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第129話「波紋」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ


2029年7月。



 北京。政府系メディア「環球時報」の放送スタジオ。


 在日中国大使館の元領事・張偉明が、カメラの前で声を荒げていた。


「日本の新軍国主義は明白です。わが国が取るべき選択肢は、尖閣諸島の奪還、さらには沖縄の歴史的地位の見直しを含む強硬な——」


 その放送が流れた翌日、中国人民解放軍海軍の艦艇が沖縄周辺海域での演習中に、陸上自衛隊の監視船に対してレーダー照準を当てた。





 東京。外務省。


 片桐隆文外務省審議官は、駐日中国大使を省内に呼んだ。


「今回の行為は、国際法上の挑発行為に当たります。厳重に抗議します」


 大使は表情を変えずに言った。


「日本側の挑発が先です。わが国の正当な演習への——」


「レーダー照準は挑発ではなく攻撃行為の一歩手前です」


 片桐は声を上げなかった。ただ、静かに続けた。


「日本政府の立場を正式に伝えました。以上です」





 北京。外務省。


 翌日、今度は駐中日本大使が中国外務省に呼ばれた。


「日本の新軍国主義的な挑発行為が、わが国の正当な防衛演習を誘発した結果です。責任は日本側にあります」


 大使は静かに聞いた。


 報告書を本国に送った。それだけだった。





 中南海。


 総書記は、外交部と軍部の報告書を並べて読んだ。


 政府系メディアでの発言。レーダー照準。いずれも自分が指示したものではなかった。


 暴走した。それだけだった。


 総書記は側近に言った。


「張偉明と演習司令官を更迭しろ。静かにやれ」





 東京。内閣官房。


 橘慎一郎は中国側の動きを一通り確認した。


 更迭が終わった。事態は収束方向だった。


「深追いはしない」と橘は片桐に伝えた。「向こうも引き時を探してる」


「了解しました」


 電話を切った。


 ドールA10001号が珈琲を置いた。梅雨明けの空が窓の外に広がっていた。





 愛知県弥富市。


 田村颯太の新しい朝は、6時15分に始まった。


 社員寮を出ると、廊下の突き当たりの部屋のドアが同時に開いた。


 松本彩花だった。


「おはよう」


「おはよう」


 二人並んで正門に向かった。7月の朝は蒸し暑かった。工場の煙突から白い煙が上がっていた。


 工場に入ると、ドールAが二人に今日のシフト表を渡した。


 颯太は自分の表を見た。次に松本の表を見た。


 勤務時間が完全に一致していた。休憩時間も、昼食の時間も、退勤時間も。


「これ……」


「MAGIの指示です」とドールAが言った。それだけだった。


 松本が自分のシフト表を見て、少し黙った。


「……効率的なシフト管理ですね」と彼女は言った。


「そうですね」と颯太も言った。


 二人とも、それ以上は言わなかった。




 昼食は社員食堂だった。


 席に着いた颯太の向かいに松本が座った。周りのテーブルでは、先輩社員たちが川崎重工の話をしていた。


「川崎の無人機ライン、初日から鬼忙しいらしいぞ」


「月産100機目標って聞いた。ステルス無人機を100機って……」


「MAGIコントロールのラインだから、人間がやることは品質チェックくらいだって話だ」


 颯太は定食を食べながら、工場の窓から川崎重工の敷地を見た。クレーンが動いていた。ドールIが走っていた。


「すごいところに来たな」と松本が言った。


「うん」と颯太が返した。




 夕方。


 二人は退勤後に近くの居酒屋に寄った。いつの間にか習慣になっていた。


「MAGIがシフト合わせてくるの、どう思う?」と松本が生ビールを頼みながら言った。


「……効率的なんじゃないか」と颯太が答えた。


 松本が少し笑った。


「そうだね。効率的だね」


 二人は黙って乾杯した。





 ジブチ共和国。


 JDETA拠点の会議室で、ゲレ大統領の補佐官と日本のODAチームが向かい合っていた。


 議題は「ジブチ共和国中長期開発計画」だった。


 補佐官が地図を広げた。


「北部のタジュラ方面はリゾート開発を軸に考えています。紅海に面した海岸線を活かした観光業。南部のジブチ市以降は商工業都市として整備する。この方向でJDETAとODAチームのご意見を伺いたい」


 ODAチームの担当者が頷いた。


「インフラ整備の優先順位から考えれば、南部の商工業地区を先行させるのが合理的です。製鉄所・造船所・淡水化プラントがすでに稼働していますから」


「雇用の問題もあります」と補佐官が言った。「今や全人口の4分の1が日系企業かJDETA関連の仕事に就いています。平均所得は3年前の3倍になった。若い人間が建設会社や輸送会社を起こし始めている。これは喜ばしいことですが——」


「供給が追いつかない」とJDETAの現場統括が言った。


「そうです。だから隣国からの出稼ぎ労働者を10万人単位で受け入れることにしました。エチオピア、ソマリア、スーダンから」


 会議室の窓から、港湾のクレーンが見えた。荷揚げが続いていた。


 補佐官が静かに言った。


「我々は今、自分たちの国の未来を初めて自分たちで描いています。日本のおかげで」





【国際情勢スレ】


1 名無しさん

中国の元領事が尖閣と沖縄に言及してたけど

翌日に軍がレーダー照準当ててきたのは流石に草じゃない


2 名無しさん


>>1

でも総書記が更迭したから組織的な話じゃないんだろ

暴走した連中が処分された感じ


3 名無しさん

日本側も深追いしてないしな

外務省が抗議して終わり


4 名無しさん

向こうも引き際わかってるから騒ぎにならなかったな

今の日本に喧嘩売れる国そんなにないだろ


5 名無しさん

ジブチの話出てたけど人口の4分の1が日系関連って

もう経済ごと取り込んでるじゃん


6 名無しさん

平均所得3倍ってすごいな

現地の人が自分で会社起こし始めてるのも良い話だ


7 名無しさん

川崎重工の無人機ライン月産100機って本当か

どこに売るんだ


8 名無しさん


>>7

FEPAだろ

空母に積むやつじゃないか

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