43ドラゴン対ヴァンパイア①
クロ、イッカクと共に、地下都市の地面に降りる僕達。
ズドン!
物凄い衝撃音が響く。
イッカクを下敷きにしたので、僕とクロは無事だが、イッカクは、
『いってぇ…尻もち付いた』
愚痴を言いながらも、そこまで怪我は無いようだ。
流石は、ドラゴン種である。
『ここに、ママがいる!』
クロがイッカクから降りて、辺りを捜索する。
クロは黒竜だけあって、探知範囲が広い。
ここにレーナがいるなら、感じ取れるはずだ。
だけど、
『う~ん…』
難儀している様子だ。
「どうした、クロ?」
『ママみたいな気配がたくさん感じる。ママが何処に居るか分からない』
「え?」
僕は首を傾げる。
どういうことだ?レーナみたいな気配がたくさんあるってことか?
レーナみたいな気配って……まさか、魔人のこと?
思考している僕の耳に、
『誰か来る!』
クロの叫び声が響く。
僕は考えるのを止めて、辺りを見る。
すると、
「ん?人?」
何と、人が周囲に群がっているのだ。
服装的に、街にいる人みたいだ。
土や石で出来た家々のような物があるから、人がいると思ったけど、本当にいるなんて。
「誰だい、あんた等」
周囲にいる人たちの1人が、僕達に尋ねてくる。
「すみません。僕たちは上から来ました。レーナと言う女性を探しています。知ってますか?」
「レーナ?そんな人は知らないが……そんなことより、あんた等…上から来たのか?」
「はい。このグランドドラゴンのイッカクに乗ってきました」
それを聞いた瞬間、周囲の人は騒めく。
「上から来た?と言う事は、俺たち出られるのか?」
「あの角の尖った生き物に乗れば、この地下から出られるってことだよな?」
「でも、この事態をベネジクトが許すと思えん」
何やら、ここにいる人たち同士で会話をしている。
ベネジクト?
誰だろう。もしかして、この地下都市を治めている貴族みたいな人かな?
『パパ…この人達、可笑しい』
ここで、クロが訝し気な声で言う。
「可笑しい?」
『ママみたいな気配…多分、この人達、ママと同じマジン」
「何だと?!」
これは驚きだ。
まさか、ここに居るみんな、レーナと同じ魔人だなんて。
確かに、よく見れば、彼らの口には、人とは思えない鋭い犬歯がある。
待てよ、鋭い犬歯。
こんな暗い場所に住んでいる。
そして、魔人。
本で読んだことがある。
これに該当する特徴のある魔人。
僕は直球に聞く。
「貴方がたって、ヴァンパイアですか?」
「ああ、そうだ」
僕の質問への回答はあっさり帰ってきた。
ヴァンパイアは、数ある魔人の中でも、もっとも有名なもの。
数百年前、多くの人が戦って来た魔人の中でも、一際危険と呼ばれている魔人。
別名、吸血鬼と呼ばれている魔人。
血を吸う魔人であり、日光が弱点。
「俺たちはヴァンパイア。と言っても、爵位は無い」
「爵位が無い?」
聞いたことがある。
ヴァンパイアには、貴族のような男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵みたいに階級があると。
階級で強さが変わる。
でも、ここのヴァンパイアがさっき爵位が無いと言った。
もしかして、階級があるヴァンパイアは一部で、大体は爵位無しなのか?
そう思っていたら、
「何の騒ぎだ?!」
周囲にいる多くのたちを押し除けて、こっちに来る者たちがいた。
彼らは、土や石で出来た家からではなく、城のようなものから来た。
よく見ると、彼らも口から鋭い感じがある。
彼らもヴァンパイアだ。
だけど、周囲にいる他のヴァンパイアよりも、何かが違うような気がする。
纏ってる魔力が大きい。
現れたヴァンパイアたちは、僕たちを見て、目を細める。
「……人間?何故ここに?」
そうして、僕たちを見て首を傾げた後、上を見る。
僕たちの上には、イッカクによって掘って作られた大穴があり、そこから微かに太陽に光が漏れている。
それを見て、だんだんヴァンパイアたちの顔に獰猛な笑みが広がっていく。
「まさか、上から来たというのか。ならば、ここから出られるということか。これは良い。人間どもの、この洞窟に幽閉されてから数百年。ようやく出られるというのか」
この洞窟に幽閉?
もしや、漆黒の森の地上にあった転移装置は、大昔の人がヴァンパイアたちを閉じ込めるため?
つまり、牢獄。
だとしたら不味い。
僕は、その牢獄に穴を開けたんだ。
穴が空いたのなら、牢獄にいる者は、そこから出ようとする。
周囲にいる爵位なしのヴァンパイアは良いとして、この城のような場所から来たヴァンパイアは、危険みたいだ。
出すわけに行かない。
「あなた達をここから出さないほうが良さそうです」
「ほざけ、人間如きが。人間が伯爵である我に指図するとは、万死に値する」
伯爵…やっぱりコイツらは爵位ありのヴァンパイアだったか。
纏っている魔力が違うもんな。
「ここから出る前に、お前の血を養分にして、ここから出るとしよう」
爵位持ちのヴァンパイアたちから、殺気が漏れる。
来る!
「やってみろ!クロ、イッカク!戦闘だ!」
『うん、任せて!』
『うう、めんどくさ』
こうして、地下都市にて、ドラゴンとヴァンパイアの戦闘が始まる。




