36レーナ探索③
「はぁ…はぁ…」
『ううん…何処にあるんだろ?』
リックが走る。
その後ろからクロが付いてくる。
リックとクロは、「漆黒の森」の中を走り回っていた。
少し前から、ほぼ全力疾走で走りっぱなしだ。
いくらクロからの力の譲歩を受け、身体能力が大幅に上がっても、かなり体力を消耗してしまう。
何故こうして、リックはクロと走っているかと言うと、地下に潜れるためのドラゴンを探すためである。
クロ曰く、レーナが転送された場所に繋がると思われる地脈の経路は途中から、地中深くに潜っているとの事。
つまり、レーナは地下の奥深くに転送された可能性がある。
今のリックとクロには、自力で地下深くに行くことは出来ない。
ならば、どうするか。
リックは『ドラゴンテイマー』。
ドラゴンを使役する【ジョブ】使い。
ならば、話は単純。
地下深くを潜れるドラゴンをテイムして、レーナを探せばいい。
………とは言ってもものの。
言うは易く行うは難し。
そんな地下深くを潜れるドラゴンなどと言った都合の良いものが近くにいるわけない。
いたとしても、今の自分にテイム出来るかどうか。
黒竜であるクロをテイム出来たのは、クロ自身がテイムを望んでいたからだ。
クロをテイムした事で、大幅に力の供給は受けられたけど、依然として、リックとドラゴンとの間には、隔絶した差がある。
例えいたとしても、テイムできる保証なんて、何処にもない。
それでも、探すしかない。
レーナが危険に晒されているかもしないからだ。
「ふぅ!ふぅ!」
『な、ないね…パパ。川…』
リックとクロは、地下に潜れそうなドラゴンを必死に探す。
川だ!川を探すんだ!
地面に潜れそうなドラゴンを探すなら、そう言ったドラゴンが良そうな場所に向かうんだ。
その場所は川の流れる先に通じている可能性が高い。
そのために川を探している。
『『『ゲギャア!!』』』
途中、途中に出くわす。
当然だ、ここは「漆黒の森」。
「邪魔だ!」
『邪魔!』
リックとクロは、怒りは任せ気味に、魔物を倒す。
クロが爪で薙ぎ払い、偶に炎で炙る。
リックは慎重に一体ずつ魔物を倒していく。
本当に、魔物に構ってる暇が無い。
クロとのタッグで、魔物はだいたい苦戦せずに倒せる。
偶に、強力な魔物に出くわしても、黒竜であるクロの前では雑魚である。
レーナを探索し始めて、一時間以上経ったか。
「あった!」
リックとクロはようやく川を見つける。
ドドドド!!
物凄い水が流れる音がする。
「漆黒の森」に流れる川は、穏やかとは正反対のものである。
少しでも片足を浸からせたら、一気に体を持って行きそうなほどの勢い。
しかも、とても濁っている。
泥水と混じっている色であり、とてもではないが飲めたものではない。
だけど、今回の目的は川を渡す事でも、泳ぐことでもない。
その流れる先に行くことだ。
「行くぞ、クロ!」
『うん!』
リックとクロは、早速…川の流れる先を走る。
そうして、流れる先に行きついた場所は、
「あった!滝!」
目の前には、巨大な滝があった。
途方もない水が下へと落ちて行く。
水の落ちる音が飛んでも無い。
大声を出しても、数メートル離れれば、掻き消してしまうぐらいだ。
『凄い景色』
クロが目を輝かせて、滝を見つめる。
リックもそうだが、クロは初めて滝を見る。
確かに、こんなに壮大な光景は普通、見れないものだろう。
だけど、うっとり見ている暇はない。
早く目的のドラゴンを探さねば。
ここで、何故リックが滝を目指していたかと言うと、
「うん、地面が柔らかい」
リックは滝の近くにある地面を踏み鳴らして、地面の感触を確かめる。
地面は、すぐ近くに滝があるため、水分を過分に含んでいるせいで、とても柔らかい。
これだけ地面が柔らかいなら、地面に潜りやすいだろ。
前に本で読んだことがある。
ミミズやモグラと言った地面に頻繁に潜る生き物は、地面は柔らかい場所を好むと。
だから、川を下り、地面が柔らかそうな滝を目指したのだ。
地面が柔らかいなら、ミミズやモグラだけでなく、地面に潜ることを得意としたドラゴンが、この場所を好むのも可笑しくない。
ググググ!!
「ん?!地面が!」
『揺れてる?!』
突如、地面が揺れ出す。
これは、何かが地面を掘り進んでいるような感覚。
早速、お出ましか!
リックが身構えていると、
『ギュララララ』
地面から出てきたのは…………一言で言えば、ミミズの怪物。
大きな蛇のような長い身体。
しかし、その体躯は太い。蛇よりも芋虫に近いだろう。
口となる部分には、大きな口に、無数の牙があった。
コイツは、
「トレマーズ!」
目当てのドラゴンではない。
トレマーズと言って、主に地面を掘り進んでは、地上にいる人を食べる魔物である。




