第151話「枠組み」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2030年8月〜9月。
ワシントン。米国議会。
台湾防衛強化法案の審議が始まる予定だった。
しかし議事日程が変わった。
委員会の委員長が廊下で同僚に言った。
「また延期か。誰が動いてるんだ」
「韓国系のロビー団体です。献金の規模が急に大きくなっています」
「韓国が?なぜ台湾のことで——」
「中国の資金だという話があります。ただ証明が難しい」
委員長は立ち止まった。
「日本に連絡しておいてくれ」
「すでに日本大使館から報告が出ています」
愛知県。JDETA中部拠点。
ナカムラがMAGI-3の最新解析を読んだ。
【MAGIアラート更新】
中国「東海2030」演習の実戦準備評価
前回:実戦準備の可能性 85%
今回:実戦準備の可能性 92%(上昇)
新規検出事項:
・台湾西岸の海底ケーブル切断工作船が作業を実行
・台湾海峡の中国側に大規模機雷敷設用艦艇が展開
・人民解放軍陸軍第1集団軍が福建省に完全集結確認
推定開戦時期の再前倒し:
前回予測(4〜4.5ヶ月後)→3ヶ月以内の可能性
「海底ケーブルが切られました」とナカムラは橘への回線を開いた。「実行段階に入っています」
「わかりました。台湾の通信当局に情報を回してください。予備回線への切り替えを急ぐよう伝えてください」
長崎。JMU長崎スマートドック。
自衛隊向けあまつくに型6隻が就役した。
通常の半分以下の工期だった。MAGIコントロールの設計最適化と24時間建造で実現した。
海上自衛隊の幕僚長が岸壁に立っていた。
「6隻同時か」
「はい」と隣のJMU担当者が答えた。「急いでいただいたおかげです」
「こちらが急かしたんだ」
6隻の艦体が朝の光を受けていた。
レールガン、レーザー、VLS32——全て搭載済みだった。
モスクワ。ある将軍の執務室。
暗号化端末に短いメッセージが届いた。
「9人が同意した」
将軍は目を閉じた。
9人。それだけいれば動ける。あとは——タイミングだけだった。
FSBは最近、動きが鈍かった。FSB自体の内部でも同じ空気が流れているのかもしれなかった。
「もう少し待て」と将軍は返信した。「中国が台湾に動く前に片付ける」
ロンドン。英国首相官邸。
望月邦彦は英国首相と向き合った。
「率直に申し上げます」と望月は言った。「今回のロシアによる核使用——安保理はまたしても拒否権で動けなかった。拒否権問題はもはや国連の存在意義を否定しています」
「それは理解しています。しかし——」
「このままではロシアは熱核戦争に向かいますよ?核を使っても国際社会が制裁できないと学習しました。次は戦略核です」
首相が黙った。
「フランスとイギリスはP5の一角です。どう始末をつけるつもりでしょうか」
首相は窓の外を見た。テムズ川が灰色に光っていた。
「……G7で議論しましょう。それが現実的なラインです」
パリ。エリゼ宮。
フランス大統領との会談は短かった。
「拒否権の問題は我々も認識しています」と大統領は言った。「ただ、フランスは安保理改革について慎重な立場を取ってきました」
「慎重な立場を取る余裕が、まだあるとお思いですか」
大統領が眉をひそめた。
「……G7で議論するということで」
「ありがとうございます」
望月は立ち上がりながら、別の話題を出した。
「一点、伺ってよろしいですか。一部の国々から『日本は技術を囲い過ぎではないか』という懸念が出ています。御国からもそのようなお声はありますか」
「……正直に言えば、あります」と大統領は答えた。「FEPAとMAGIの技術が日本に集中しすぎている。民間PMCがコントロールできなくなった場合の想定ができていない」
「ご懸念はもっともです」と望月は静かに言った。「FEPAはジブチに本拠を置く企業であり、日本・英国・フランス・イタリアを含む各国が株主です。特定の国家が一方的にコントロールする構造にはなっていません。むしろ、御国がより深く関与されることで、そのご懸念は解消されるのではないでしょうか」
大統領はしばらく考えた。
「……検討します」
ベルリン。連邦首相府。
ドイツ首相との会談の最後に、首相が言った。
「望月さん、一つ聞かせてください。MAGIはFEPAの資産ですね。そのMAGIが世界中の情報を収集・分析している。これは——」
「安全保障上の懸念というご趣旨ですか」
「はい。MAGIが誰かの政治的目的のために使われた場合、誰が制止できるのですか」
望月は少し考えた。
「そのためにこそ、日英仏伊を含む各国が株主になっています。単一の組織や個人がMAGIを私物化できない構造です。また——」と望月は続けた。「現時点でMAGIは、あなたが懸念されているような使われ方をしていますか」
「それは……していません」
「では、実績で判断していただければと思います」
帰国の機上、望月は橘に報告した。
「ロンドン・パリ・ベルリン全て、G7での検討合意を取り付けました。ただし技術囲い込みとFEPAのコントロール問題については継続して説明が必要です」
「お疲れ様でした」と橘は答えた。「G7での議論、どういう方向に持っていきますか」
「安保理の補完機能を持つ新しい枠組みです。G7に加えてオーストラリア・韓国を除いたASEAN数か国を加えた『拡大G7』的な安全保障協議体を提案します」
「韓国は除いた、と」
「今の韓国とは一緒にできません」と望月は言った。「あとは橘さんの判断です」
【国際情勢スレ】
1 名無しさん
米国議会の台湾法案審議がまた延期になったらしい
韓国系ロビーが動いてるって話が出てる
2 名無しさん
>>1
中国の資金だって噂があるけど証明が難しいらしい
韓国は中国に魂を売ったのか
3 名無しさん
自衛隊向けあまつくに型6隻が就役したのか
工期が異常に短いな
4 名無しさん
台湾の海底ケーブルが切断されたって情報が出てる
通信に影響が出てるらしい
5 名無しさん
>>4
もう本番が始まるんじゃないな?
6 名無しさん
望月最高顧問がロンドン・パリ・ベルリンを歴訪してたって話
何を話してたんだ
7 名無しさん
「日本は技術を囲い過ぎ」「FEPAがコントロールできなくなったら」
みたいな懸念が欧州で出てるらしい
8 名無しさん
>>7
「むしろ参加しませんか」で返したとか
これが答えだよな
9 名無しさん
G7で国連安保理の代替枠組みを議論するらしい
拒否権問題にようやく本気で取り組む気になったか
10 名無しさん
ロシアはいい加減クーデターでも起きるんじゃないか?




