49解放
レーナの手によって、死んだヴァンパイア公爵であるベネジクト。
「降伏します」
そう言って、持っていたナイフを地面に捨てるグルコル。
両手を上に上げて、戦う意思はもう無いという姿勢を見せる。
僕は警戒しながら、構える。
武器を下ろしたとしても、油断ならない。
もしかしたら、油断させておいて、攻撃してくるかもしれない。
そう思っていたけど、レーナは何の警戒もなく、グルコルに近づく。
「貴方だったのですね」
「はい?」
「私の拘束を解いてくださったのは」
「………」
グルコルは黙り込む。
「え?どういうこと?」
「ああ、リック。私がこの地下都市に来た時に、拘束された時がありまして、その時に拘束を誰かが解いてくれたから脱出できました。恐らくですが、貴方がそれをしたのですよね?」
聞いたところによると、レーナは一度目にベネジクトに敗れて、研究所みたいな場所で、実験という名の拷問を受けていたみたいだ。
そして、何者かに拘束を解かれ、抜け出せた。
それを聞いて、僕は顔から火が出るぐらい怒りが込み上げた。
ベネジクトというヴァンパイアをもう一度殺したくなるくらい。
レーナは、再度グルコルに問いかける。
暫くして、グルコルは顔を俯かせて頷く。
「はい…私が拘束を解きました」
グルコルの答えを聞いて、レーナは満足そうに頷く。
「私の拘束を解いた理由は…」
「ただの…偽善です」
「なるほど、偽善ですか」
「はい、可哀想だと思ったので」
可哀想だから、解放した。
如何にも、偽善的な答えである。
でも、そんなグルコルを、レーナは攻めなかった。
「私は…いえ、私だけではありません。ここに住んでいる爵位の持っていないヴァンパイアたちは、皆…ベネジクト様………私の姉を恐れていました」
何と、ベネジクトは、グルコルの姉で会ったみたいだ。
確かに、ベネジクトと同じグルコルは、赤い髪に赤い目を持っている。
通りで、誰かに似ていると思ったら、姉妹同士だったとは。
「でも、姉が倒され、この地下都市から出られる出口も空きました」
グルコルは、上を見る。
地下都市の天井には、僕がレーナを助けるために、イッカクを使って、掘り進めた穴がある。
「貴方がみんなを解放をすれば良いのでは?」
「え?」
グルコルは、素っ頓狂な顔をする。
「貴方の様子を見るに、貴方も姉であるベネジクトに無理やり従わされていたのでしょう。しかし、ここでベネジクトの次に立場や実力が高いのは、貴方。ならば、貴方が新しいヴァンパイア達のリーダーになって、みんなを解放すればいいのです」
「私が解放………」
グルコルは、周囲にいる爵位無しのヴァンパイアを見る。
彼らの顔には、不安そうな色があった。
グルコルは、一度を瞑ってから、目を開いて、覚悟の顔をする。
「そうですね。私がみんなを解放して、みんなへの罪滅ぼしが出来れば思います」
レーナは満足そうに頷く。
だけど、その時、
「う?!」
「レーナ!」
レーナが崩れ落ちる。
僕は駆け寄って、レーナを受け止める。
受け止めたレーナの額には、大粒の汗があった。
かなり疲弊している。
「レーナ、大丈夫?!」
「ええ、平気です。ちょっと血の操作に慣れて居なくて、力を使い過ぎました」
そう言って、レーナはゆっくりと眼を閉じる。
体力を回復させるために、眠ったようだ。
それと共に、レーナの体に纏わせてあった血が、身体の中に戻る。
裸になってしまったので、僕は上着を脱いで、レーナに掛ける。
何はともあれ、何とかレーナを救出できた。




