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『ドラゴンテイマーと魔人』 ~追放された不遇職の僕は、婚約者だった公爵令嬢と共に、何とか生き抜いていこうと思いました~  作者: 星衛門
2章 ヴァンパイアと魔人

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30地下都市




 レーナが部屋の扉に手を掛ける。

 そこで、


 「まだ……だ」


 一人のヴァンパイアが立ち上がる。

 仕留めたと思ったら、まだ完全には昏睡していなかった。


 それはヴァンパイア達に指示を出していたリーダーの男だった。


 レーナを睨みつけ、剣を構える。

 この男は、どうやら他のヴァンパイアよりも頑丈みたいだ。


 「子爵である私が、貴様のような小娘に負けられるか!」

 「子爵?」


 ヴァンパイアは自身を子爵と言う。

 子爵とは、貴族に置いての階級である。


 そう言えば、聞いたことがある。

 ヴァンパイアには、それぞれ強さに応じて、階級があり、その階級は貴族と同じ。


 下から男爵、子爵、伯爵、侯爵、公爵。

 つまり、ヴァンパイアで言えば、公爵が一番強い。


 この男は子爵と言った。

 下から数えて、二番目。


 恐らく、男以外のヴァンパイアは男爵だろう。


 「ああ!」


 男が飛び掛かる。


 男の剣をギリギリで躱しつつ、


 「〈呪闇・睡〉」


 闇を纏った蹴りで男を撃つ。

 一撃だけでなく、二撃目、三撃目。


 連続の蹴りに、男は崩れ落ちる。


 「何故、魔人の貴様が【ジョブ】を……」


 男は不可解と言う顔のまま、崩れ落ち、そのまま眠る。

 レーナの睡眠効果のある闇の攻撃が効いたみたいだ。


 彼女は半魔人。

 魔人としての強力な肉体に、人の特権である【ジョブ】を持っているのだ。


 眠っている男を見下ろしながら、レーナは眉根を寄せる。


 このヴァンパイア達でも、レーナを苦戦させている。


 これより強いヴァンパイアが三階級もいる。

 果たして、それらと出くわした際、自身は勝てるだろうか。


 ここで、レーナは首を振る。

 考えても、仕方ない。


 今はリックとクロに合流するために、出口を見つけねば。


 扉から出る。

 扉の外には、大きな直線の廊下が続いていた。


 廊下の壁の端には、いくつもの蝋燭。


 レーナは息を整えながら、進む。

 廊下を進むたび、ギシギシと音がある。


 天井には、汚れや蜘蛛の巣が大量に。

 不衛生な場所である。


 少し進んで、


 「出口?」


 廊下の先には出口らしき扉が見えた。


 ここに来るまでに、廊下は一直線。

 他の通路も無かった。


 つまり、出口。

 レーナは扉を開ける。


 扉の先は、


 「これは…ホール?」


 先程までレーナがいた大部屋よりも、さらに大きい部屋があった。


 部屋の中央には、大きなテーブルと多くの椅子。

 天井には、蝋燭の火が灯った巨大なシャンデリア。

 見る限り、その部屋には、階段や幾つもの扉があった。


 まるで、ここは城のホールみたいである。


 レーナも元公爵家の令嬢。

 故郷であるセイクリッド王国の王城に行ったことがある。


 王城には、パーティや客人を持て成しをするための大きなホールは存在する。

 この部屋のように。


 ここは、何処かの城の中なのか。


 ホールに出たレーナは、ここでホールから階段を上った先に、窓があるのに気づく。

 もしかしてら、窓から外に出られるかもしれない。


 レーナは階段を上り、窓の外を見る。


 「な?!」


 そこには驚きの光景が広がっていた。

 レーナは疲労とは別の意味で、額に汗をかく。


 「こ、これは…」


 レーナは目を見開く。


 窓の先は、外に繋がっているかと思った。

 でも、違った。


 窓の先には、巨大な空間が広がっていた。


 街丸ごとが収まるほどの空間。

 周囲を岩や土で囲まれている。

 それは、とてもとても大きな洞窟。


 この景色には見覚えがある。


 「ここは地下?」


 黒竜がいた地下の光景と似ていた。

 レーナが飛ばされた場所は地面の下の、地下であったのだ。


 しかも、ただの地下ではなく、


 「地下都市ですか」


 その巨大な地下の空間には、街があった。

 街が収まるほどの大きさと表現したが、街そのものがあった。


 土や石で出来た家々がたくさんある。


 地下の空間の天井を見ると、緑色の光源があった。

 淡い広範囲の緑の光が、日光も差し込まぬ地下の大空洞を照らしている。


 本で読んだことがある。


 あれはヒカリゴケだ。

 そのままの意味で、光る苔。


 地下の奥深くに群生している苔であり、地面からの栄養を取り入れて、発行する特性がある。


 整理すると、レーナが今いる場所は、何処かの地下都市。

 そして、このホールのある、ここは地下都市の城の中。


 レーナは困惑する。

 一体、ここから地上にいるはずのリックとクロと、どうやって合流するのか。


 レーナは、今後どう動くべきか考え込む。


 そうして、少しの間、ここからどう出るべきか思考していると。


 ガチャ。

 ここで、ホールある幾つかの扉の中でも、最も大きな扉が開く。


 咄嗟に、隠れるレーナ。


 扉からは1人の男が現れる。

 否、ただの男ではない。


 蝋燭の火で暗いが、視力の良いレーナなら分かる。


 男の口元から伸びる前歯。

 さっきの者達と同じヴァンパイアだ。


 そして、扉から現れた男を続いて、数人のヴァンパイアたちが付いてくる。


 「魔導装置に行った者たちは、まだ帰ってこないのか?」


 初めに現れた男が、付いてきた数人に問う。


 格が高いのだろう。

 この男は他の者よりも強者の風格がある。

 多分、強い。


 「はい、伯爵様。子爵様が向かったはずです」

 「では、何故遅い?」

 「分かりません。まさか…やられたとかは…」

 「何?」


 伯爵様と呼ばれたヴァンパイアが、目を細める。


 「魔導装置が作動したということは、転送されてきたのは、我らと同じ魔人。だが、それでも子爵のヴァンパイアに勝てる魔人が転送されてきたのか?」

 「そ、そうなりますね」

 「だとしたら、他のヴァンパイアにも通達せねば。まだ、城内部にいるはずだ。何としても、転送されてきた魔人を探して、捕らえねば」

 「は!」


 伯爵であるヴァンパイアは、顔に焦りを浮かばせる。


 「早く捕えねば、公爵閣下がお怒りになる」


 隠れながら聞き耳を立てていたレーナは、不味いと内心思う。


 あのヴァンパイアの言う通り、自身があの部屋に転送されてきた時に、子爵含む数人のヴァンパイアの倒した。

 早くも、その事に他のヴァンパイアが気づいた。


 これから、伯爵であるヴァンパイアの言う通り、自身の捜索が始める。

 そうなれば、見つかるのは時間の問題かもしれない。


 しかも、気になったのは、伯爵が顔に少しに焦りを馴染ませながら言った公爵閣下という単語。


 ヴァンパイアは階級で強さが決まる。

 公爵が最も強い。


 伯爵の口ぶりから、その公爵閣下が、この地下都市にいるヴァンパイアたちの首魁である可能性が高い。


 あの伯爵も、遠目で強さが窺える。

 それでも、焦りを滲ませるとは。

 

 余程強いのか、その公爵閣下は。


 取り敢えず、この場から離れるに越したことは無いだろう。


 レーナは足音を立てずに、ホールから離れようとする。


 ミシ…。

 そこで、大きくは無いが、小さくも無い床の軋む音を立ててしまう。


 「ん?誰だ?」


 伯爵のヴァンパイアが音を拾う。


 レーナは即座に移動して、一番近くにあった扉に入る。


 扉の中の部屋は……何も無かった。

 代わりに、


 「床に蓋?」


 床に何かの取っ手の付いた蓋があった。


 レーナは恐る恐る取っ手に触り、蓋を上げる。

 すると、蓋の下には、下に通ずる階段がった。


 コツコツコツ。

 ここで、扉の外から足音が近づいてくるのが分かった。


 先程の物音で不審に思ったヴァンパイアがこっちに来たのかもしれない。


 この部屋に逃げ場は、この下に行く階段しかない。

 選択肢は無かった。


 レーナは蓋を閉め、床下にある階段へ降りる。


 真っ暗だが、手探りに慎重に降りる。


 階段は長かった。

 下手をすれば、数分間も降り続けていたかもしれない。


 それでも、終わりが見えた。


 階段の下は、暗い通路があった。

 ここには、蝋燭の火が灯っていないので、余り周囲が見えないが、


 レーナは夜目が効くとは言え、暗闇の中で物が完全見えるわけでは無い。


 レーナは手探りに通路を進んでいく。

 すると、


 「明かり!」


 レーナの前方に、明かりがある場所が見えた。


 レーナは、そこに行ってみる。

 その明かりは、テーブルの上に置かれたランタンによるものだった。


 ランタンで、その周囲が見える。


 その光景は、


 「こ、これは?!」


 レーナが激しく戸惑うのも無理はない。


 明かりがあった、そこは小部屋。

 その小部屋には、無数の……器具が置かれてあった。


 ランタンの置いてあるテーブルを中心に、棚が置いてあり、棚には錠やノコギリ、ハサミ、包丁、ハンマー、何かの筒、数個の台など。


 器具の多くには、赤黒い液体がこびり付いている。


 血である。

 血が付いて無数の道具。


 レーナの背筋に冷や汗が流れる。


 その時、


 「誰ぞ、其方は?」


 小さくも大きくも無く。

 それでいて、耳に…しっかりと音声が残る声質が、レーナの鼓膜に入る。


 「っ?!」


 レーナは咄嗟に、声がした…………上を見る。


 そこには、蝙蝠のように天井にぶら下がる一人の女性がいた。

 一目で分かる。


 この女性、恐ろしく強い。




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