第145話「清算」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2030年6月。
ジブチ。FEPA基地。
An-124が着陸した。
荷降ろしが始まった。超大型トラックが4台、タラップから転がり出てきた。レーダーレールガン砲塔車両。キャパシタ車両が2台。ガスタービン電源車が2台。
1ユニット目が展開を始めた。
空自の対空砲部隊員——今日からJDETA社員証を持つ男たちが——慣れた手つきで設置位置を確認した。
「展開位置、FEPA基地北側高台。360度の視界が確保できます」
「了解。展開開始」
MAGI-1が即座にユニットの座標を取得した。衛星からのレーダー情報と統合が始まった。
夕暮れの中、4ユニットが次々と展開を完了した。ジブチの空が、静かに守られた。
イタリア。アンコーナ。
港の丘の上に、見慣れない車両が並び始めた。
FEPAのスタッフが周辺住民への説明を行っていた。
「電力設備の増設です」
住民が車両を眺めた。
「電力設備?あんな砲塔のついた車が?」
「はい。電力設備です」
4ユニットが展開を完了した。MAGI-2が即座に統合した。アンコーナの空もまた、静かに守られた。
ウクライナ。キーウ周辺。
An-124が降りてきた。キーウ近郊の軍用飛行場だった。
8ユニット分の車両が次々と降ろされた。ウクライナ軍の将校が立ち合っていた。
JDETA社員証を持つ空自隊員が展開を指揮した。
「配置は市街地の4方向と、北東・北西の2方向を重点的に」
「何をそんなに気にするんです」とウクライナ軍将校が聞いた。
「北東と北西からの弾道飛翔体に備えてです」
将校はしばらく考えてから頷いた。
8ユニットが展開を完了した。MAGI-2がキーウ上空の防空管制を統合した。射程400km超。ロシア西部の発射台からキーウへの軌道は、すべてカバーされた。
愛知県・岐阜県・三重県。
三菱重工弥富工場の周辺。JDETA弥富空港の周辺。そして愛知・岐阜・三重の県境を押さえる丘陵地帯。
4ユニットが静かに展開した。
田村颯太が工場の窓から外を眺めた。丘の上に、見慣れない車両が並んでいた。
「あれ、何ですかね」と隣の松本が言った。
「さあ」と颯太は答えた。
2人はしばらく眺めた。
「でかい電源車みたいな感じ」
「そうだな」
颯太は窓から離れて、T-5FCのラインに戻った。
東京。外務省。
日韓交渉。
韓国外交団が着席するなり口を開いた。
「スワップの次期増額について協議させていただきたい。現在の枠では不十分であり——」
「少々よろしいですか」と日本側の外務省審議官が遮った。「今回の協議に先立ち、こちらの条件を提示させてください」
「条件?」
「三菱重工業への請求権を破棄してください。また、竹島の返還に関するスケジュールを提出することを求めます」
韓国側の団長の顔色が変わった。
「独島は我が領土だ。三菱重工は戦犯企業で司法の裁定だ。我々に対処を求めるのは内政干渉だ」
「判りました」と審議官は静かに答えた。「こちらの条件は提示いたしました。1ヶ月後の期限までに条件の履行を約束できない場合は、スワップの更新は破棄します」
「ふん。我々とて必要としていない」と団長は言った。「だが、09式の調達に関して、同じ西側諸国として応じる義務があるはずだ」
「我が国としては韓国を西側諸国とは思っておりませんので、そのような懸念は持っておりません」
韓国側が絶句した。
「G8で非難するぞ」
「G8などというものは存じ上げませんが?G7にちょっと連続で招待されて勘違いなさってませんか?次回は招待に関しても異論を唱えてもよいですね」
「もう結構だ!」
韓国外交団が席を立った。
東京。JDETA本社。
サムスン電子の交渉団が正面玄関を入ってきた。
応接室でJDETAの渉外担当が向き合った。
「我々はJDETAが、TSMCを含めた日本半導体産業の仲介役であると伺ってまいりました。サムスン電子はすでに競争力を失っております。我々に100億ドル単位の出資をお願いしたい。もちろん我々は企業だ。サムスンの特許技術の60%を移譲する準備はある。検討していただけないか」
「交渉先は間違っていませんが」と渉外担当は静かに言った。「御社は少し考え違いをなさってます。我々はサムスン電子の特許技術をさほど必要としていません。ましてや100億ドルの対価などと……」
「いや、でもサムスン電子の倒産は世界のサプライチェーンの混乱を招きます。それは日本の産業界にも波及するはずだ」
「そうですね。そこには一考の価値があるかもしれない。ですがマイクロン広島はここ3年で生産能力を3倍にしています。日本企業の必要量は確保できるんですよ。欧米は困るかもしれませんが……」
「いや、世界首位のトヨタ自動車は困るでしょう。米国生産も含めて我々しか需要を満たせないはずだ」
「それこそお門違いですよ。トヨタはJDETAに加入しておりません。交渉先をお間違えでは?」
サムスン側が言葉に詰まった。
「いや、トヨタは内部留保も急速に縮小している。我々の特許技術にも興味は無いだろう」
「まあ、我々も長い付き合いです」と渉外担当は言った。「サムスン電子は清算なさっては?もう詰んでます。国外関連会社・工場は我々が適正価格で買い取りましょう。サムスン全体の資金の安定化に向けて50兆ウォンで買い取りますよ」
「くっ……持ち帰らせてください。売れるもの売れないものを整理する必要があります」
「承知しました。このお話は1ヶ月間に限り有効とします」と渉外担当は立ち上がりながら言った。「ここだけの話、日本政府はスワップを更新しません。耐えられるといいですね」
「は……え……?日本は韓国をIMF送りにするつもりですか?」
「いえ。もっと悪いです。米国も日本もIMFへの供出はしないのでIMFも介入できないんじゃないですかね?」
サムスンの交渉団は応接室を出た。廊下で誰も口を開かなかった。
「……韓国は石器時代に戻るのですね……」と一人が呟いた。
東京。日鉄グループ本社。
ポスコの交渉団が席についた。
「この度は交渉に応じていただいてありがとうございます」
「いえいえ、我々とポスコさんの長い関係ですから」と日鉄側が答えた。
「実は韓国内高炉とインドネシアの高炉を一時停止しました」
「ああ、存じてますよ」
「は?一昨日決定したばかりですよ?」
「いえ、小耳に挟んだだけですし、供給過多でしょう?我々もJFEさんにはやられましたよ」
「まさかアフリカに高炉を運用するとは……現在3基が稼働していて、更に4基が建設中だとか」
「いえ、JFEさんからは新設は7基で、4基は稼働間近と聞いてますよ。中国の鉄鋼業を潰すまでやるそうです」
「日鉄さんは大丈夫なんですか?」
「我々は国内とUSスチールですし、JFEは北米と日本にジブチ産は入れないことを確約してますので、影響はありますが軽微です」
「そうですか……韓国は保証外ですね……」
「はい。JDETAに関しては我々が主導できない領域ですので」
ポスコ側がしばらく沈黙した。
「では、正直に言います。インドネシア、韓国同様に高炉を停止しても労働者賃金や税金は減りません。韓国本体も収益力が弱まっているので早晩ポスコは赤字に転落します。日鉄さんの株を放出せざるを得ません。我々の特許技術を担保に出資を検討していただけませんか?」
日鉄側の役員が静かに言った。
「なるほど?脅しですか?構いませんよ。そもそも出資しても焦げ付くのが判っている状態で出資するのは背任行為です。あなた方は技術盗用のころから何も変わっていませんね。脅せば言うことを聞くと思っている。1時間後、ポスコ株の全株を市場に放出します。日鉄の株は好きにしていただいて結構ですよ」
「ま、待ってください……!」
「話は終わりです。ポスコさんのお帰りだ。ご案内してくれ」
ドールAが静かに立ち上がり、丁寧な所作でポスコ交渉団を出口へ案内した。
東京証券取引所。
午後2時15分。日鉄が保有するポスコ株の全株が市場に放出された。
ポスコ株は急落した。
日鉄は粛々と特別損失を計上した。有価証券報告書の損失理由の欄にはこう記載された。
「ポスコ解散の可能性に鑑み、経営責任の追及を避けるため」
【国内経済スレ】
1 名無しさん
日鉄がポスコ株を全株市場に叩き売ったの見た
午後2時15分に急落してたの日鉄のせいか
2 名無しさん
有報の損失理由「ポスコ解散の可能性に鑑み」って書いてあって草
日本語で「詰んでる」って書いてあるじゃん
3 名無しさん
韓国のスワップ交渉、どうなった
4 名無しさん
>>3
「G8など存じ上げませんが?」って言われたらしい
5 名無しさん
>>4
草すぎる
6 名無しさん
サムスンとJDETAが交渉してたって話も出てる
「清算なさっては」って言われたとか
7 名無しさん
>>6
JDETAが国外工場を50兆ウォンで買い取るって提案したらしい
50兆ウォンって今のレートでいくらだ
8 名無しさん
>>7
約2兆5000億円くらいか
叩き売り価格だな
9 名無しさん
韓国終わりそう




