第111話「就役」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2028年7月。舞鶴。JMUスマートドック。
晴れていた。
1番艦「つくよみ」が静かに係留されていた。
18,000t。双胴船。全長220m。
甲板にレールガンの砲身が光っていた。レーザーターレットが16門、艦体各所に配置されていた。VLS200セルが並んでいた。
就役式が行われた。
黒田康介(元海上自衛隊将補・FEPA代表)が乗艦した。
甲板に立った。
潮風が来た。
海上自衛隊時代、何十隻もの艦に乗ってきた。でもこれは違った。
国産イージス。miniMAGI搭載。米FMS依存ゼロ。
「——これが俺たちの艦か」と黒田がつぶやいた。
隣でケビン・ナカムラ(USC統括部長)が静かに言った。「miniMAGIの接続を確認しました。MAGI-1との同期完了しています」
「——そうか」
2番艦「かぐつち」も同日に就役した。横のドックからは補給艦も同時に就役した。
同じ頃。東京。内閣官房。
城島が橘に報告した。「つくよみとかぐつちが就役しました。補給艦も同時就役です」
「そうか」
「マリーニから連絡が来ています」
「なんだ」
「FEPAタイプ-1利用料が月150億円×2隻で月300億円になります、と」
橘が少し間を置いた。「CFOの仕事だな」
同じ頃。JMUスマートドック。管理室。
野中誠一(防衛装備庁装備官・城島の元部下)が担当者に確認していた。
「スマートドックの状況は?」
「4ドックが第4期はやぶさ改建造中です。レーザー4門、SAM4基、SSM2基の強化型です。2028年8月末に完納予定です」
「残り2ドックは?」
「空きになります」
野中がしばらく考えた。「空母の建造を検討できないか」
担当者が止まった。「——空母ですか?」
「橘さんから『まだ早い』と言われている。では何を建造するか——」
「——新型FFM改を建造の指示が来ています。FEPA向けの対潜強化護衛艦です。4隻同時に」
「全長155m、基準排水量6,500tか。4隻なら2ドックで並行建造できますね」
「そうです。FEPAタイプ-1の対潜能力を補完します」
野中が設計データをMAGI-3に送った。
建造が始まった。
同じ頃。東京。財務省。
片貝かつき(財務大臣)が資料を見ていた。
「2028年度の税収見込みが110兆円か——」と片貝がつぶやいた。
担当者が続けた。「2026年度が83.7兆円、2027年度が95兆円でした。2028年度は16%増加の見込みです」
「GDPは18%増加なのに税収の伸び率が低いのはなんで?」
「設備投資の一括償却です。ドールA、アスタコシリーズ、スマートドックへの投資が爆発的に増えています。一括償却で法人税が抑制されています」
片貝がしばらく資料を見た。「——一括償却が終わる2029年以降は?」
「法人税が跳ね上がります。税収が更に増えます」
「そうか」片貝が続けた。「2029年から国債の償還を始める。10兆円単位でね」
担当者が止まった。「——国債の償還ですか?」
「増税なしで防衛費も賄えて国債も返せる。これが財務での日本転生Rev1の本質でしょう」
担当者がしばらく沈黙した。
「——誰がここまで設計したんですか?」
片貝が静かに答えた。「——さあね~」
【掲示板】日欧共闘まとめスレ
1: ID:Xk7mNpQ3
FEPAの艦「つくよみ」が就役したのか!レールガン搭載の18,000tか……
2: ID:mR8vwZ09
補給艦も同時就役か。ちゃんと補給体制も考えてあるんだな
3: ID:Tb3nHsW1
2028年の税収が110兆円って……3年前から考えられんな
4: ID:nQ0vXc7R
2026年が83.7兆円だったのに。3年で30兆円近く増えてるじゃないか
5: ID:zW4qRm5S
GDPより税収の伸びが低いのは一括償却のせいらしい。来年から法人税が跳ね上がるぞ
6: ID:Toshi_k9
2029年から国債を償還するって話が出てる。10兆円単位で。信じられんな
7: ID:8vYnKp2A
栃木から来ました。親父が「自分が生きてるうちに国債を返せる国になるとは思わなかった」って言ってた
8: ID:nQ0vXc7R
親父さんが珍しく感慨深いな
9: ID:Toshi_k9
見えないとこで全部設計してた人間がいたんだよ。
東京。内閣官房。
城島が橘に報告した。「つくよみとかぐつちが就役した。新型FFM改の建造が始まった。税収が110兆円の見込みだ。片貝が2029年から国債の償還を始めると言っている」
「そうか」
「——全部設計の内か?」
「さあな」
橘は答えなかった。ドールA10001号が温めたコーヒーを差し出した。橘が受け取った。今日も温かかった。
窓の外に霞が関の夏の空が広がっていた。
横須賀では「つくよみ」が初めての航海に出ていた。「かぐつち」が後に続いていた。スマートドックでは新型FFM改の建造が始まっていた。第4期はやぶさ改が建造中だった。名古屋の農地155ヘクタールに三菱重工の新工場が建つ計画が動いていた。片貝が国債償還の計画書を作っていた。
全部同時に動いていた。
冷めたコーヒーに手を伸ばしたが、もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。




