↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
110/166

第110話「大泉覚醒」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ



2028年5月。東京。防衛省。


黒田康介(元海上自衛隊将補・FEPA代表)から城島哲也(防衛省審議官)に電話が入った。


「城島さん、航空部隊が足りんぞ」


「一個飛行大隊で足りないって……45機いるでしょう」


「馬鹿か。E-350Bが24時間対空だから直掩を常時2機プラス2機を3交代だ。これでもう12機、スクランブルに8機、残り25機で稼働率が70%とすると良くて12機しか作戦に使えんよ」


城島がしばらく黙った。「今まではNATOのF-16が直掩していたでしょう?」


「参戦したらどこでも交戦してくるよ。F-16には荷が重い。ボコボコ落とされてんじゃないか。E-350Bは虎の子だぞ」


「大泉大臣と相談します」


城島が大泉進太郎(防衛大臣)に報告した。


大泉がしばらく黙った。


「やっぱりそうだよな」大泉が続けた。「とりあえず訓練部隊のT-5Aは20機はそろっているんだろ? F型仕様にして1カ月以内にアンコーナに送ってくれ。こちらは次のロットからT-5Fで納品させるよ」


「了解しました」


大泉が地図を見た。「FEPAには最終的に3個飛行大隊135機と予備機15機、合計150機体制を作ってほしい。それを黒田代表に伝えてくれ」


「——了解しました」


大泉が続けた。「それとは別に、三菱重工に話をつけてくれ。T-5Aは1,000機以上売れる確信がある。生産能力を100機/年に増強してほしい。小牧では限界だ。新工場が必要だ」





翌日。名古屋。三菱重工航空機事業部。


大泉からの直接連絡を受けた三菱重工の担当者が地図を広げた。


「——愛知のMAGI拠点と名古屋競馬場の間の農地155ヘクタールです」


「これだけあれば——」


「ジブチ型のAI型新工場を建設できます。愛知拠点の空港設備を使えば完成機をそのまま飛行搬送できます。最大限の効率化が図れます」


「——問題は?」


「工場1軒の立ち退きと——」担当者が地図を指した。「違法資材置き場と中古車集積所が数か所あります。国策として自治体に協力を要請できれば即時整理できます」


「——牧野さんに動いてもらいましょう」





数時間後。東京。内閣官房。


牧野俊介(経産省同期)が橘に報告した。「三菱重工から提案が来ました。愛知拠点と名古屋競馬場の間の農地155ヘクタールを工業用地化して新工場を建設したいとのことです。立ち退き1軒と違法資材置き場・中古車集積所の整理が必要で、国策として愛知県と名古屋市の協力をお願いしたいとのことです」


橘が少し間を置いた。「動いてくれ」


「了解しました」


「愛知拠点の空港設備を使えば搬送効率が最大化できる。100機/年は十分可能だ」





同じ頃。東京。内閣官房。


牧野が橘に別の資料を出した。「ドールAの社会浸透状況です。水産加工工場への導入が加速しています。魚の内臓処理から切り身、パック詰めまで。牧畜業も早朝の搾乳や餌やり、健康チェックをドールAが担っています。野菜集荷市場では早朝の仕分けと箱詰め。宅配便の深夜シフトも減りました」


「そうか」


「解放された人間が夜の飲食業に流れています。名古屋の錦三丁目が活況です。川崎の居酒屋街も同じです。深夜まで人が出歩くようになりました」


橘が少し間を置いた。「日本転生Rev1はここまで波及するか」


橘参事官のデスクの電話が鳴った。大泉防衛大臣だ。


「橘さん、一つ宿題を出していいか」


「なんでしょう」


「FEPAに空母を持ってほしいんだが。2隻くらいは——」


橘がしばらく黙った。「分かりました。検討します」





翌日。東京。内閣官房。


橘と城島が向かい合っていた。


橘が地図を広げた。「大泉から空母のFEPA保持の依頼が来た。艦隊編成と搭載機数を整理しよう」


城島が続けた。「中国側はJ-20だけで300機。全体では戦闘機だけで2,566機。ステルスで対抗できるのは現在F-35の145機だけだ。調達予定のGCAPが間に合っても95機。FEPAの戦線投入でもT-5Fが150機で390機」


「馬毛島から台湾海峡は遠い。馬毛島のキャパとてな・・・FEPA150機の駐留は無理だな」


「宮古島・与那国に基地を作ると——」


「開戦の口実になる」と橘が続けた。「FEPAの空母が洋上展開すれば固定基地は要らない。自衛隊の無人僚伴機もFEPA空母に搭載できる」


城島がしばらく地図を見た。「有人機空母が2隻、それだけでは足りないですね」


「そうだ。FEPAは有人機空母2隻と無人機専用空母2隻を持つ。自衛隊にはひゅうが型の後継として無人機空母を2隻、防衛予算で持ってもらう。合計6隻だ」


「有人機1機に無人機4機を組ませれば——」


「700機体制になる。自衛隊のF-35、GCAPと合わせれば約950機。全機ステルスだ」




橘がドールAを通じてMAGI-3に設計を依頼した。


「1分かけてくれ」


MAGI-3「——58秒かかりました」


「……もう少しかけてくれ」


2種類の空母の設計データが展開された。


有人機空母11万t×2隻——電磁カタパルト4基、アングルドデッキ、ゴールキーパー6基、レーザーターレット12基、乗員1,500名、miniMAGI搭載。


無人機専用空母7万t——FEPA×2隻、自衛隊×2隻——電磁カタパルト2基、3層構造、ゴールキーパー4基、レーザーターレット8基、乗員200名の超省力艦。CICなし。タンカー並みの運航監視体制。


「乗員200名か」と城島が言った。


「MAGIが動かす。人間は監視と軽整備だけでいい」





翌日。東京。財務省。


橘が片貝かつき(財務大臣)と向かい合っていた。


「空母の建造費が必要です。FEPAの有人機空母が1兆円×2隻で2兆円。FEPAの無人機空母が7,000億円×2隻で1兆4,000億円。FEPA分の合計は3兆4,000億円です。FMS特会の産業振興枠から出してください」


「また特会が減りますね」


「投資だ。スマートドックで建造すれば米国の半額以下になる。ガスタービン採用で原子炉は不要だ」


「自衛隊の無人機空母は?」


「大泉と調整してくれ。防衛予算で2隻分——1兆4,000億円だ」


片貝がしばらく資料を見た。「了解しました」




翌日。東京。総理官邸。


高道香苗(総理大臣)が資料を見た。


「空母6隻か——」


「FEPAが4隻、自衛隊が2隻です。FEPAとしての保有ですので憲法上の問題はありません」と橘が静かに言った。


高道がしばらく橘を見た。「ギリギリ国会で通せるわね。やってください」


「ありがとうございます」





東京。内閣官房。夜。


橘が城島に言った。「T-5Fは艦載機仕様のT-5FCに移行する。MAGI-3に設計させる」


「またですか」


「今後の生産は全部T-5FCにする。FEPA所持分のT-5Fは部隊単位でT-5FCに順次入れ替える」


「旧T-5Fはどうする?」


橘が少し間を置いた。「ステルス塗料を剥がしてT-5Aとして売る。定価で。売却益でT-5FCを買う。FEPAは実質タダで艦載機に換装できる」


城島がしばらく橘を見た。「マリーニが聞いたら」


「CFOの仕事だと言うだろう」


城島がため息をついた。「怖いな、お前は」





東京。内閣官房。


城島が橘に報告した。「T-5A×20機のF型転換が始まった。1カ月以内にアンコーナへ送られる。大泉が三菱重工と直接交渉を始めた。空母の建造も高道総理の決裁が下りた。愛知の新工場用地の確保も牧野が動き始めた」


「そうか」


「大泉が変わったな」


「そうだ」橘が静かに言った。「1話の頃から比べると——」


「誰かの影響ですかね」


「さあな」


橘は答えなかった。ドールA10001号が温めたコーヒーを差し出した。橘が受け取った。今日も温かかった。


窓の外に霞が関の初夏の空が広がっていた。


名古屋の錦三丁目では今夜も深夜まで人が溢れていた。川崎の居酒屋が満席だった。アンコーナではT-5Aの転換作業が始まっていた。大泉が三菱重工と直接交渉していた。愛知の農地155ヘクタールに新工場が建つ計画が動き出していた。MAGI-3が58秒で設計した空母の図面がスマートドックに送られていた。


全部同時に動いていた。


冷めたコーヒーに手を伸ばしたが、もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。