第39話「選挙戦」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2026年1月下旬。
解散から三日が経っていた。
テレビのワイドショーが一斉に火を噴いた。
「だまし討ちです」
コメンテーターが断言した。
「支持率が高いうちに選挙をやる。それだけの理由で国民を振り回している。大義が全く見えません」
別のコメンテーターが続けた。
「新年度予算が年度内に成立しない。4月から実施予定だった高校授業料の無償化が遅れます。物価高対策も遅れる。国民生活への影響は計り知れません」
司会が画面を指した。
「こちら、受験生の声です」
VTRが流れた。
「センター試験の直前に選挙なんて——勉強に集中できません」
「親が選挙の手伝いに駆り出されて、受験の送り迎えができないかもしれない」
スタジオに戻った。
「受験生がかわいそうです」コメンテーターが言った。「総理は受験生のことを考えているんでしょうか」
別の番組では気象予報士が言った。
「今年の冬は記録的な大雪が予想されています。投票日の2月8日も荒天の可能性があります」
「高齢者が雪の中を投票所に向かう——転倒事故が心配です」コメンテーターが言った。「大雪の中、年寄りを殺す気かという声も上がっています」
新聞各紙の一面が並んだ。
「大義なき解散」
「冬の強行解散、民意を問う資格あるか」
「経済安保とは何か——高道首相、説明責任を果たせ」
党首討論会。テレビ中継。
野党第一党の党首が高道に迫った。
「総理、解散の大義を明確にしてください。経済安保と言いますが、具体的に何をするんですか。スマートドックで何を作るんですか。補正予算の中身を国民に説明してください」
高道は静かに答えた。
「日本の産業構造を変えます。製造業の基盤を立て直します。雇用を守ります。その方針について国民の信を問いたい」
「具体性がありません」
「選挙戦を通じて丁寧に説明します」
「公明党を切った理由は何ですか。三十年の連立を突然解消した。公明党の支持者への説明は」
「政策的な方向性の違いです」
「どんな違いですか」
「経済安保の推進スピードについてです」
「それだけですか」
「それだけです」
野党党首が身を乗り出した。
「総理、国民をなめていませんか」
高道が野党党首を見た。
「国民をなめているのは、何も決められなかった過去三年間ではないですか」
議場がざわめいた。
野党党首が言葉に詰まった。
高道は続けた。
「私は決めます。動かします。それについて国民に信を問います。何が問題ですか」
【掲示板】2026年1月・衆院選スレ
【解散】高道、抜き打ち解散!だまし討ちか経済安保か Part1
1: 2026/01/24(土) 10:11:22 ID:Xk7mNpQ3
解散したぞ
2: 2026/01/24(土) 10:12:44 ID:mR8vwZ09
マスコミが一斉に叩いてる。だまし討ちだって
3: 2026/01/24(土) 10:13:33 ID:Tb3nHsW1
受験生がかわいそうとか大雪で年寄りが死ぬとか言ってるな
4: 2026/01/24(土) 10:14:11 ID:nQ0vXc7R
でも支持率79パーセントで解散するのは当然じゃないか。チャンスを使わない方がおかしい
5: 2026/01/24(土) 10:15:44 ID:zW4qRm5S
マスコミの批判、全部「かわいそう」系だな。政策の批判じゃない
6: 2026/01/24(土) 10:16:55 ID:pL2aKj8F
>>5 それな。受験生がかわいそうとか大雪で年寄りが死ぬとか、そればっかり
7: 2026/01/24(土) 10:17:33 ID:Xk7mNpQ3
党首討論で高道さん強かったな。「何も決められなかった過去三年間」は刺さった
8: 2026/01/24(土) 10:18:44 ID:mR8vwZ09
>>7 あれは西破と石田へのカウンターパンチだな
9: 2026/01/24(土) 10:19:55 ID:Tb3nHsW1
野党が言葉に詰まってたw
10: 2026/01/24(土) 10:20:33 ID:Toshi_k9
見えないとこで動いてる人間がいるって言ったけど、いよいよ表に出てくるぞ
11: 2026/01/24(土) 10:21:22 ID:nQ0vXc7R
>>10 またお前かw 何が出てくるんだ
12: 2026/01/24(土) 10:22:11 ID:Toshi_k9
選挙が終わった後に分かる
13: 2026/01/24(土) 10:23:44 ID:zW4qRm5S
>>12 お前ほんとブレないなw
14: 2026/01/24(土) 10:24:55 ID:8vYnKp2A
工場から来ました。工場は選挙関係なく3交代で回ってます
15: 2026/01/24(土) 10:25:33 ID:pL2aKj8F
>>14 また来たw 選挙どうする?
16: 2026/01/24(土) 10:26:22 ID:8vYnKp2A
>>15 高道に入れる。給料上がったし仕事が変わった。文句ない
17: 2026/01/24(土) 10:27:11 ID:Xk7mNpQ3
>>16 シンプルでいいな
18: 2026/01/24(土) 10:28:44 ID:mR8vwZ09
マスコミは批判してるけど、現場は動いてる。その差が票になるかどうかだな
19: 2026/01/24(土) 10:29:55 ID:Tb3nHsW1
公明党切ったのは正解だと思う。あの党、何年も同じことしかしてなかった
20: 2026/01/24(土) 10:30:33 ID:nQ0vXc7R
>>19 神田議員が「ようやく切れた」ってどこかで言ってたらしいw
21: 2026/01/24(土) 10:31:22 ID:Toshi_k9
神田先生は三十年待ってたんだよ。分かってる人には分かる
22: 2026/01/24(土) 10:32:11 ID:zW4qRm5S
維新と組むらしいな。大泉のパイプか
23: 2026/01/24(土) 10:33:44 ID:pL2aKj8F
>>22 大泉、親父と違う使われ方してるなw
24: 2026/01/24(土) 10:34:55 ID:Xk7mNpQ3
>>23 親父は郵政で切り捨て、息子は維新で繋ぎ。皮肉だなw
25: 2026/01/24(土) 10:35:33 ID:8vYnKp2A
親父に「高道に入れろ」って言ったら「そうするわ」って言ってた
26: 2026/01/24(土) 10:36:22 ID:mR8vwZ09
>>25 親父さん、工場閉まってから随分変わったな
27: 2026/01/24(土) 10:37:11 ID:8vYnKp2A
>>26 「日本、本気出してきた」って言ってた。最近よく言う
28: 2026/01/24(土) 10:38:44 ID:Toshi_k9
その親父さんの感覚が正しいんだよ
29: 2026/01/24(土) 10:39:55 ID:Tb3nHsW1
選挙、どうなるかな
30: 2026/01/24(土) 10:40:33 ID:Toshi_k9
勝つよ。見えないとこで動いてる人間がいるから
31: 2026/01/24(土) 10:41:22 ID:nQ0vXc7R
>>30 根拠は?
32: 2026/01/24(土) 10:42:11 ID:Toshi_k9
工場が3交代で回ってるからw
33: 2026/01/24(土) 10:43:44 ID:8vYnKp2A
>>32 俺のことかw
34: 2026/01/24(土) 10:44:55 ID:Toshi_k9
>>33 そうだw お前が動いてる限り日本は大丈夫だ
35: 2026/01/24(土) 10:45:33 ID:8vYnKp2A
なんかプレッシャーかかるなw でも頑張る
2026年2月初旬。選挙戦終盤。
高道早苗が街頭に立った。
冬の空の下、聴衆が集まっていた。
「三十年間、変えられなかったことを変えます」高道は言った。「製造業の雇用を守ります。地方に人を戻します。日本の産業を世界一にします」
拍手が起きた。
大泉進太郎が別の街頭に立っていた。
「維新と一緒に、日本の経済安保を前に進めます」大泉は言った。「若い世代が希望を持てる日本を作ります」
聴衆がスマートフォンを向けた。
片貝かつきが企業回りをしていた。
「財政の規律を守りながら、必要な投資は続けます」片貝は静かに言った。「産業基盤の整備は、将来世代への投資です」
その頃。永田町のオフィス。
佐藤貴子はモニターを見ていた。
複数の画面が並んでいた。
X、YouTube、Instagram——各SNSのトレンドと投稿数が更新されていた。
佐藤の周りに五人のスタッフがいた。
「西破派の候補のネガティブ投稿、拡散中」スタッフが言った。
「自然に流れるのを確認するだけでいい」佐藤は静かに言った。「手は出すな」
「高道さんの演説動画、再生数が——」
「どのくらい」
「三時間で二百万回」
佐藤が小さく頷いた。
「次は片貝さんの企業回りの動画を出す。経済系のアカウントに流してくれ」
「了解です」
「旧安田派の候補への支援、各選挙区の担当者への連絡は」
「全員に届いています」
「応援演説のスケジュールは」
「高道さん、大泉さん、片貝さん——全員、旧安田派の選挙区に重点配置しています」
佐藤はモニターを見たまま言った。
「西破派と石田派は」
「最小限です」
「それでいい」
2026年2月8日。投開票日。
夜。
開票が始まった。
午後八時。NHKが一斉に当選確実を打ち始めた。
自民党の議席が積み上がっていった。
維新が協力した選挙区で、次々と当選確実が出た。
旧安田派の在野組が、次々と返り咲いた。
西破派と石田派の候補が、次々と落選した。
中道改革連合——立憲民主党と公明党が急ごしらえで結成した新党——が次々と議席を失っていった。
午後十一時。
テレビのキャスターが興奮した声で言った。
「自民党の獲得議席が三百を超えました——」
午前二時。全議席確定。
自民党:316議席(戦後最多・単独で定数の3分の2超)
日本維新の会:36議席
中道改革連合:49議席(公示前172から惨敗)
国民民主党:28議席
参政党:15議席
チームみらい:11議席
共産党:4議席
その他:6議席
自民党と維新の連立与党で352議席。
参議院で法案が否決されても、衆議院で再可決できる。
憲法改正の発議も可能になった。
そして——
自民党は比例代表で67議席を獲得したが、名簿登載者が足りなくなった。
14議席を他党に振り分けるという、異例の事態が生じた。
テレビで解説者が言った。
「勝ちすぎた。比例の名簿を使い切ってしまいました。これほどの圧勝は誰も想定していなかった」
橘慎一郎は執務室でモニターを見ていた。
「316か」
スマートフォンが震えた。
城島からだった。
「歴史的圧勝。比例で名簿が足りなくなったぞ」
橘は返信を打った。
「想定外だ」
城島から返信が来た。
「お前でも想定外があるんだな」
橘は少し間を置いた。
「勝ちすぎた」
もう一通来た。
「怖い男だな、お前は」
橘は答えなかった。
スマートフォンをしまった。
窓の外に東京の夜景が広がっていた。
冷めたコーヒーに手を伸ばした。
飲んだ。
やはり冷めていた。




