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第140話「展開」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ


 2030年5月。



 黒海。オデーサ沖。


 つくよみの艦橋から、矢島誠一艦長は水平線を眺めていた。


 黒海に来て1年以上が経った。ウクライナ南部の制空権はFEPAが握り続けていた。ロシアの無人機は黒海に出るたびに落とされ、北朝鮮兵はすり潰され続けた。


 そこにワルシャワへの無人機攻撃が起きた。


 NATOが動いた。





 ブリュッセル。NATO本部。


 緊急理事会は紛糾していた。


「ブーチンは昨冬、民間人に数千人の凍死者を出しました。政権が耐えられない状況にある。待っていれば済む話では」


「待てません。彼はもう正気を失っています。参戦すれば戦術核を打ちかねない」


「米国の支援はあてにできない。THAADミサイルも未だに補充できていない状況で——」


「FEPAとの契約を見直せないか。ウクライナかポーランドの空軍基地を提供してはどうか」


「だがNATOが形骸化してしまっては終わりだ」


 議論は堂々巡りだった。


 最終的に議長が叩き台を示した。


「ポーランドのベラルーシ国境に1個軍。ルーマニアのウクライナ国境に1個軍。陸軍部隊を駐留させる。制空権はFEPAに移譲し、NATO軍はFEPAの管制下に入る。ウクライナ全域及びベラルーシ上空の制空権確保を追加依頼する」


「イスラエルは」


「フランス空母艦隊が地中海を東進する。イスラエル領空のCAPはフランス海軍機がFEPAの指示下で実施する。イギリス空母部隊はバルト海のストックホルムへ進出してパトロールを担当する」


 室内が静まった。





 東京。内閣官房。


 橘慎一郎はNATOからの打診書を城島と並んで読んだ。


「条件を出す」と橘は言った。


「第一・第二艦隊をオデーサに展開する。イスラエル沖は第三海上管制大隊の50隻のみとする。その50隻への補給はNATOに受け持ってもらう」


 城島は頷いた。


「オデーサから1000キロ強——ウクライナ全域とベラルーシ南部まで作戦範囲に収まります。有人機150機と無人機300機、450機の投入が可能です。陸上基地の提供は不要です」


 橘は書類にサインした。





 アンコーナ。FEPA司令部。


 黒田玲二は幕僚たちを集めた。


「空軍部隊を再編する」


「第一飛行群5個飛行中隊75機をたけみかずちへ。第二飛行群5個飛行中隊75機をすさのおへ」


 幕僚が確認した。


「第一艦隊の構成は」


「つくよみ旗艦。たけみかずち、いざなぎ、あまつくに、さるたひこ。はやぶさ改50隻大隊」


「第二艦隊は」


「かぐつち旗艦。すさのお、いざなみ、たけはづち、やましろひこ。はやぶさ改50隻大隊」


「第三海上管制大隊はイスラエル沖に残置。NATOが補給を担当する」


 ブレット航海士が静かに言った。


「450機がウクライナの空を覆うわけですね」


「そうなります」




 アンコーナ。マリーニの執務室。


 マリーニは電卓を叩きながら雪女に言った。


「艦艇の15年償却から積み上げるわ。有人機空母2隻、無人機空母2隻、タイプ-1が2隻、FFM改4隻、はやぶさ改100隻、T-5FC150機、Z-1FC300機、E-350Bまで全部入れて——」


 指が止まった。


「人員給与、アンコーナUSCの全力支援、武器弾薬を全部積み上げて、利益50%乗せ」


「合計でいくらになりますか」と雪女が聞いた。


「1兆3,500億」


 マリーニはタブレットを閉じた。


「作戦期間は最低1年単位でお願いします、って伝えて。年以下はお断り」


「NATOへですか」


「そう」


 窓の外のアドリア海が夕日に染まっていた。




 地中海。


 フランス空母シャルル・ド・ゴールが東へ針路をとった。


 艦内に命令が下った。


「FEPAの管制下に入る。MAGIの指示に従え」


 ベテランパイロットが若手に言った。


「MAGIに従えとはどういうことだ」


「AIです」


「……AIの言うことを聞くのか」


「はい」


 パイロットは空を見上げた。どこかにT-5FCがいるはずだった。見えなかった。




 ストックホルム。バルト海。


 HMS クイーン・エリザベスが湾に入った。


 副長が艦長に言った。


「FEPAがウクライナを覆う間、我々はバルトを守るわけですか」


「世の中は変わる」と艦長は答えた。




 オデーサ沖。


 第二艦隊がアンコーナを出港した。かぐつちを先頭に、すさのお、いざなみ、たけはづち、やましろひこが続いた。はやぶさ改50隻が外縁を固めた。


 つくよみが待っているオデーサへ。





【国際情勢スレ】


1 名無しさん

FEPAがウクライナ全域の制空権を引き受けたって本当か

ワルシャワ攻撃への回答がこれか


2 名無しさん

NATO軍がFEPAの管制下に入るって

民間PMCの指揮下にNATOが入るってことだよな


3 名無しさん

年間1兆3500億でFEPAを雇ったらしい

高いのか安いのか


4 名無しさん


>>3

空母2隻無人機空母2隻に450機付きで1兆3500億

NATO各国が頭割りすれば安いんじゃないか


5 名無しさん

フランス海軍「MAGIの指示に従え」←パイロット困惑してて草


6 名無しさん

イスラエル沖は50隻のまま

でも補給はNATOが払う条件

橘さんうまいな


7 名無しさん

イギリス空母がストックホルムまで来たのか

バルト海を守る役割か


8 名無しさん

つくよみが1年以上ずっとオデーサで防空指揮してたのか

縁の下の力持ちすぎる


9 名無しさん

ブーチンはワルシャワを叩いてFEPAを引きずり出した形になるな

それが得策だったかどうかは……

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