第108話「革命防衛隊排除」
時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ
2028年4月中旬。ジブチ。FEPA基地。MAGI-1統合管制室。
ケビン・ナカムラ(USC統括部長)が静かに言った。「——2週間の監視が完了しました」
モニターに全目標が映し出されていた。
弾道ミサイル部隊2個旅団の地下施設座標。ドローン工場の位置——地下2層構造を確認済み。革命防衛隊海軍基地の配置。警備状況。交代時間。地下施設の深度推定。
全部揃っていた。
「——攻撃シーケンスは?」
「MAGI-1が3パターンを提案しています。最も確実なパターンを選択しました。3ソーティを想定しています。T-5F全45機を投入します。1ソーティ目と2ソーティ目でGBU-28を各90発——計180発を使用します。地上支援のFEPA特殊作戦中隊50チームが所定位置に配置完了しています」
黒田康介(元海上自衛隊将補・FEPA代表)が地図を見た。「——1ソーティで終わらないのか」
「弾道ミサイル地下施設だけで60発が必要です。ドローン工場も地下2層構造なので40発必要です。補給部隊、発射機、海軍基地で3ソーティになります。不測の事態に備えて余裕を持たせています」
「GBU-28は?」
「英国から80発、サウジから100発。計180発が基地に搬入済みです」
「——始める」
深夜。ジブチ。FEPA基地。格納庫。
T-5F全45機が引き出された。
ライアン・コール(FEPA T-5F第一飛行隊長・元米空軍F-22パイロット)がコックピットに収まった。
ウェポンズベイを確認した。GBU-31×2発、GBU-28×2発、AAM×2発。
「——今夜は丁寧にやる」とコールがつぶやいた。「米軍ならB-2からGBU-57でワンパスで終わらせるとこだが——」
バイザーにMAGI-1からの攻撃シーケンスが展開された。
「——バイザーの情報に従うだけの簡単なお使いですよッと」
45機が順次離陸した。電波を一切発しなかった。
同じ頃。イラン西部。ザグロス山脈。
革命防衛隊弾道ミサイル部隊。地下施設。
下士官が計器を見ていた。
「——レーダーに反応なし」
「警戒機も異常なし」
静かだった。
外はザグロス山脈の夜だった。風の音だけが聞こえた。
その時——
「——地震か?」と下士官が思った。
違った。
天井が揺れた。
次の瞬間、照明が消えた。
「——何が——」
GBU-31が入口を塞いだ。
GBU-28×1発目が貫通した。
轟音と振動が続いた。
「——攻撃だ! でも——どこから——レーダーに何も出ていない——」
GBU-28×2発目。
GBU-28×3発目。
爆発が地下深くに達した。
通信が途絶えた。
地上。革命防衛隊防空部隊司令所。
防空指揮官が叫んでいた。「——レーダーに何も出ていない! でも攻撃を受けている! どこから来ている!」
オペレーターが計器にかじりついた。「——熱源も電波も探知できません! 音響センサーも——」
「——馬鹿な! 何かが飛んでいるはずだ!」
「——聞こえません。見えません」
指揮官が窓の外を見た。
西の空に爆炎が上がっていた。ドローン工場の方向だった。
「——報告しろ! 何が起きている!」
「——ミサイルが! でも——どこから——」
また爆発が起きた。
今度は海軍基地の方向だった。
「——同時に複数個所が——どこから——」
指揮官が壁に拳を叩きつけた。
「——見えない敵だ——」
FEPA基地。統合管制室。
第1ソーティが終わった。
ケビンが確認した。「——弾道ミサイル地下施設2箇所、第1層を突破。ドローン工場第1工場、地上施設を全損。GBU-28消費:90発。T-5F全機帰還」
「——不測の事態は?」
「チーム17番がレーザー照射中に革命防衛隊の哨戒車両に接近されました。交戦を回避して離脱しました。目標への誘導は代替チームに引き継いで完了しています」
黒田が頷いた。「——第2ソーティを準備しろ」
第2ソーティ。
コールが再びコックピットに収まった。
「——牛丼を食う時間もないな」
GBU-28×2発を再搭載していた。
「今夜のメニューは地下ドローン工場と残りのミサイル施設か——」
離陸した。
イラン。ドローン工場地下2層。
工場長が電話で怒鳴っていた。「——地上が全損した! でもこの深さなら——」
天井が揺れた。
「——まさか——この深さまで届くのか——」
GBU-28が第2層まで貫通した。
製造ラインが沈黙した。
第2ソーティ終了。
ケビンが確認した。「——弾道ミサイル地下施設、全壊。ドローン工場地下2層まで全損。GBU-28消費:90発。計180発消費。T-5F全機帰還。残弾なし」
「——第3ソーティは?」
「海軍基地と補給部隊です。GBU-31とASM-3で対応します」
第3ソーティ。ホルムズ海峡。
はやぶさ改50隻が展開していた。
ASM-3が一斉に発射された。
革命防衛隊の小型艇群が次々と炎上した。
T-5FがGBU-31で補給基地を叩いた。
「——これで終わりか」とコールがつぶやいた。「米軍ならもっと早く終わってたぞ——でもこれだけ丁寧にやられたら防ぎようがないな」
夜明け。全機帰還。
ケビンがモニターを確認した。「——弾道ミサイル部隊2個旅団、壊滅。ドローン工場——地下2層まで全損。革命防衛隊海軍部隊、殲滅。補給部隊、壊滅。司令部は無傷です。FEPA特殊作戦中隊50チーム、全員脱出完了。T-5F全45機帰還」
黒田がしばらくモニターを見た。「——格納庫に戻せ」
コールが格納庫を出た。食堂に向かった。牛丼を注文した。食べた。
「——うまい」
3日後。テヘラン。
カーヴェ・アフシャール(イラン外務省安全保障局長)が電話を手に取った。
震えていた。
3日間で何が起きたかを彼は知っていた。
革命防衛隊の弾道ミサイル部隊、ドローン工場、海軍部隊が一晩で消えた。米軍でも無理だったのに。
だが革命防衛隊の司令部は無傷だった。
「これがイラン政府への——メッセージか」
アフシャールは片桐隆文(外務省同期・対中東非公式チャンネル担当)に電話した。
「これで革命防衛隊を抑えられる。停戦交渉を進めたい」
「——条件は?」
「復興支援をお願いしたい」
「——了解しました」
東京。内閣官房。
片桐から報告を受けた城島哲也(防衛省審議官)が橘に伝えた。
「アフシャールから連絡が来た。3日で動いた」
「そうか」
「革命防衛隊の弾道ミサイル部隊とドローン工場と海軍部隊が壊滅した。革命防衛隊司令部は無傷のままだが、停戦交渉に入る」
「これでイラン政府が革命防衛隊を管理できる。それが目的だった」
「以前から設計していたのか?」
「さあな」
城島がしばらく橘を見た。「——怖いな、お前は」
橘は答えなかった。ドールA10001号が温めたコーヒーを差し出した。橘が受け取った。今日も温かかった。
窓の外に霞が関の春の空が広がっていた。
イランでは革命防衛隊の司令部が静かに立っていた。弾道ミサイル部隊の跡地から煙がまだ上がっていた。アフシャールが次の電話をかけていた。コールが2杯目の牛丼を注文していた。特殊作戦中隊50チームがクルド人自治区に戻っていた。
全部同時に動いていた。
冷めたコーヒーに手を伸ばしたが、もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。




