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第152話「開窓」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ


2030年11月。



 愛知県。JDETA中部拠点。深夜2時17分。


 MAGI-3の警報が鳴った。


「SSBN——探知」


 ナカムラが画面を見た。


 北極海の氷下。2隻。座標が確定した。


「MAGIからFEPAへ。SSBNの所在確認。第二案の準備を——」


 その瞬間、別の警報が重なった。


「発射探知。複数。ロシア北洋艦隊SSBN2隻から弾道ミサイル発射確認」





 モスクワ。クレムリン。


 2時間前。


 将軍たちが動いた。


 しかしブーチンはその動きを察知していた。


「全て把握している」とブーチンは言った。「発射命令を出す。今すぐ」


 側近が止めようとした。ブーチンは振り向かなかった。


「発射しろ」


 世界中の監視システムが同時に反応した。


 NORAD。米国早期警戒衛星。フランスの監視衛星すら探知した。MAGIは発射の0.3秒後に全弾道を計算し終えた。


 ジブチ。アンコーナ。キーウ。東京。


 標的は複数だった。


 2時34分。


 全国民のスマートフォンが一斉に鳴った。


【緊急速報】

弾道ミサイルが発射された可能性があります

頑丈な建物や地下に避難してください




 愛知県弥富市。


 田村颯太はアラートで目が覚めた。隣で松本が身体を起こした。


「何?」


「Jアラートだ」


 颯太は窓を開けた。


 夜空に、光の線が走っていた。流れ星ではなかった。上から下ではなく、下から上へ向かう光だった。それが複数、弧を描いていた。


「……撃ってる」と颯太は呟いた。


 彩佳がスマートフォンを手に取り、空に向けた。


「撮ってどうするん?」


「記録」と松本は言った。




 ジブチ。


 30式対空機関砲4ユニットが一斉に起動した。キャパシタが満充電になった。弾道ミサイルが大気圏に再突入してくる。


 30式が迎撃した。着弾しなかった。




 アンコーナ。


 30式4ユニットが応射した。着弾しなかった。



 キーウ。


 09式と30式8ユニットが応射した。着弾しなかった。




 東京。


 ASEV艦2隻と30式16ユニットが応射した。


 そしてJDETAツインタワー東ビルの屋上で、閃光が走った。


 電源モジュールユニットに囲われていたはずの区画から、砲塔の閃光が空に向かった。


 周辺マンションの住民が窓から見ていた。


「あのビルの屋上、何か光ってる」


「電源設備じゃないの……」


「いや、あれ砲塔じゃね?」


「え?」


 動画がSNSに上がった。タイトルは「JDETAツインタワー屋上から謎の閃光」。5分で再生数が100万を超えた。


 着弾しなかった。




 愛知県。JDETA中部拠点。


「全弾撃墜確認。着弾ゼロ」とナカムラが言った。


 画面の端に、SNSのトレンドが映し出されていた。


「#Jアラート」「#東京の空」「#迎撃」「#ツインタワー屋上の謎」


 動画が次々とアップロードされていた。夜空に走る光の線。渋谷の若者が「全然着弾しないじゃん」とコメントしている動画。パジャマのおじさんが空を指差している動画。そしてツインタワー屋上の閃光動画のコメント欄——


「電源ユニットって言われてたやつじゃん」

「砲塔に見えるんだけど」

「あーこれ30式対空機関砲だわ」

「え?渋谷に?」

「ずっとあそこにあったのか……」

「政府「コメントは控えます」←絶対これ」


「……みんな逃げなかったんですね」とナカムラが言った。


「日本人ですから」と橘が呟いた。





 同時刻。台湾海峡。


 中国人民解放軍が動いた。演習を装った展開から実戦配置への切り替えが完了した。揚陸艦が台湾西岸に向かった。J-20が台湾の防空識別圏に殺到した。


 台湾軍が迎撃した。しかし数が違いすぎた。




 アンコーナ。FEPA司令部。


 黒田玲二が状況板を見た。


 ロシアのSSBN対応で全力を出し続けていた。T-5FCは燃料と弾薬の補給後、僅かな休憩で再度飛び立っている状況だった。


 台湾の状況が更新された。西岸の防衛ラインが崩れ始めていた。


「台湾に向かえるか」


「現時点では不可能です」と幕僚が答えた。「補給なしに太平洋へは——」


 黒田は何も言わなかった。





 東京。防衛省。


「台湾に介入する法的根拠が——」と城島が言った。


「わかっている。様子を見る」と大泉が答えた。


 台湾。台北。


 市民が地下鉄の駅に避難していた。西部の防衛ラインが崩壊した。揚陸艦から中国陸軍が上陸した。台湾軍は戦い続けた。しかし数と火力の差は覆せなかった。




 ロンドン。緊急G7首脳会議リモート


 高道総理大臣が接続した。


 英国首相が口を開いた。


「今夜、ロシアが戦略核を使用した。中国が台湾に侵攻した。これはもはや局地的な問題ではない」


「日本から提案があります」と高道は言った。


「国際連合は終わりました。P5の2カ国が世界大戦を起こしたのです。新しい枠組みが必要です——世界連合の創設です。本日、G7が国連を脱退して加盟する。安保理は拒否権を持たないG7が座る。拡大安保理として、シンガポール、インド、モロッコ、ジブチ共和国、ブラジルを招待する。参加条件は国連脱退と新核拡散防止条約——30年以内の核兵器廃絶、年1回の核査察受け入れです」


「FEPAは」


「新株50%を発行します。世界連合がこれを買い受け、常設世界連合軍とします」


イタリア・デローニ首相が言った。


「賛成します」


 英国、フランス、ドイツ、カナダが続いた。


 ドランプが最後に言った。


「……賛成しよう」





 世界連合創設宣言が発表された。


G7共同宣言——世界連合の創設


本日2030年11月、G7は以下を宣言する。


1. ロシア連邦による戦略核の実戦使用(全弾迎撃済み)

および中華人民共和国による台湾への武力侵攻は、

第二次世界大戦後の国際秩序の完全な崩壊を意味する。


2. G7は本日をもって国際連合を脱退し、

「世界連合」を創設する。


3. 世界連合安全保障理事会:

拒否権を持たないG7が座る。

拡大安保理:シンガポール・インド・

モロッコ・ジブチ共和国・ブラジルを招待。

参加条件:国連脱退、新核拡散防止条約署名

(30年以内の核廃絶・年1回核査察受け入れ)


4. FEPAは新株50%を世界連合が買い受け、

常設世界連合軍とする。


5. 世界連合軍は本宣言に基づき、

ロシア連邦全土への平和維持作戦を即時開始する。




 東京。内閣官房。


 橘慎一郎はG7を閲覧していた接続を切った後、窓の外を見た。


 夜明け前の東京が静かに広がっていた。


 SNSではまだ「#ツインタワー屋上の謎」がトレンドに残っていた。


 10001号が珈琲を置いた。


「開きましたね」と10001号が言った。


「まだ入口です」と橘は答えた。「台湾がある」





【国際情勢スレ】


1 名無しさん

Jアラート鳴ったのに誰も逃げてなくて草


2 名無しさん


>>1

渋谷で空にスマホ向けてる動画ばっかり出てくるwww

わかってんのか?日本は戦略核ミサイルの攻撃を受けたんだぞ?着弾したら何百万人以上死んでいた


3 名無しさん

パジャマのおじさんが空指差してる動画で笑ってる場合じゃないんだけど笑ってしまう


4 名無しさん

でも全弾迎撃されたんだろ

着弾ゼロって


5 名無しさん

核が迎撃された……核抑止が終わったんだ


6 名無しさん

ツインタワー屋上の動画やばいんだけど

あれ完全に砲塔の閃光じゃん


7 名無しさん


>>6

「電源設備」って言われてたやつ

ずっとあそこにあったのか


8 名無しさん

政府「コメントは控えます」

これ絶対そう言うwww


9 名無しさん

中国が台湾に侵攻してる

FEPAはSSBN対応で動けないらしい


10 名無しさん

台湾の西部防衛ラインが崩れてる

やばい


11 名無しさん

G7が国連脱退して世界連合を作ったって本当か

韓国は呼ばれてないって


12 名無しさん

FEPAが世界連合軍になるって

最初からそのつもりだったのか


13 名無しさん

核が無効化された夜に

渋谷でスマホ掲げてた日本人

これが平和ボケなのか度胸なのかわからんが、これが日本なんだよな~


14 名無しさん

世界が変わった夜だ

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