45再戦①
「リック!」
「わあ!」
ようやく見つけることが出来たレーナ。
出会い頭に、飛びついてくる。
僕も驚きながら、レーナを抱きしめる。
暖かく、良い匂い。
間違いなく、レーナだ。
何だか、布を巻いただけの恰好をしているけど。
『ママ、会いたかった!』
「私も会いたかったですよ、クロちゃん』
レーナはクロの頭を撫でる。
クロは嬉しそうだ。
「「…………ん」」
そして、僕とレーナをキスをし合う。
少し会えなかった時間を埋めるように、互いの唇の柔らかさを堪能する。
周囲には、クロやイッカク、遠巻きに爵位を持っていないヴァンパイアたちもいるが、気にしない。
暫くして、唇を離す。
名残惜しいけど、今はレーナや周囲の状況を確認しないと。
「レーナが無事で良かった」
「はい。私もリックに会えて、凄く嬉しいです」
「ここで、何があったの?」
「えっと…それがですね」
そうして、レーナはここに転移されてから今までの状況を説明する。
来たところによると、レーナはあの城みたいな場所の奥の部屋に転移されたのこと。
そこには、多くのヴァンパイアがいた。
でも、城みたいなところにいるのが、爵位を持ったヴァンパイア、つまり強力なヴァンパイアであり、街に見たいな場所にいるヴァンパイアが爵位無しであるそうだ。
爵位の無いヴァンパイアによると、この地下都市は数百年前に、人間との戦いで、人間が転移の魔導装置を使い、多くのヴァンパイア達をここに閉じ込めたのこと。
そして、爵位の持った力のあるヴァンパイアは、この地下都市を新たな居住区として、爵位の持っていなく力の無いヴァンパイアを支配しているらしい。
しかも、人と比べて何も食べなくて良い期間が長いとはいえ、爵位無しのヴァンパイアを定期的に、食べているのだ。
何て、惨い共食い。
その爵位持ちのヴァンパイアを統括しているのが、公爵であるベネジクトらしい。
確か、さっきの爵位無しのヴァンパイアの会話にも出てきたな。
やっぱりベネジクトと言う奴が、ここの首魁らしい。
ならば、ソイツを倒せば。
そう思っていたら、
「これは何の騒ぎだ」
後ろから女性の声が聞こえる。
それも強者特有の覇気の籠った声。
僕は声のした方へ振り替える。
そこには、赤い髪に、赤い眼。
黒いドレスを着た女性がいた。
大柄であり、僕よりも背が高い。
誰もが認める美人であるが、口から鋭い犬歯があり、ヴァンパイアであるのが分かる。
なにより、女性から放たれるオーラが、ただものではない。
言われなくても分かる。
このヴァンパイアが、公爵であるベネジクトだ。
ベネジクトは、周囲に倒れている爵位を持ったヴァンパイア達を見て、僕達を見る。
その顔には、怒りの色があった。
「よくも、我の配下を…貴様らがやったのか?」
今にも飛び掛かりそうな雰囲気である。
これは交渉の余地何て無さそうだ。
と思っていたら、ベネジクトは懐から何かを取り出す。
それは半透明な袋に詰まった赤い液体。
赤い液体を、豪快に飲み出す。
「あれは…」
レーナは赤い液体を見て、身構える。
聞くところによると、あれは血液らしく、あれでベネジクトは大幅に強化されるみたいだ。
血を飲み干したベネジクトは口元の血を拭う。
すると、ベネジクトに何か力のような物が集中するのを感じる。
吸血で、能力が上がったのだろう。
直感的に理解できるのだ。
強化したベネジクトは、イッカクを従魔にして、強くなった今の僕よりも強い。
恐らく、レーナよりも。
僕達とベネジクト…両者の間に、沈黙が走る。
次の瞬間、
「っ?!」
僕の目の前に、ベネジクトがいた。
何て速さ、目で捉えきれなかった。
でも、薙ぎ払われる拳は何とか見えたので、両腕で咄嗟に守る。
ガン!
ものすごい衝撃が両腕に来る。
僕はものの見事に吹き飛ばされる。
「リック?!」
『パパ?!』
レーナとクロが慌てる。
集団から離される僕。
正しい判断だ。
この中で、一番弱いのは僕だもの。
「貴様がドラゴンどもの主だな。何故、人間如きがドラゴンに指令を出しているのかは知らんが、貴様を仕留めれば、統率は取れんだろう!」
ベネジクトが僕の猛攻を仕掛ける。
僕は防御だけを考えざるを負えなかった。
反撃している暇など無い。
物凄い攻撃力と速度だ。
耐えるのに、精一杯。
「リック、今行きます!」
レーナが急いで僕の元に駆け付けようとする。
だけど、
「っ?!」
突如、レーナの後ろに誰かが現れる。
それは、赤い髪に、赤い目。
どことなくベネジクトに雰囲気が似た使用人の女性。
それは、ベネジクトと一緒に、自身への実験の手伝いをしていたグルコルというヴァンパイアだ。
グルコルは手に持ったナイフで、レーナを攻撃する。
レーナは咄嗟にガードする。
「あなたも敵ですか?」
「申し訳ございません。ベネジクト様の命令ですので」
そこへ、グルコルは無表情で、連続でナイフを切り付ける。
レーナは反撃に、突きや蹴りを放つが、軽いステップで、避けられる。
グルコルは、ベネジクトでは無いにせよ、早い身のこなしや優れたナイフ捌きで、なかなか強い。
これでは、レーナの加勢は難しいか。
ならば、
『せあ!』
ベネジクトの後ろから、クロの爪による攻撃。
それをベネジクトは、後ろを見ずに躱す。
そこへ、
『ふん!』
今度はイッカクのハンマーのような尻尾の薙ぎ払いが行われる。
ベネジクトは両腕でガードする。
ドン!
という音を立てながら、両腕から少しの流血をしながら、ベネジクトは吹き飛ばされる。
流石に、イッカクほどの重量を持ったドラゴンの尻尾の薙ぎ払いは、効くだろう。
吹き飛ばされたベネジクトは、すぐに体制を整えつつ、僕達を睨む。
「ちっ!ドラゴンが二体も相手では、分が悪い。グルコル!貴様が、あの人間の相手をしろ!私は、この半魔人の相手をする!」
「分かりました」
レーナと戦っていたグルコルは、身体を反転させ、レーナから距離を取り、今度は僕に駆け寄る。
ナイフが付き出される。
それを僕は短剣で応戦する。
横目で見ていたけど、この人もベネジクトほどではないけど、結構強い。




