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第102話「民営化」

時事ネタ?社会風刺?いずれにしろ、この作品はフィクションであり、実在の企業・団体・個人とは一切関係ありません。キリッ



2028年1月。東京。国会議事堂。総務委員会。


維新の議員が演壇に立った。


「放送法の一部を改正する法律案——NHK民営化法案を議員立法として提出します。骨子はNHKのスクランブル化放送への完全移行、受信料の廃止、公的資金投入の全面禁止、施設・設備の民放化NHKによる買い取り、買い取り時価の算定を財務省が行い3月31日に即時執行とします」


委員会室がざわめいた。


総務族の議員が真っ先に手を挙げた。「放送行政の根幹を壊す暴挙だ!NHKは災害時の情報インフラとして機能している。受信料が廃止されれば地方局も連鎖倒産する。地上波デジタルの整備はNHKが担ってきた歴史をどう考えているのか!」


別の総務族議員が続けた。「NHK職員3万人以上の雇用はどうなるのか。地方の放送局が潰れれば地域の情報格差が広がる。拙速すぎる」


野党の石田が続けた。「公共放送の喪失は民主主義の危機だ。政府に批判的なメディアを潰すための法案ではないのか」


自民党内からも総務族が声を上げた。「党内の議論が全く不十分だ。利害関係者への説明も終わっていない。財務省の算定だけで数ヶ月かかる。3月31日即時執行は無理だ!」


維新の議員が静かに答えた。「モバイル端末による緊急通知網の整備、防災無線の整備により公共放送としての役目は終わりました。地方局の問題は民放化NHKが商業ベースで判断することです。職員の雇用は民放化NHKに移行します」


「財務省はすでに算定準備を完了しています」


「いつ準備したんだ!事前に根回しがあったということか!」


委員会室が騒然となった。


採決が行われた。


賛成多数で可決された。


総務族議員が顔を真っ赤にして席に座った。





翌日。テレビ各局。


キャスター「NHK民営化法案が可決されました。3月31日に即時執行されます。財務省は本日から施設・設備の時価算定を開始しました。また100%子会社12社の清算価値の算定も同時に開始されます」


総務族出身のコメンテーターが怒りを露わにした。「これは言論統制だ!政府に批判的なNHKを潰すための政治的な動きに他ならない!」


右派コメンテーターが続けた。「受信料を払わなくていい日が来るとは。当然の結末だ」


中道コメンテーターが言った。「NHKの本体流動資産は約3000億円、子会社12社の清算で約1800億円、合計約4800億円しか手当できません。固定資産の時価は約7000億円と言われており、2200億円以上が不足する計算です。銀行からの融資が鍵になりますが——」


キャスター「佐藤自民党広報本部長、いかがでしょうか」




佐藤貴子がワイプ画面に映った。


「モバイルの緊急通知網と防災無線が整備された現在、公共放送としての役目は終わっています。NHKが公共放送として機能できていたのかどうか——視聴率と受信料強制徴収の実態を見れば答えは出ています。そもそも、市役所公用車から消防車までカーナビが付いてるかどうかで強制徴収をおこなっておいて、流動資産が4800億円、しか、とおっしゃいましたが、国民は、しか、では無く、も、と思っていますよ?」


「地方局への影響については——民放化NHKが商業ベースで判断することです。国民の選択に委ねる。それが民主主義です」


コメンテーターが黙った。





【掲示板】NHK民営化スレ Part1


1: ID:Xk7mNpQ3

ついにNHKが終わったのか!!


2: ID:mR8vwZ09

受信料払わなくていいのか……信じられん


3: ID:Tb3nHsW1

総務族議員の顔が真っ赤だったwww「財務省がいつ準備したんだ!」って言ってたな


4: ID:nQ0vXc7R

根回しがあったに決まってるだろw 財務省が算定準備完了してたんだから


5: ID:zW4qRm5S

NHKの固定資産7000億円に対して手元資金が4800億円しかないのか


6: ID:pL2aKj8F

いや、内部留保4800億円て、受信料を払う必要あったか?だけどな。銀行が貸すかどうかが鍵だな


7: ID:Xk7mNpQ3

三菱UFJ、三井住友、みずほに聞いたら全部「経営計画もなしに100億でも出資できません」だってwww


8: ID:Tb3nHsW1

なんで3行全部同じ回答なんだよwww


9: ID:Toshi_k9

見えないとこで動いてた人間が3行に何か言ったんだろ


10: ID:8vYnKp2A

栃木から来ました。親父が「NHKはずっと気に入らなかった。ざまあみろ」って言ってた


11: ID:nQ0vXc7R

親父さんついに言ったwww


12: ID:mR8vwZ09

渋谷の土地誰が買うんだ?一等地だぞ


13: ID:Toshi_k9

三菱地所か森ビルが買い叩くんじゃないか


14: ID:zW4qRm5S

でもそれだと財閥系が渋谷を押さえることになるな


15: ID:Tb3nHsW1

日本転生Rev1はここまでやるのか……





国会終了後。防衛省。


大泉進太郎が橘を呼んだ。「橘さん、少し意見を聞かせてほしい」


「なんでしょう」


「ウクライナ戦でGPS妨害が深刻な問題になっている。ロシアが広域GPSジャマーを使っていてウクライナ軍のドローンや誘導兵器の精度が大幅に低下している。日本の装備も他人事ではない。特に中東で運用しているFEPAの装備への影響が心配だ。それに今後の装備調達にも影響が出てくる」


城島が口を開いた。「GPSは汎用性が高い反面、妨害への対策が不十分です。米国主導で精度は高いですが、米国が遮断した瞬間に使えなくなる。有事の際の信頼性に根本的な問題があります」


牧野が続けた。「みちびきは精度が高いですが日本近郊限定です。中東やヨーロッパでは使えない。FEPAの作戦域をカバーできていません」


大泉が橘を見た。「橘さんはどう思う?」




橘がしばらく窓の外を見た。「GPS・北斗・GLONASSを上書きする日欧のグローバルGPS網を構築する必要があります」


大泉が止まった。「日欧で?」


「EUのガリレオが既にある。英国・イタリア・フランスの協力を取り付ければ——低軌道衛星24基で全球測位が完成します。GPS・北斗・GLONASSには依存しない完全独自の測位網の構築です」


牧野が続けた。「既存装備はLEO-PNT方式へのソフトウェアアップデートで対応します。今後の生産兵器とE-350BにはNICTの光無線通信ユニットをハードウェアとして追加します。10Gbpsの衛星間光通信で——電波を一切使わない測位網が完成します」


「打ち上げ拠点は?」と城島が続けた。


「フランスと調整して、ギアナ宇宙センター、種子島、フロリダを商用ベースで使います。そしてジブチに発射場を作ります」


大泉がしばらく橘を見た。「ジブチに発射場?」


「北緯11度だ。H3を三菱重工がジブチで組み立てる。An-124Bで部品を輸送すればいい。打ち上げ管制はMAGI-1が担う。民間のJFEPAの持ち物として建設します。国会審議は不要です」


「衛星は?」


「資源探査衛星として登記します」と橘が静かに言った。「NICTの光無線通信装置を搭載します。HAPS——高高度無人飛行船と固定翼無人機を成層圏に配備して中継させれば——どんな地形でも届きます」


「KDDIの海底ケーブルは?」と大泉が続けた。


「FMS特会から4000億円で発注します。南回りルートで——愛知からパプアニューギニア、インド洋、ジブチ、ケープタウン、大西洋、地中海、アドリア海を経由してアンコーナまで繋ぎます。既存ルートはどうしても中国に切断されるリスクがある。昨今多いので。スエズも関門で露出してしまうので通れない」


片貝財務相が口を開いた。「——FMS特会から4000億円ですね。了解しました」


大泉がしばらく全員を見渡した。「いつから考えていたのか?」


橘は答えなかった。





翌日。外務省。


片桐が航空機に乗った。ブリュッセル、ロンドン、ローマ、パリ——各国へのトップ会談に向かった。




同じ頃。望月邦彦が電話をかけた。


「カール、久しぶりだな」


ドイツの重鎮カール・ハインツ・ブランドの声が電話の向こうから聞こえた。「——望月か。また何か面白いことを考えているのか?」


「そうだ。今度は宇宙だよ」


しばらく沈黙があった。


「——詳しく聞かせてくれ」





同じ頃。東京。某所。


水島義雄が橘と向かい合っていた。


「渋谷のNHK跡地の件だが」と水島が静かに言った。「JDETAの名義で買い取りたい。三菱にも三井にも持たせん」


「——了解しました」


「MAGI-3に設計させた。大林組と大成建設に発注する。1兆6000億円、言い値でやらせる。その代わりタチコマ、タコマ、ドールIの優先供給権を付ける」


「HighlandersとTachikoboも東棟に入れますか?」


「当然だ」と水島が続けた。「西館には4250世帯の賃貸を供給する。1LDKと2LDKのみ、賃料15万円。日本国籍専用だ。渋谷に手頃な住居を——それが都民への還元だ」


「2028年4月1日から解体、1年半でしゅん工ですね」


「そうだ」水島が続けた。「トーチタワーより低くても延床面積は3倍以上ある。代々木公園と繋がる30mの緑地帯も整備する。高さで競うのは成金だ。緑地帯の広さで品格を見せる」


橘が静かに言った。「さすがですね、水島さん」


「82年生きてきたからな」と水島が静かに笑った。


少し間を置いて続けた。「そろそろ、有里子くんにも考えを改めさせる必要があるからな。都知事ごときが国民を見下ろすなどと……」


橘がしばらく水島を見た。「——都知事選にまで手を回すんですか」


「当然だろう」水島が静かに続けた。「JDETAツインタワーが建てば——都民は自然に答えを出す」


橘は答えなかった。


「——まだ死なんよ」と水島が静かに笑った。




【JDETAツインタワー渋谷 計画概要】


所在地:東京都渋谷区(NHK放送センター跡地)


開発者:JDETA


設計:MAGI-3


施工:大林組・大成建設(共同施工)


工期:2028年4月1日解体開始→2028年10月解体完了→2029年10月しゅん工


敷地計画——


代々木公園側:銀杏並木の中央遊歩道(緑地帯30m)

外周全周:緑地帯10m


建物諸元——


| 項目 | 内容 |

|——|——|

| 低層棟(商業フロア) | 200m×300m・地上10階・4隅R20m |

| ツインタワー(各棟) | 180m×100m・地上55階・中空構造80m×30m |

| 全高 | 275m |

| 延床面積 | 約179.6万m2 |

| 構造 | 免震構造 |

| タワー形状 | らせん構造の楕円形・10Fルーフトップにドーナツ型運動場 |


フロア構成——


低層棟(両棟共通・地上1〜10F)


| フロア | 用途 |

|——|——|

| 1〜10F | 商業施設(59,900m2×10F) |

| B1F東 | 高級飲食店街(10,000m2) |

| B1F西 | 大衆飲食店街(10,000m2) |

| B2〜B4 | 地下駐車場(東西各400台×3層=計2,400台) |


西タワー(民間・公共系)——


| フロア | 用途 |

|——|——|

| 11〜20F | スタートアップ専用シェアオフィス(坪1.5万円) |

| 21〜25F | 幼稚園・学校・学習施設 |

| 26〜50F | 賃貸マンション(1LDK・2LDK・75m2・月15万円・日本国籍専用) |

| 51〜53F | スカイラウンジ |

| 54〜55F | 消防分署・診療所・警視庁分署・備蓄庫 |

| 屋上 | ヘリパット10機(防災・ドクターヘリ・警視庁ヘリ) |


東タワー(JDETA・政府系)——


| フロア | 用途 |

|——|——|

| 11〜20F | 貧国大使館・領事館(中東・アフリカ諸国向け格安賃料) |

| 21〜30F | 中央官庁の日本転生Rev1関連部局 |

| 31〜45F | JDETA参画企業(三菱重工・JFE等)・Highlanders・Tachikobo |

| 46〜50F | JDETA本社 |

| 51〜52F | FEPA日本支社 |

| 53〜55F | 自衛隊特殊部隊 -都内駐屯地|

| 屋上 | ヘリパット10機(自衛隊専用) |

| 地下北側 | miniMAGI+サーバー室(5ラック・JDETA出資・FEPAレンタル運用・政府戦略資産) |


住居概要——


総戸数:4,250世帯(25フロア×170戸)

間取り:1LDK・2LDKのみ(各75m2)

賃料:月15万円程度

条件:日本国籍所有者専用・賃貸のみ・億ションなし


年間収益(概算)——


| 項目 | 年収 |

|——|——|

| 商業フロア | 約436億円 |

| 東館テナント(JDETA系) | 約76.5億円 |

| 西館スタートアップ | 約726億円 |

| 西館住居賃貸 | 約76.5億円 |

| 公共系テナント | 約65億円 |

| B1F飲食街 | 約164億円 |

| 駐車場(2,400台) | 約144億円 |

| 合計 | 約1,688億円/年 |

| 修繕積立(1割)控除後 | 約1,519億円/年 |


総事業費:約1兆7,500億円(土地取得+建設費)

投資回収:約11.5年




東京。内閣官房。


城島が橘に報告した。「NHK民営化法案が通った。GPS問題への対処も動き出した。片桐さんがブリュッセルに降り立った。望月さんがカールと話している。水島老人が渋谷を動かし始めた」


「そうか」


「全部同時に動いているな」


「そうだ」


城島がしばらく橘を見た。「——1話の深夜の報告書から、ここまで設計していたのか?」


橘は答えなかった。


ドールA10001号が温めたコーヒーを差し出した。橘が受け取った。今日も温かかった。


窓の外に霞が関の冬の空が広がっていた。


ジブチでは田中本部長が発射台の積算を始めていた。三菱重工がH3の輸送計画を立てていた。KDDIが海底ケーブルの南回りルートを確認していた。NICTが光無線通信装置の量産を検討していた。渋谷のNHK本社ビルに財務省の担当者が入っていた。大林組と大成建設の担当者がMAGI-3の設計データを受け取っていた。水島老人が次の手を考えていた。


全部同時に動いていた。


冷めたコーヒーに手を伸ばしたが、もう飲んでいた。珍しく、空のカップを持ったままだった。

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