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<1月書籍発売中!>純粋培養すぎる聖女の逆行~闇堕ちしかけたけど死んだ仲間に会えて幸せなので今度は尊い彼らを最善最優先で…って思ったのになんで追いかけてくるんですか?!~  作者: 天壱
第三章 聖女の知らない世界

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28.聖女にとっての説得。


「ヴィー!!無事か!!?!」


「えっどどどうして大聖堂に……?」

まさかのニーロが、大聖堂の中から飛び出してきた。

まさかラウナに続いてニーロまで現れたことに驚いて足が止まってしまう。その間もすごい速さで駆け込んでくるニーロは一気に距離を詰めて私の眼前に立ち止まった。アクセルも合わせて立ち止まってくれたけど、また今度はニーロに無視されているのにすごい申し訳なくなる。ちょっと溜息も聞こえたよ!!?

私の前に立ち止まった瞬間、ガシッと両肩を掴んできたニーロが至近距離に顔を近づける。あああこうやってよく怒られたなぁと思うと今から肩が余計に強ばった。


「お前が誘拐されたって知らせが来たから探しに来たに決まってんだろ!!俺のとこまで衛兵来たんだぞ?!」

「ご、ごめんなさいそういえばそうでした……。でっでももう教皇様にも無事は伝えましたし……」

だからそれを知ったのが今なんだと、ニーロが大きな声で大聖堂を指差す。

そういえば、まだ朝食を食べて戻ってきただけだしそんなに時間も掛かっていない。私がいなくなったら、私の唯一の友達だったニーロにも衛兵が手がかりを探しに来るのは当然だ。

行方不明と聞いて、ニーロも私が行きそうな場所とか色々行って、ついさっき大聖堂までも駆けつけてくれたらしい。それで教皇様から私は無事なのと、またどこかに出て行ったと聞いたのがついさっきだと。教皇様がそこまで大ごとにしているとは思わなかった。まさか旅に出る前からニーロに迷惑をかけることになるなんてと、また「ごめんなさい」しか出なくなる。

ニーロも私の返事は慣れているからか「もう無事なんだな?!」と声を荒げてから、眉間に眉を寄せたままの目をぐっと隣に立つアクセルに向けた。


「アンタが教皇の言ってたエルフだな。ヴィーと、……いや教会とどういう関係だ?エルフが国を出るなんて滅多にないだろ」

「お前こそ聖女に馴れ馴れしいなあ?なんだヴィーって。むしろあのクソジジイがどう言ってんだ」

「あっアクセルは!私の旅の同行者で!!ニーロは私の幼なじみです!「ヴィー」は子どもの頃からそう呼んでくれてて…ニーロは国一番の剣闘士で、私の同行者に選ばれてました!でももうお断りしたのでっ……!」

ちょうど旅に出てからは呼んでくれなくなったけど!教皇様から改名された時は呼んでくれてたのに!!

お願いだから喧嘩しないで!!!と、心の中で叫びながらアクセルの腕を引っ張る。ニーロと目が合った途端、アクセルまでニーロに首を伸ばして、会話をしながら二人とも額がぶつかりそうなくらい顔を近づけて睨み合っていた。

旅中もアクセルもニーロとずっと仲良しではなかったし、この二人が喧嘩したらすごい騒ぎになる!そう思って間に入って簡単に二人のことを説明したけれど、……また何かを間違えたらしい。

次の瞬間ニーロからは「お断りぃ?!」と、アクセルからは「これがニーロだぁ?!」と仲良くないのに仲良く一緒に声が重なった。すごい、出会ってもう同時に話すなんて。二人とも共同戦線の時は息ぴったりだったもんね?!


「おいヴィー!あの勝負は無しだろ無し!!わかってるよな?!お前の降参待ちだったの忘れてねぇぞ俺は!!」

「お前どういう旅してやがったんだこンの尻軽聖女!!」

うわあああああごめんなさいごめんなさいごめんなさい!取りあえずアクセル逆行前のことは言わないで!!

背中を二人から大きく反らしながら、謝るだけで返事が追いつかない。ニーロが怒るのも当然で、昨日の勝負は本当にニーロが手加減どころか待てをしてくれたから即敗北しないですんだだけだ。

でももともと皇帝陛下には二人を連れて行きたくないって言ったし、勝負はあくまでラウナが実力確認の為に希望しただけで!もっと前からちゃんと私断ったよね?!だけどそんな言われただけで諦めないってことも知ってるよ?!ニーロは意思が強いもんね?!でも!でもおかしい!!

だって今回の旅の使命はラウナだけじゃなくてニーロにとっても望まない旅って言ってた筈なのに!!

幸いにもアクセルの言葉が耳に入っていない様子のニーロは、私の肩を掴む手に力を込め直しながらまたこちらに前のめる。


「良いから俺を連れて行っておけって!!なんでこいつは良くて幼なじみの俺は駄目なんだよ?!納得いく説明をくれ!!あの教皇にまた何か言われたか?!」

「あ、アクセルはあくまで故郷に送るだけで旅は私だけのつもりで、その先の旅までは私もまだ認めてなくて……きょ、教皇様はたぶん関係ないというか………、…………ニーロこそ、なんでそんなに付いてきたいの……?」

んぐっ?!と今度はニーロは大きく喉を反らした。途中までは納得いかないとずっと険しい顔をしていたニーロの顔が大きく離れる。

何か悪いことでも言っちゃったかのような反応に、尋ねた私まで身体を縮めてしまう。

だけど本当にそれが不思議で、回帰前だってラウナは元素魔法の地位向上の為で、アクセルは伝説の聖典を見てみたいからで、ニーロは父親である皇帝陛下に命じられたからだ。

第四皇子で、皇位継承者からは自分から外れたニーロだけど、皇帝であるお父さんの命令には皇子として逆らうわけにいかない。

教会から聖女を聖典の旅へと向かわせるなら城も、それに相応しい人間を出す必要がある。そこで矢が止まったのが、第四皇子で、国一番の剣闘士で、しかも私とも子どもの頃から友達のニーロだっただけ。

でも、今回は私から一人が良いって断ったんだし、皇帝陛下も無理に皇子を出す必要はなくなった。それなのにどうしてこんなに付いて行くって言ってくれているのかがわからない。だって、旅中はニーロずっと怖い顔だった。

応えられないように唇を結んでしまったニーロは、すごく言いにくそうに目まで私から逸らした。昨日も皇帝陛下相手にちょっと強く出られない様子だったし、やっぱり皇族として人には言えない事情があるのかな。

黙してしまったニーロを見上げながら私はもう一度口を開く。子どもの頃はちょっとくらいの差だったのに、今はニーロの方がずっと高い。


「……皇帝陛下が厳しいなら私からちゃんとまたお話するよ。陛下もニーロが剣闘士として大事な時期なのはご存じの筈だし、ニーロも剣闘士になりたくて城を出たんだよね?闘技場連続優勝者の今が一番楽しくて稼げる大事な時期なのに、旅なんか出たら勿体ないよ」

ニーロは剣闘士だ。城で武芸を極めてもっと強くなりたいからと言って城を抜け出して闘技場で活躍して、今度は城から完全に出ちゃったくらい剣闘士を楽しんでいる。

子どもの頃から強くて真面目で夢中になれるものがあるニーロのことは羨ましかったし、そんなニーロの行動力が格好良くて大好きだった。


だから旅の間も「闘技場さっさと帰りてぇ」「闘技場じゃ無敗の男って呼ばれたのに」「親父の命令さえなかったら」って聞く度に本当に申し訳なかったし、ニーロにとって一番大事で楽しい時間を奪ってしまって上手く目も合わせられなくなった。

なるべくニーロに迷惑かけないようにしようと思っても、足手まといの私じゃどうにもならなかった。今だって、理由を言えないのはきっとニーロの希望じゃなくて何か事情があるからだと思う。だってニーロはすっごい優しいし、真面目で責任感も人一番ある人だから。

無言のまま顎が微弱に震えているニーロは、奥歯を食い縛っているのがわかる。すごく言いたくない時のニーロだ。教会関係者な上に、頼れない私相手に言いたくないのも仕方が無い。「言いたくないなら良いよ」と私から折れて、困らせないようにする。


「剣闘士として大事な時期だよね?旅は大変だし、全部終えても闘技場に復帰できないかもしれないよ。……ずっとニーロが剣闘士で一番になるって頑張ってたの知ってるよ」

だからこの頃は確か一、二年くらいニーロに会える回数も減っていた。私も応援には行ったけど観客席だし、ニーロも大聖堂に会いに来ることは減っていた。ニーロが剣闘士としてどんどん活躍して強くなって一番になったのも旅に出る半年くらい前だった。つまり、つい最近だ。

剣闘士は皆の憧れで一番注目を浴びる人気の職業だ。だけど命がかかっているし、何十年も続けられる職業じゃない。ニーロはその中で一番になれた今こそ、これからたくさん試合して闘技場内での名声も高めて、皆に褒められて注目されるべき時期だ。

私の旅に同行しないで剣闘士を続ければ、きっともっとたくさん名声や功績も立てて、皇帝陛下も自慢に思ってくれるくらいの戦士になれる。銅像だって建てられるかもしれないし、本にもなるかもしれない。

聖典の旅なんて行かなくても、ニーロは自分の名前をずっと残すことができるくらいすごい人だ。一緒に旅をして、何度も命を助けてもらった私だから確信して言える。だからこそ、ニーロはやっぱりここに残るべきだ。闘技場もあって、厳しいけど息子想いの皇帝陛下もいる城もあって、…………ちゃんと国一番の医療設備のある、ここに。

あれは持病ではなくて旅の中で発症した病気だし、今回も病気になる可能性の方が低いけれど、それでもニーロには自分が一番自分らしくいられる場所にいて欲しい。


「今日は心配してくれてありがとう。会いに来てくれて嬉しかったよ!勝負もニーロの勝ちなのはわかってるからね!」

強ばった顔で完全に黙してしまったニーロに、これ以上は怒らせちゃう気がして慌てて下がる。

アクセルの背中を押して、駆け足で大聖堂に帰った。降ろした拳が震えているくらい力が入ったニーロは、返事どころか一度もこっちに目を向けてもくれなかった。

まるで説教でもしちゃったような感覚にすごい心がザクザク針か刺さった。だけど、これで今度こそニーロを巻き込まないで済んだと自分に言い聞かせながら私もその後は振り返らない。

アクセルが途中でまた目眩ませ魔法をかけてくれた中、口の中を何度も飲み込んで自分の部屋へと駆け戻った。あまりに急ぎ過ぎたのか、モイが肩に止まらずピィピィと並んで顔の傍を飛び回るまま扉を開けて部屋へとアクセルを押し込み、扉を閉じた。



…………部屋の掃除を、しないまま。



モイの警告も聞かず、アクセルに掃除もしていない部屋を全て見られた。


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【1月25日書籍発売!!】

書籍化決定


《コミカライズも決定!!》

皆さんのお陰です本当にありがとうございます!!

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