「——再発防止を求めます」


「承知しました」と田辺が続けた。「なお、FEPA株主の一人として、施設の安全確保のため敷地全体をコンクリート防護壁で囲う工事を近日中に開始すると伺っています。これにより再発防止に努めると聞いています」


担当者が少し表情を変えた。「——防護壁ですか」


「そうです。5mのコンクリート製です」


担当者がしばらく黙った。


会議が終わった後、担当者は上司に報告した。


「——防護壁を作るそうです」


上司がしばらく黙った後に言った。「——しまった。スパイが入りにくくなる」


「フーシ派が余計なことを——」


「——以後はフーシ派への武器供与を慎重にする」





同じ頃。東京。防衛省。定例記者会見。


記者が手を上げた。「大泉大臣、ジブチの駐留基地にイエメンのフーシ派からの攻撃を受けたというのは本当でしょうか?」


大泉進太郎が答弁台に立った。「そのような事実はございません。正確には国連軍活動を受託している民間のPMCが弾道ミサイル、巡航ミサイル、自爆ドローンの攻撃を受けたようです」


「自衛隊駐屯地ではないと?」


「はい。自衛隊駐屯地でも他の国の駐屯地でもありません。但し、中国軍駐屯地に流れ弾のミサイルが1発着弾してしまったと報告を受けております。この場を借りてお見舞いを申し上げます」


室内がざわめいた。


別の記者が手を上げた。「では、明日は我が身ではないですか?」


「勘違いをしないでいただきたい」と大泉が静かに続けた。「該当のPMCは正式に国連安保理決議に基づき結成された国連軍の実務を担当しているにすぎません。我々日本政府としても、非政府系組織が弾道ミサイルなどの戦略兵器を保有することを良しとしておりません」


「では、自衛隊の命は仕方がないと?」


「いえ、そんなことは言っておりません」と大泉が続けた。「すでに航空自衛隊長沼駐屯地のパトリオット部隊をジブチの自衛隊駐屯地に展開する準備を開始しており、近日中に派遣する予定です」





【掲示板】2026年12月・大泉会見スレ


【速報】大泉防衛相「流れ弾のミサイルが中国軍駐屯地に」お見舞い申し上げます Part1


1: 2026/12/XX(月) 15:11:22 ID:Xk7mNpQ3

大泉、また名言連発www


2: 2026/12/XX(月) 15:12:44 ID:mR8vwZ09

「流れ弾のミサイル」って言い方がwww


3: 2026/12/XX(月) 15:13:33 ID:Tb3nHsW1


>>2 しかも「お見舞い申し上げます」ってwww


4: 2026/12/XX(月) 15:14:11 ID:nQ0vXc7R


>>3 外交的に完璧すぎるw 嫌味にならないギリギリのラインwww


5: 2026/12/XX(月) 15:15:44 ID:zW4qRm5S

「自衛隊駐屯地でも他の国の駐屯地でもない」——これ重要だよな


6: 2026/12/XX(月) 15:16:55 ID:pL2aKj8F


>>5 つまり中国に文句言われる筋合いもないってことだ


7: 2026/12/XX(月) 15:17:33 ID:Xk7mNpQ3

PAC3をジブチに送るのかよ


8: 2026/12/XX(月) 15:18:44 ID:mR8vwZ09


>>7 「近日中に派遣する予定」ってさらっと言ってたな


9: 2026/12/XX(月) 15:19:55 ID:Tb3nHsW1

「非政府系組織が戦略兵器を保有することを良しとしない」——これFEPAへの牽制では?


10: 2026/12/XX(月) 15:20:33 ID:Toshi_k9


>>9 違う。フーシ派への牽制だ。見えないとこで動いてる人間がいるんだよ


11: 2026/12/XX(月) 15:21:22 ID:nQ0vXc7R


>>10 また来たw でも今回は確かにそう読めるな


12: 2026/12/XX(月) 15:22:11 ID:zW4qRm5S

記者の「明日は我が身では?」への返しも完璧だったな


13: 2026/12/XX(月) 15:23:44 ID:pL2aKj8F


>>12 「国連決議に基づく」で全部返せるもんな


14: 2026/12/XX(月) 15:24:55 ID:Xk7mNpQ3

大泉、成長したな——最初の「自衛手段は持っています」から


15: 2026/12/XX(月) 15:25:33 ID:Toshi_k9


>>14 最初から設計してある答弁だよ


16: 2026/12/XX(月) 15:26:22 ID:mR8vwZ09


>>15 誰が設計したんだ?


17: 2026/12/XX(月) 15:27:11 ID:Toshi_k9


>>16 さあなw





同じ頃。ジブチ。FEPA基地。


黒田が田中現場所長を呼んだ。


「田中さん、追加工事をお願いしたい」


田中が少し身構えた。「——何ですか?」


「5mのコンクリート防護壁で基地全体を囲ってくれ。JDETA、FEPA施設の完全な囲いだ。半年以内に完成させてほしい」


田中がしばらく固まった。


「——半年以内?」


「そうだ」


田中が手帳を取り出して計算を始めた。


「港側はいいとして、10km×15kmだから40kmあるんですよ——」


しばらく計算が続いた。


「——防爆仕様だから厚さが底部1mの上部0.5mとして3.75m²、基礎が幅5m×厚さ1mとして5m²——合計8.75m²×40000mだから350000m³——ざっと250億ですね」


田中がしばらく手帳を見たままだった。


「——半年以内か」


独り言だった。


計算を続けた。


40kmを半年で——普通にやったら絶対に無理だ。


「——そうだ」と田中がつぶやいた。「ブロック施工にしよう」


担当区画ごとに分ける。各班が担当ブロックを競争で仕上げる。早く完成した班にボーナスを出す——羽柴秀吉の墨俣城と同じ発想だ。


「——これなら半年でいける」




田中がマリーニの執務室に向かった。


「マリーニさん、防護壁工事で250億になります。発注書をください」


マリーニが電卓を取り出した。「——承知しました。今日中に用意します」


「よろしくお願いします」




田中が執務室を出た後、自分のスマートフォンを取り出して本社に電話を入れた。


「本社ですか。田中です。また追加です。防爆仕様のコンクリート防護壁、40kmです。250億の工事で半年以内完成です。一線級の土木技術者を20人寄越してください。PC300が20台、50tクローラクレーンも20台オペ付ですよ!プラントは中古で2基——200m³/hで。砕石プラントも2基、セメントは船便で——」


電話の向こうで本社がしばらく黙った。「——それっていくらぐらいになるんですか?」


「250億です!! 半年以内でやります。ブロック施工にして各班を競争させてボーナスで釣ります。羽柴秀吉方式です」


「——羽柴秀吉?」


「墨俣城ですよ!!」


「——分かりました」


電話が切れた。田中がため息をついた。「——またか。でも——」


窓の外を見た。ジブチの砂漠が広がっていた。


「——半年で40kmのコンクリート防護壁か。やってやる」





夜。黒田が特殊作戦中隊の指揮官を呼んだ。


「対人センサーと収音センサーを境界線上に設置する。中国、フランス、米国の基地と港湾に面した方面に集中配置だ。年内に整備する」


「——了解しました」


「センサーに引っかかったものは処理して埋めろ。私への報告は月末に数字だけでいい」


指揮官がしばらく黒田を見た。「——了解しました」


「以上だ」





東京・内閣官房。


城島が橘に言った。「大泉の会見、うまくやったな」


「そうか」


「『流れ弾のミサイル』『お見舞い申し上げます』——誰が考えたんだ?」


橘が少し間を置いた。「大泉だろう」


「——本当か?」


「さあな」


城島がしばらく橘を見た。「中国が静かになったな」


「防護壁の話を伝えたからだ」


「——スパイが入りにくくなると気づいたか」


「そうだ」


「フーシ派への武器供与も慎重になるかもしれないな」


「——それでいい」


城島がため息をついた。「——怖いな、お前は」


橘は答えなかった。冷めたコーヒーに手を伸ばした。飲んだ。やはり冷めていた。


窓の外に霞が関の冬の空が広がっていた。


ジブチでは田中現場所長が防護壁の設計図を書いていた。「羽柴秀吉方式」と書かれたメモが手帳に残っていた。特殊作戦中隊がセンサーの配置図を確認していた。大泉の会見が掲示板で話題になっていた。北京では中国外務省の担当者が「フーシ派が余計なことを」と報告していた。


全部同時に動いていた。


冷めたコーヒーに手を伸ばしたが——もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。

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