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<1月書籍発売中!>純粋培養すぎる聖女の逆行~闇堕ちしかけたけど死んだ仲間に会えて幸せなので今度は尊い彼らを最善最優先で…って思ったのになんで追いかけてくるんですか?!~  作者: 天壱
第三章 聖女の知らない世界

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33/66

26.聖女にとっては和み時間。


「……ら、ラウナは……妹さんもお子さんが産まれますし、傍にいた方が良いんじゃ……」

「妹は妹、私は私。あの子はもう良い旦那捕まえたんだから私がいなくても平気」


お互い良い大人なんだからと、笑って言い切るラウナにこういうところはラウナだなぁと思う。

ラウナは羨ましいくらい自立している女の人だもんね。私なんか今でさえこうやってラウナにべったりで強く断れないし!!家族のこと大好きでもちゃんとそれぞれ生き方分けられるところ尊敬するよ!!尊敬するところがまた一個増えたよ!!

…………けど、今はすごい困る。


どう返せば良いかもわからなくて目を泳がせれば、……ぱちりとアクセルと目が合った。

じぃーーーーっと、気付けば刺すような視線がこちらからも至近距離で注がれている。値踏みするような眼差しで頬杖をつくアクセルは背中を丸めていた。ごめんね完全仲間外れにしちゃってたね?!


「あ、アクセルごめんなさい……その、こっこちらがラウナです……。わた、私の旅の同行に任命されてて、でも、私は断りたくて……」

「?!断りたい?!!」

ここまできて?!と。

アクセルに手でも示して紹介しながら断ってみたら、覚悟してたよりもすごい大きな声が放たれた。すごいショック受けたような声に、ラウナへ顔が向けられなくなる。本当本当にごめんなさいラウナ!!そして無視したのも巻き込むのもどっちもごめんなさいアクセル!!


「なんで私の何が不満?!そりゃあ確かに昨日は負けたけれど!また試験でもなんでも受けるから!」

「そっそそそういうわけじゃないんです………。その、た、旅は本当に危ないし命の危険だってあるし野営で寒いし暑いし汚いし……」

ごめんなさいごめんなさいとまた謝ってしまう。

別にラウナの実力が不満とかじゃないんだと必死に訴える。もともと皇帝陛下に任命されていたのに、私が嫌がるってだけで断られるなんて不満なのは当然だ。でも、ラウナは旅なんてしたくなかったって旅の間ずっと言ってたし、いくら村を私が助けたからってそんな恩だけでコロッと尽くすような人じゃない。

ラウナは自分を持った格好良い女性で、聖典の旅だってその理由は自分の名でも皇帝陛下からの命令でもなく、元素魔法とひいては将来それを必要とするだろう人達の為だった。神聖魔法が崇高視されている国だけれど、そんなの使わなくてももっと元素魔法を学べば間違いなく人の暮らしは良くなるから。

そして実際に、私が聖典を持って帰ってきた後にはラウナの功績を称えて元素魔法は教会にも国にも神聖魔法に並ぶ素晴らしい魔法として認められた。……けど!そんなの旅に出なくてもラウナならこの城下で研究を進めれば遅かれ早かれ認めさせることができる!!なんなら私だってラウナの為だけにちょくちょく城下に帰ってラウナの魔法の素晴らしさを広めるの手伝うし、旅ゆく先でも全部にラウナの素晴らしさなら語り尽くし続ける!欲しい素材とかレア素材とか全部見つける度にラウナに全部貢ぐよ?!だからあんな毎日みたいにラウナが野営の不便な生活に嘆きながら旅をする必要なんて


「何いってんの!旅なんだからそれくらい当然でしょ!いちいち音を上げたりしないわ!!」


いやがっつり毎日短くても半年は言ってたよ?!!むしろその後もちょくちょく言ってたよ!!?

胸を張って堂々と言うラウナに、口がぽっかり開いてしまう。返したい言葉があるけどこれは言えない。もうアクセルに一度うっかり怪しまれた後だ。

ラウナは意地や見栄を張っているようにも見えなければ、まるで当然のように腰の手を置いて言っている。なんだろうこの違い。旅に出て実体験するまではあんなに大変だと想像しなかったとか?いやでもラウナ、そういう「想像と違った」みたいな言い方は一回もしたことないし!!自分が勘違いしていたらそこははっきり認めるし!!

もちろん故郷を無くして落ち込んでいて色々と気持ちに余裕がなくて全部に嫌気が刺してしまったところもあると思う。だけどそれにしてもこれは!これは!!


「むしろ野営がそんなにエンヴィーも不安なら、私を連れて行くべきよ。元素魔法ほど有用性のある魔法はないんだから。えっと、………アクセル、さんだっけ?突然だけど貴方、エルフよね。なら魔法は自然魔法といったところかしら?」

「………あー、まぁそれで良い」

本当は神聖魔法もちょっと使えるよね!!それに闇魔法も嫌いだけど使えるよね!!才能豊かなアクセルだよね!!

突然ラウナに話を振られてちょっとどうでも良さそうに低い声で淡々と返すアクセルは、指先で私のスープ皿を突いてこちらに寄せた。さっさと残りを食べなさいという意味だろう。

ラウナは「でしょうね」と言うと、得意そうな顔で魔法について話し始めた。

ラウナの魔法の解説はすごいわかりやすいけど、同時にちょっとだけ長い。その間に食べて良いのかなと思いつつ、そっとスプーンを手に食べる手を再開させる。目と耳はしっかりとラウナに向けながら、味わうより食べきるのを目的に口を動かした。

私が食べ始めたと気付くラウナもそのまま私を見つめながら話を続けてくれる。

自然魔法はエルフとか一部の種族にしか使えない特別な魔法だけど、元素魔法ほどの利便性はない。元素魔法は火も起こせるし、飲み水も手に入るし、野生動物を狩ることもできると。そうラウナの説明を聞きながら、なんだか懐かしくなる。本当にラウナの言う通りで、聖典の旅の間はラウナがいてこそ野営中も生きていられたようなものだった。

私にもニーロにも文句を言いながら水も確保してくれたし火も何度でも起こしてくれた。お陰でそういう不便さはラウナがいてくれる間は、一度もなかった。ラウナがいなくなってからは、本当に──


「つまり!元素魔法は魔物と戦える上に利便性も高い。皇帝陛下が私に使命を命じられたのも当然のこと。エンヴィー、魔物以外の全ての苦難から貴方を守る為の配慮でもあるの。私の実力を疑うのは決闘に勝ったのだから仕方ないけど、旅には戦闘力以外にも必要なものはたくさんあるわ」

取りあえず旅の補助程度に思ってくれれば良いからと、続けるラウナはやっぱり見事な説得力だ。しかも正論。

実際ラウナがいない間、旅は結構大変になることは自覚している。旅の途中に経由しないといけない地には教会や聖なる場所のない土地もあったから、ああいうところは私一人でも野営だ。それに私一人じゃ狩りどころか火を付けるところから学び直さないといけない。何より現存する元素魔法を殆ど網羅しているラウナは、羨ましいくらい大きな戦力でもある。まぐれで眠らせるだけでなんとか勝ったことになった私とは全く違う。

たとえばアクセルみたいに頭の良い人が私とラウナどっちを旅に連れて行くか選ばないといけなかったら、間違いなく百人中百人がラウナを選ぶ。


「こう見えて!私に研究協力や護衛依頼をしてきた要人は多いの。そして功績も残してきた。皇帝が認めるくらいにはね」

うん、そして九割の興味のない依頼は無視してきたんだよね。ラウナのそういう自分を貫くところ格好良くて大好きだよ。

今回の聖典の旅も最初は気乗りしなかったけれど皇帝陛下からの任命と、そして国をあげての大きな使命だったから受けてくれたのも知っているよ。でももう皇帝陛下には私から断ったし、ラウナならこんなくだらない使命に乗らなくても自分の実力で絶対巻き返せるから!!!!

本当に、事実を全部言って説得したくて仕方ない。でも絶対こんなことアクセル以外信じてくれるわけないしと口を噤み、代わりに最後の一口を食べきった。何も言葉は返せない私に、ラウナはそこでちらりと視線を再びアクセルに向ける。


「ところで、彼は?ハルティアからの客人?」

「はい残念~。俺は聖女から直々の勧誘。俺がいるからお前ら雑魚共は要らねぇんだとよ」

「はぁ?!正気!!?」

あぁぁぁぁ……すごい、すごい懐かしい図が………。

最初はアクセルを手で示しながら私に尋ねたラウナだけど、アクセルの言葉に目を大きく開くと私とアクセルを交互に見た。

アクセルのこのわざとな言い回しとラウナの言葉の攻撃力が衝突しているの、アクセルが仲間になってくれてからよく見る光景だった。こっちでもラウナ、アクセルにはいつも通りなんだなと思うとちょっとほっこりする。アクセルの言い方も今のは誤解あるから良くなかったし、それに対してアクセルを同行者になんてあり得ないと一言に集約するラウナもすごい。

「私からお願いしたのは本当です」とだけ早口で答えて頷けば、さっきまでアクセルにも普通の態度だったラウナが一気に顔を引き攣らせた。そのまま大きく開いた緑の眼光を向けるラウナに、考えるよりも習慣でまた無音魔法を展開する。旅でもこういう時はよくあったからタイミングも身体に染みついていた。そして次の瞬間。


「ッエルフは人畜無害の精霊種なんて嘘だから!!!エルフも人間も同じ所詮は二足歩行生物!!エンヴィー!貴方みたいに若い子が男と二人で旅して無事でいられると?!!!」

考え直して!!!と、私とアクセルは揃って両耳を塞ぐくらいの大声が響き渡った。魔法があと一秒遅かったら間違いなく店中に響き渡っていた。

目をとんがらせたラウナからの若干お説教に、私も肩が狭まる。ごめんなさい、とまた口がつきながら、むしろ私だけは無事だったよと頭の中で呟く。命を落としたのはアクセルの方だ。


ラウナの鋭い眼光にも平然としていたアクセルも、この言い分には耳を押さえながら怪訝な顔をラウナに向けた。

私が耳から手を離した直後「そっちかよ……」と呟くのがうっすら聞こえた。もしかして、エルフだからの方か半魔の方で何か言われると思ったのかな。アクセル、エルフであることは誇りに思っているけどずっと自分の半魔のことは気にしていたから。


逆行前に出会った時もラウナがアクセルを見て魔物の仲間じゃないかって言って、それで殺しにかかられていた。多分今も、というかアクセルをひと目見た時からラウナのことだしエルフとしてちょっと違うくらいか、半魔なのも気付いている。けど、ラウナはそういう差別はしない。ただ、………男性についてはちょっと毛嫌いしているところがある。

ニーロに対してもそうだったし、アクセルに対してもきっと男性だからって凄く敵視している。

魔力は多かれ少なかれ皆持っているけれど、その中で魔導師という専門研究職になれる人は少ない。女性はまだまだ少なくて、ラウナは女性だからって他の男性魔導師に嫌な目にあったし、女性だからっていう理由で見下されたり研究が相手にされなかったことがあるから、そのせいで男性は好きじゃないらしい。


「まさかもう何かされた?!顔に欺されちゃ駄目よ?!人相に欺されちゃ駄目!!エルフなんて皆人間には美形に見えるだけでっ………ていうかアンタも断りなさいよ真っ当な大人として!!!実年齢は?!どうせもうとっくに百超えてんでしょこのむっつり!!!」

「はい残念。年齢は十八でまだピッチピチでした~」

「余計手ぇ出されるじゃない!!」

あーー懐かしいなぁ。

アクセルも、やっぱり私といる時よりラウナと一緒に話している方が生き生きしている。でもアクセル、封印中年齢止まっているから嘘じゃないけど結界内に百年いたよね。エルフにとって百年後なんて対して見掛け変わらないから誤差かな。


あとピッチピチって言い方も百年前は流行りでも今は死語だよ。


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【1月25日書籍発売!!】

書籍化決定


《コミカライズも決定!!》

皆さんのお陰です本当にありがとうございます!!

― 新着の感想 ―
ヴィーちゃんの事、好き過ぎて ケンカみたくなるわちゃわちゃ(o^^o) すっごく好みでほっこりします⭐︎
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