第79話「基地防衛」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2026年12月初旬。ジブチ。FEPA基地。午前2時。
レーダーに反応が出た。
「——接近目標多数!」とアンナ・コワルスキが叫んだ。「北方よりドローン50機、巡航ミサイル20発、弾道ミサイル5基——フーシ派の全力攻撃です!」
地下司令部に警報が鳴り響いた。
黒田が即座に無線を取った。「全部隊、戦闘配備!停泊中のはやぶさ改15隻、全砲塔起動!教導隊の09式5両、Link22統合!」
「——了解!」
停泊中のはやぶさ改15隻の35mm4連装が一斉に空を向いた。
「ドローン接近!距離30km!」
「AHEAD弾、全艦射撃開始!」
Link22が15隻の射撃データを統合した。50機のドローンが一枚の戦術図に映し出された。
弾幕が展開された。
1機、5機、15機、30機——次々と落ちた。
「ドローン全50機撃墜!」
「巡航ミサイル接近!距離50km!速力900km/h!」
09式5両のAESAレーダーが捕捉した。
「BMDキャニスター、射撃開始!AHEAD弾同時展開!」
09式のSAMが飛んだ。AHEAD弾が軌道上に弾子の雲を置いた。
1発、5発、10発、17発——撃墜。
「3発打ち漏らし!」
「USC、対応!」
地下のUSCラックが動いた。打ち漏らした3発の巡航ミサイルのGPS信号にアクセスした。
スプーフィングが始まった。
3発が突然方向を変えた。
海面に落ちた。爆発の水柱が3本上がった。
「——巡航ミサイル全20発無効化!」
「弾道ミサイル接近!マッハ8!高度80km!」
「BMDキャニスター残弾確認!」
「5両×2発=10発!」
「射撃開始!」
09式のBMDキャニスターが次々と発射された。
1基撃墜、2基撃墜、3基撃墜——
「残り2基——BMD残弾なし!」
「USC、対応!」
USCが弾道ミサイルの慣性誘導の終末段階に介入した。
わずかな角度のずれを——
誘導した。
2基の弾道ミサイルが軌道を変えた。
ジブチ市街を外れた。
海岸沿いに着弾した。
爆発の閃光が2つ上がった。
地下司令部が静まり返った。
「——被害確認!」
「FEPA基地、損害なし!ジブチ市街、損害なし!」
「——着弾地点は?」とアンナが続けた。
しばらく沈黙があった。
「——中国軍基地の敷地内です」
地下司令部が再び静まり返った。
黒田が少し間を置いた後に静かに言った。「——記録しておけ。フーシ派の誤爆だ」
「——了解しました」
翌朝。中国軍基地から抗議が来た。
「——フーシ派の攻撃により我が軍基地に着弾した。断じて許せない」
黒田がマリーニを見た。
マリーニが静かに言った。「——FEPAは関知していません。フーシ派にお申し出ください」
東京・内閣官房。
城島が橘に報告した。「ジブチ基地が全力攻撃を受けた。損害なし。弾道ミサイル1発が中国軍基地に着弾した」
橘がしばらく黙った。「USCの話は聞いていない」
「そうだな」
「——フーシ派の誤爆だろう」
「そうだな」城島が苦笑した。「中国が怒っている」
「フーシ派に言えばいい」
「——怖いな、お前は」
同じ頃。ジブチ。地下司令部。
黒田が城島に電話を入れた。
「城島、当面の対応を報告する。陸自駐屯地へのPAC3展開を要請する。それと特殊作戦中隊の第一小隊を平時防空任務に就かせる。在庫の09式で防空中隊を編成する」
「——了解した。PAC3は調整する」
「それともう一つ」
「なんだ?」
「FEPAに空軍が必要だ」
城島が止まった。「——空軍?」
「敵の発射機を叩く必要がある。マルチロール機を4機小隊×3で1中隊、中隊3つで大隊——36機に予備機5、教導部隊4で45機大隊を要求する。機種はGCAPかF-35だ」
「——F-35を45機? 正気か?」
「基地を守るには空が必要だ」
城島がしばらく黙った。「——橘に相談する」
しばらくして橘から電話が入った。
「T-5を生産ラインに乗せるから買え」
城島「なんでお前が知ってるんだよ」
黒田「T-5ってどこの練習機ですか? 使い物になりませんよ?」
城島「三菱重工のブラックプロジェクトだ。何であいつが知ってるんだか——あれはX-2心神だよw IHIのXF9-1の双発機で30t推力の化け物だ。ウェポンズベイも装備した正真正銘の第5.5世代機だ。F-22より上かもしれん。三菱重工のラインもスマート化を独自スパコンで構築してるはずだ。半年で実機が1小隊出てくるはずだ」
黒田「——それ!ください!!」
城島「ったく。まだ防衛庁も予算化してないのに……ちょっと待て確認する」
城島が三菱重工の技本担当者に電話を繋いだ。
「俺だ、T-5だがな、自衛隊の前に至急欲しい奴がいる。半年で4機出せるか? 製造ラインのスマート化が進んでるのは知ってるぞ。ん? 複合炭素繊維のガワ? 出資して何とかしろ。80億で45機、2年半以内に完納だ。てか、T-4の更新も重なるからラインは半年の間に増やせよ。橘から本社には電話入れさせる。ああ、GCAPの開発塗料使えよ」
電話が切れた。
城島「黒田、大丈夫だ。1機100億な!」
黒田「聞こえてますよ? 80億だから85とか90億じゃないんですか?」
城島「少しくらい開発費寄越せよ。技本はカツカツでやってんだから」
黒田「——承知です。100億で。半年で4機、1年で10機、1年半で20機、2年で30機、2年半で45機は厳守で」
城島「早くなったら増額な」
黒田「了解です。マリーニに契約書作らせますが、FMS特会あてでいいですね。手付けで2000億振り込ませます」
城島「それでいい。商売人らしくなったな」
電話が切れた。
黒田がマリーニを見た。「T-5の契約書を作ってくれ。FMS特会あてで45機100億円、手付け2000億円だ」
マリーニが電卓を取り出した。「——総額4500億円ですね」
「そうだ」
「手付け2000億円は——」
「資本準備金から出せ」
「——了解しました」マリーニが続けた。「ところで——T-5というのは?」
黒田が少し間を置いた。「——練習機だ」
「練習機を45機、4500億円で?」
「そうだ」
マリーニがしばらく黒田を見た。「——詳細は聞かない方がいいですね」
「そうだ」
マリーニが電卓を置いた。「——CFOとして一点だけ」
「なんだ?」
「早く納入された場合の増額条項も入れておきます」
黒田が少し笑った。「——好きにしろ」
東京・内閣官房。
城島が橘に報告した。「黒田がT-5を45機、2000億の手付きで契約した」
橘がしばらく黙った。「そうか」
「——お前、T-5のことどこで聞いた?」
「さあな」
「三菱重工の本社には電話を入れておいてくれと言ったよな」
「入れておく」
城島がため息をついた。「——怖いな、お前は。三菱重工のブラックプロジェクトまで知ってるとは」
橘は答えなかった。冷めたコーヒーに手を伸ばした。飲んだ。やはり冷めていた。
窓の外に霞が関の冬の夜が始まっていた。
ジブチでは基地防衛が完了していた。中国軍基地で爆発があった。T-5の契約書が作られていた。
全部同時に動いていた。
冷めたコーヒーに手を伸ばしたが——もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。




