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第153話「代償」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ


 2030年11月。世界連合創設宣言から6時間後。



 北極海。水深400メートル。


 米海軍攻撃型原子力潜水艦USSアナポリスが静かに進んでいた。


 MAGIから座標が届いた。


「目標——ロシア北洋艦隊SSBN。距離43海里。攻撃許可」


「魚雷発射」


 2本の魚雷が海中を走った。6分17秒後、爆発音が響いた。SSBN1隻、撃沈。


 ノルウェーの対潜哨戒機P-8が北極圏の低空を飛んでいた。ソノブイを投下しながらMAGIに位置情報を送り続けた。さらに南の海域でもう1隻のSSBNが探知された。フィンランドの哨戒機が急行した。USSシカゴが針路を変えた。




 ロシア上空。


 E-350Bが3機、ロシア領空に進入していた。機内でオペレーターが無数のセンサーデータを処理していた。ICBMサイロの位置。防空レーダーの周波数。軍事施設の熱源反応。全てMAGIにリアルタイムで送られた。


優先目標リスト(第一次)

ICBMサイロ:348箇所

地対空ミサイル基地:89箇所

弾薬・燃料集積所:127箇所

軍需工場(稼働中):43箇所

合計:607箇所


欧州空軍への割り当て開始

推定完了まで:最低14日


 第3飛行中隊。コールサイン「サムライ3」。


 15機のT-5FCがE-350BのCAPに就いていた。MAGIから通信が入った。


「ロシア西部防空地帯にS-400が1基、稼働を確認。回避ルートを送信します」


「コピー」


 T-5FCが回避した。MAGIが照射源に無人機を向けた。S-400の発射車両が爆発した。


 EU空中給油機KC-46がロシア領空に入った。T-5FCの第7・第8飛行中隊が両翼を固めた。残り7個飛行中隊がロシア全域に散開した。MAGIの指示に従って欧州空軍のトーネード、タイフーン、ラファールが次々と地上目標に向かった。




 ロシア南部。ICBMサイロ群。


 MAGIはサイロの換気口と燃料輸送路を全て把握していた。タイフーンが降下した。精密誘導爆弾が換気口に吸い込まれた。地下で爆発が起きた。ICBMの発射は不可能になった。


 しかし空は完全には沈黙していなかった。ロシアの残存防空システムが断続的に反応した。


 作戦開始から4時間。損害報告が更新された。


無効化完了:1,847箇所

進行中:2,341箇所

推定残作業:10〜14日


損害:

 NATO軍機 37機(撃墜)

 T-5FC   2機(撃墜)

 E-350B   0機




 アンコーナ。FEPA司令部。


 黒田玲二は損害報告を見た。


「T-5FC2機。脱出は」


「1機は脱出を確認、救出作戦を準備中です。もう1機は——」


 幕僚が静かに答えた。


「コールサイン、サムライ3-6。撃墜後の応答なし。機体の残骸がロシア領内で確認されています。クリス・バウアー大尉。オーストリア出身。FEPA歴3年です」


 室内が静かになった。FEPAが設立されてから初めての戦死者だった。


 黒田は立ち上がった。


「作戦を継続してください」


 それだけ言った。





 モスクワ。クレムリン。


 将軍たちが動いたのは、SSBN発射命令から8時間後だった。ブーチンは最後まで抵抗した。それでも将軍たちは止まらなかった。連行された。


 将軍の一人がマイクの前に立った。


「本日、ロシア連邦は新たな指導体制に移行します。即時停戦を求めます」


 東京。世界連合安全保障理事会(緊急会合・リモート)。


 台湾の西部3都市が中国軍の支配下に入った。台北への圧力が増していた。





 高道香苗総理が発言した。


「武力による現状変更は認められません。中国による台湾への武力侵攻を非難する決議を提案します」


 採決が行われた。賛成7。反対0。棄権0。決議が採択された。


「世界連合軍として台湾への派兵を決定します。FEPAは補給中で動けません。米軍は議会承認が取れていない。打てる手は一つだけです」


「自衛隊を派遣します。世界連合軍の一員として」




 翌日。国会議事堂。


 野党の筆頭が立ち上がった。


「専守防衛の根本的な違反です!日本が戦争に参加するということですか!」


「世界連合軍の一員としての派遣です」と高道は静かに答えた。「拒否権なき安保理が採択した決議に基づきます」


「その世界連合とやらの法的根拠は何ですか!昨日できたばかりではないですか!」


「ならばお聞きします」と高道は言った。「今この瞬間に台湾が陥落することを、日本は黙って見ているべきだということですか」


 委員会室が静まった。





 民放各局が特番を組んだ。


「自衛隊、初の実戦参加か——専守防衛は死んだ」


「高道政権、歴史的暴走——憲法学者が一斉批判」




 同日。自民党本部。


 佐藤貴子広報本部長は2本の動画を同時に準備していた。


 国内向けは民放各局への素材提供だった。東日本大震災の後、台湾が送った支援物資。阪神淡路の後、台湾から届いた義援金。能登の後、台湾の人々が並んで募金を投じる映像。そして今日、台北で煙が上がっている映像。


 貴子がマイクの前に立った。


「台湾は日本の友好国です。日本国民は、日本が災害に合うたびに全力で寄付金を投じ、心配してくれた台湾が今火の海になっていても、助けるべきではないと言うのですか?」


 海外向けは英語・中国語・日本語の3言語で同時配信された。


「台湾は元中華民国の正当な後継であり、我々が悔いても悔やみきれない、侵略してしまった中国そのものです」


「現在の中華人民共和国は第二次世界大戦には何ら関与していない。我々が贖罪すべき中国とは別の国家です」


「1990年代から日本の手厚い支援により近代化した恩を仇で返し、チベット、ウイグル、モンゴルを今でも迫害し続けている国家です」


「台湾の友人たちに、今こそ前大戦時の本当の償いとして手を差し伸べる事こそが、日本の役割です。」


 配信から30分で、世界のニュースサイトのトップを占領した。




 民放のスタジオ。司会者が震災支援の映像を見終えた後、しばらく画面を見つめていた。


「……自衛隊の派遣について、反対という声をお持ちの方にお聞きしたいんですが」


 コメンテーターが口を開きかけて、止まった。





 防衛省。


 大泉防衛大臣が幕僚長と向き合っていた。


「ASEV艦2隻は日本海待機を継続。BMD対応は外せない」


「了解です。南西方面は」


「きそ・よど、そして徴発したオーストラリア向け有人機空母。それに自衛隊向けあまつくに型のうち2艦を東シナ海で4護衛隊群と合流させて直掩に就かせる。残り2艦は護衛だ。西普連は輸送群と共に馬毛島で待機。残りは全力出撃で4個護衛隊群の95%が出撃出来ます。」


「……了解しました」


「日本が出るなら、きちんと出る」




 東京。内閣官房。


 橘慎一郎は窓の外を見た。


 10001号が珈琲を置いた。


「バッシングが激しいですね」と10001号が言った。


「想定内です」「逆に指示も多い。台湾はそれだけの事を日本にしてきてくれた」と橘は答えた。

「その辺は貴子さんがいれば大丈夫です」





【国際情勢スレ】


1 名無しさん

FEPAで初の戦死者が出たって

オーストリア人のパイロット


2 名無しさん

ブーチンが逮捕されたのか

ロシア新政権が即時停戦を求めてる


3 名無しさん

世界連合安保理で台湾派兵が決まったって

拒否権がないから全員賛成


4 名無しさん

自衛隊が動いてるって話が出てる

横須賀とか佐世保から艦船が出港してるらしい


5 名無しさん

国会が大騒ぎしてるな

野党「専守防衛違反!」高道「黙って見ていろと?」


6 名無しさん

貴子さんの動画見た

震災支援の映像並べただけで何も言えなくなったのと

先の大戦の本当の意味での反省は日本人には響くよ


7 名無しさん

海外向けの声明やばい

「中華人民共和国は我々が贖罪すべき中国とは別の国家」←これ歴史的に正論すぎて


8 名無しさん

チベット・ウイグル・モンゴルの迫害も並べてきてる

中国の国際的な立場が一気に悪くなりそう


9 名無しさん

大泉大臣「きちんと出る」

これが全てだわ


10 名無しさん

貴子さんの二正面作戦

国内は感情・海外は論理

鬼だ


11 名無しさん

ロシア戦線はまだ2週間かかるって

FEPAが両方やるのは無理だったんだな


12 名無しさん

歴史が動いてる

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