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『ドラゴンテイマーと魔人』 ~追放された不遇職の僕は、婚約者だった公爵令嬢と共に、何とか生き抜いていこうと思いました~  作者: 星衛門
2章 ヴァンパイアと赤血種

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42/50

42イッカク




 「貴方は、ここから出たいのですか?」

 「ああ、出たいさ。ここでは、ただ他のヴァンパイアに食われるか、ベネジクトに研究対象にされるだけ。それなら、この地下都市から出たいに決まってるさ」

 「でも、ここには出口は無いのですよね」

 「無い。あったら、他のヴァンパイアはとっくのとうに出てる。どこにも出口が無いからこそ、共食いをやってるのさ」

 「それは困りました」


 レーナは本当に困った。

 出口が無いのなら、文字通り積んでいるからだ。


 当然、レーナもずっとこの地下都市に居たい理由はない。


 どうしようかと悩んでいる、その時だった。


 ドガアアア!!!

 物凄い衝撃音が聞こえる。


 耳が悪い人でも、聞こえてしまうほどの爆音。

 滝が流れる音に似ている。


 レーナも女性のヴァンパイアも、同時に驚く。


 爆音の音源は、家の外からである。

 レーナも女性も急いで、窓の外を見る。


 すると、


 「あ、あれは!」


 視力の良いレーナが外の惨状を見て、さらに驚きの声を出す。


 天井が崩れている。

 強大な地下空洞の一部の天井が落ちてきているのだ。


 爆音の正体は、天井が崩れた音である。


 問題は何故、天井が崩れたのかであるが、


 「?!まさか!」


 目を凝らして、よく見ると、崩れた天井から何かが落下していた。


 天井に岩では無い。

 岩のような大きな生き物。


 その生き物は岩の鱗を持った二足歩行の蜥蜴だった。


 さらには、堂々たる強靭そうな足に、ハンマーのような尻尾。

 特徴的なのは、槍のように尖った頭部。


 まさに、岩のドラゴンと言った姿。


 そんなドラゴンが天井から降ってきた。

 何故と思うよりも先に、ドラゴンである事実に、レーナは何か思い当たる。


 もしかして、彼がやってきたのか。


 レーナは視線を動かして、落ちてくるドラゴンの近くを見る。


 そして、


 「ふふ…」


 レーナは軽く笑ってしまう。

 それは可笑しさと安心感からである。


 岩のドラゴンの傍には、見知った少年と小さな黒いドラゴンがいた。


 間違いない、リックとクロだ。

 詳しい経緯は知らないけど、リックが岩のドラゴンを使って、地面を掘って、この地下都市まで助けに来てくれたのだ。


 そう思うと、安心から涙が出てくる。


 「なんだいあれ?!天井が崩れて!あれはドラゴンかい!」


 一方の女性のヴァンパイアは驚いているままだった。


 「安心してください。あれは、私の仲間です。私の仲間が助けに来てくれたのです」

 「あんたの仲間。…………ということは!ここから出られるのかい?!」


 この地下都市からの脱出を想像して、女性は若干喜びの顔を取る。


 それは、そうだ。

 数百年、地下に幽閉された身だ。


 ヴァンパイアとはいえ、出たいに決まっている。


 多分、リックは地面を掘り進められる何らかのドラゴンを『ドラゴンテイマー』で従魔にして、ここまで助けに来たのだ。


 ならば、レーナのやることは決まっている。


 ここを支配しているヴァンパイア公爵のベネジクトを倒して、ここから出ることだ。


 レーナとて、ヴァンパイアと同じ魔人。

 何の罪のないヴァンパイアが爵位持ちのヴァンパイアから虐げられるのは辛い。


 ベネジクトは強い。

 それは身を持って知っている。


 でも、リックとクロがいる。

 特に、クロは黒竜の子供。


 そこらの強敵が束にかかかっても纏めて蹴散らすぐらい強い。

 今は一刻も早くリックと合流せねば。









 レーナがリックとの合流を考えている中、リックはと言うと、


 「うわ?!何、ここ?!」


 僕は目の前に景色を見て、驚く。


 地面を掘り進んでいた先が、巨大な空洞になっていたのだ、驚きもする。


 しかも、ただの洞窟ではない。

 街がある。


 土や石で出来た家がたくさんあるのだ。

 その家からも灯りがついている。


 この街には、多くの人が住んでいると言うことだ。

 こんな地下都市に住んでいるなんて、どんな物好きだ?


 後に、正解はヴァンパイアであると知る。


 『はぁ…なんでこんな場所まで潜らんと行かん?』


 僕のそばで愚痴を漏らす声がある。

 それは、ついさっきテイムしたグランドドラゴンである。


 今、僕はテイムしたてのグランドドラゴンを使って、レーナをどこかへ飛ばした転移装置が繋がっている地脈を追って、この地下都市まで潜ったのだ。


 レーナが地下の奥深くまで転移されたと考えた時は、どうしようかと悩んだ。

 悩んだ末、思いついたのは、地面をも掘り進められるドラゴンをテイムして、地下まで行くというもの。


 荒唐無稽で、無計画な考えだが、どうにか成功した。


 滝のそばに、グランドドラゴンという地面を掘り進められるドラゴンが生息していたのだ。


 だけど、コイツのテイムにも苦労した。

 何せ、すぐに地面に潜るから、テイムは愚か、クロも攻撃が碌にできない。


 本当に苦労した。


 クロが高いの炎のブレスで地面を丸ごと焼いて、熱さから地面から飛び出したグランドドラゴンを叩くという力技でどうにか弱らせて、僕でもテイマ可能となった。


 テイムした後は、ひたすらグランドドラゴンに地面を潜らせた。


 『ドラゴン使い粗い主人やな』


 グランドドラゴンのイッカクが、またしても愚痴を漏らす。


 僕は折角なので、グランドドラゴンにイッカクという名前を与えた。

 とんがった角からだ。


 恐らく僕以外だと、グランドドラゴンの言葉は唸り声しか聞こえないだろう。


 だが、そこは僕の【ジョブ】である『ドラゴンテイマー』。

 『ドラゴンテイマー』ならば、ドラゴンをテイムできるし、ドラゴンだけが話す言葉すらも聞き取れる。


 『文句言わないで、ママを助けるため!』


 僕の隣で、黒竜のクロがイッカクを叱る。


 僕、クロ、イッカクは地下を掘って、そのまま地下都市に突入した。




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