44ドラゴン対ヴァンパイア②
突如、始まった地下都市での、ドラゴン対ヴァンパイアの戦い。
爵位持ちであろうヴァンパイアたちは各自武器を取って、襲いかかってくる。
その動きは早い。
『ガオオオ!!』
クロが軽く炎のブレスを吐く。
火の柱を横にしたものが一直線に、ヴァンパイアたちに向かう。
けど、
「ふん!」
ヴァンパイアたちは驚異的な脚力で大きく上に飛んだら、横に回避したりする。
人間離れした動き。
数百年前の人間と魔人との戦いで、人間側は【ジョブ】が無ければ、勝負にもならなかったと言われているが、確かにその通りだ。
魔人であるヴァンパイアの身体能力は人とは比べ物にならない。
おまけに、かなりの人数。
僕とクロだけだと、結構苦戦するだろう。
だけど、今は僕とクロだけじゃない。
『よいしょ』
イッカクがハンマーのような尻尾を振り回す。
それによって、何人かのヴァンパイアが吹っ飛ばされる。
「舐めるな!」
それでも、1人のヴァンパイアが剣でイッカクの体を切る。
しかし、
『痒いなぁ』
頑丈な鱗を持つイッカクには、全く効果がなかった。
流石の頑丈さ。
剣を鱗で弾き返したイッカクは、そのまま尻尾を回転させ、ヴァンパイアを倒す。
『おりゃ!』
「気をつけろ!コイツ、かなり強いぞ!!」
一方、黒い爪でヴァンパイアたちを薙ぎ払うクロ。
周囲にいるヴァンパイアが、クロの強さに警告を促す。
ヴァンパイアたちは、クロとイッカクのドラゴン組に手も出せない状況だった。
形勢は完全に、こちら側が優勢。
そう思っていたら、
「お前だな!」
ヴァンパイアの1人がこっちを一目散に向かってくる。
「あのドラゴン2体に指示を出しているのは、お前だな!人間如きが何故ドラゴンを操っているのかは知らんが、貴様さえ殺せば!」
ヴァンパイアが槍を向けて、刺突を繰り出す。
なるほど、『ドラゴンテイマー』である僕を狙うのは大正解である。
なにせ、ドラゴンを操れるとは言え、テイマー系のジョブは基本、本人は非力である。
だから、こそテイマーは誰かと戦闘になったら、護衛となる従魔をそばを置くか、自分はどこかに隠れるのがセオリーである。
でも、僕にはクロとイッカクの2体しかいない。
さらに、周囲には隠れる場所もない。
ならば、終わりか?
いや、
「よっと!」
迫り来るヴァンパイアの槍の刺突を、余裕を持って躱す。
槍の軌道がゆっくりに見える。
単純に、僕の動体視力が槍の動きを捉えているのだ。
「まぐれだ!」
ヴァンパイアは連続で刺突を繰り出す。
でも、どれもが僕に当たらない。
僕が全部躱すからだ。
ヴァンパイアだけあって中々早いけど、全力のレーナ程ではないし、今の僕は、テイマーとしての加護を受けているので、身体能力が大幅に上がっている。
テイマーは何かをテイムすると、テイムした従魔から少しだけ、力を分け与えられる。
その分け与えられた力で、テイマーは能力を上げ、より強いものをテイムするのだ。
「は!」
僕は槍を躱し様に、持っていた短剣で、ヴァンパイアの胸を切り裂く。
「な?!」
ヴァンパイアは信じられないと言った表情で、崩れ落ちる。
ヴァンパイアからしたら、非力な人間に攻撃をかわされ、あまつさえ致命的なダメージを加えられるとは夢にも思わなかっただろう。
「ア、アイツ…強いぞ?!」
崩れ落ちたヴァンパイアを見て、他のヴァンパイアが警戒の顔をする。
他のヴァンパイアも、僕を美味しい相手だと思ったのに、予想外の強さに、一歩出せずにいた。
隙だらけである。
『ギャァ!!』
隙だらけのヴァンパイアたちに、クロが爪の薙ぎ払いをお見舞いする。
次々に戦闘不能となるヴァンパイアたち。
そして、ヴァンパイアが最後の1人になったところ。
「くそ!叶わなねぇ!ベネジクト様に報告せねば!」
翻って、逃走を選択する。
行き先は城のような場所。
もしかして、あそこに…そのベネジクトという人がいるのか?
追うべきか、そう思っていると、
「はぁ!」
「ぐあ?!」
突然、横からの蹴りで、逃げていたヴァンパイアが吹っ飛ぶ。
鋭く重い蹴り。
蹴ったのは、美しく白くスラリとした足の持ち主。
さらには、ミッドナイトブルーの髪をたなびかせている。
勿論、
「レーナ!」
『ママ!』
探していた人であるレーナ本人であった。




