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第791話「ローランド・コルドウェル侯爵閣下! リオネル・ロートレック殿、そしてヒルデガルド・エテラヴオリ様ご一行をお連れ致しましたあ!」

それから3日後……

返事を受け取ったリオネル達一行は、ローランドを訪ねる事に。


約束の時刻は、午前10時。


メンバーは予定通り、

リオネルと当事者のナタリー、ヒルデガルドにミリアン、

ブライム、ジゼルことジズ、

そして冒険者ギルド王都支部のギルドマスターである。


一旦、冒険者ギルドに寄り、ギルドマスターをピックアップ。

全員、徒歩で向かう事に。


支部から、王宮までほんの5分ほどしか、かからないからである。


すぐに到着し、時刻は午前9時30分。

充分に余裕のある時間である。


リオネルは目の前にそびえたつ、荘厳な建物を見つめた。


既に絶縁し、現在は所在不明となっている父ジスラン・ディドロが仕えていた、

ソヴァール王国の王宮である。


そう思うと、ほ~んの少しだけ、感慨深いが、単にそれだけ。


それ以上は、何とも思わない。


リオネルは、ソヴァール王国が故国ではある。


だが、愛するヒルデガルドと結ばれ、アールヴ族の国イエーラの為に、

まずは働こうと決めている。


だから、ソヴァール王国は、『近しい他国』という感覚となっていた。


また、以前、隣国たるアクィラ王国の王宮へ訪問し、

ヒルデガルドとともに、国王、宰相に謁見した経験のあるリオネルは、

緊張など、全くナッシングで、堂々としている。


ヒルデガルドも同じく。

リオネルと共に、何度も人間族の街へ、

かつイエーラの長、ソウェルとして、

王宮へも訪問経験があるから、全く動じない。


そしてブライム、ジゼルも、落ち着き払っていた。


高貴なる四界王アマイモン、オリエンスという誇り高く、苛烈な長に比べれば、

人間の王族、貴族などは、「畏れ多い」という感覚が皆無なのである。


しかし、問題はナタリー。


王都住まいの彼女は、遠い親戚である身内の騎士爵たるブレーズこそ居るが、

ワレバッドの冒険者ギルド本部、総マスター、ローランドに会った事は無く、

当然、王族など会った事も無い。


そしてミリアンも。

ソヴァール王国の平民である彼女も、この国の王族に会うのは生まれて初めて。


最初はワレバッドにおいて、サブマスターのブレーズ、

そして当時伯爵だったローランドに会った時も緊張しまくりであった。


つまり、ふたりとも、王族どころか、貴族だって雲の上の方々。


王族では無いが、それに等しい立ち位置のヒルデガルドと、

最近になってから、生活を共にするようになり、

ようやく、まともに「普通に話せる」ようになった。


ただ、いつもは普通に話す事は出来ても、

会う際のシチュエーションでも、ガラリと変わってしまう。


そう、王宮で王族に会うのは、全く違う雰囲気となるから。


さてさて!


ローランド、そしてフェリクスに会うまで、

一行が交わす会話は、心と心の会話、念話。


固まってしまったの如く、

ず~っとガチガチ状態のナタリーとミリアンへ、リオネルが声を掛ける。


『おいおい、ナタリーさん、ミリアン、ふたりとも大丈夫ですか?』


『だ、大丈夫ですわ、リオネルさん』


『う、うん! 何とか! 心配かけてごめんね、リオさん……』


『いえいえ、念の為、鎮静効果のある回復魔法をかけますね。こういうのは慣れです。俺も最初の頃は、緊張しまくりでしたが、魔法のフォローと場数を踏む事で慣れましたので』


『な、成る程。リオネルさんも、ですか』


『そ、そっか! 無理して、我慢する必要は無いって事なんだね』


『はい、害にならなければ、使える物は使えというのが、俺のモットーです。こういう場合、魔法を使うのがズルいとは思いません』


という事で、リオネルは回復魔法『全快』を発動。

体力を大幅に消費していたわけではないが、

まず「大は小を兼ねる」のと、リオネルの体内魔力が、即座に回復するので、

上級魔法を惜しむ必要が無いからである。


いつもながら、リオネルの魔法は無詠唱で神速発動。


傍から見られていても気付かない。


こうして、一行は、全員が万全の態勢となり、

正門前に立つ門番を務める騎士へ声を掛けたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


騎士へ声掛けし、名乗り、ローランドから呼ばれやって来た趣旨を告げ、

全員が冒険者ギルドの所属登録証を見せると……


話は通っていたらしく騎士は、すぐに同僚を複数人呼び、

総勢5人で、リオネル達を先導してくれた。


ヒルデガルドが、国賓として王宮へという事ならば、

話をするのは、ヒルデガルド。


なのだが、今回はリオネルが、被害者のナタリーを連れて訪問したという趣旨。


なので、騎士はリオネルへ話し掛けて来る。


「初めまして! リオネル・ロートレック殿! お会い出来て、誠に光栄です。ドラゴンスレイヤーたるリオネル殿のお名前は、よ~く存じ上げておりますよ」


と言い、満面の笑顔である。


リオネル達は入って見て、少し驚いたが、

王宮内は、やはりというか、とんでもなく広大である。


先に訪問したアクィラ王国の王宮より、ふた回り大きいと、

リオネルの知識にはあったが。


ぱっと見、大中小、様々な形の建物も多いが、樹木、公園らしき場所も多い。


リオネル達が周囲を見回していると、

騎士5人はぴったりガードするような形となっている。


これだけの人数が付くのは、

色々な意味で、万が一の場合も考えての事であろう。


そして案内されたのは王宮内のとある建物。


案内してくれた騎士曰はく、


「お待たせ致しました、到着です、リオネル殿。ここは王弟、フェリクス・ソヴァール宰相殿下の専用棟です。こちらで、ローランド・コルドウェル侯爵閣下がお待ちです」


対して、リオネル。


「ありがとうございます。ではお手数をお掛けしますが、こちらのご案内も、何卒宜しくお願い致します」


しかし、案内してくれた騎士は笑顔で首を横へ振る。


「いえいえ、リオネル殿。引き続き、貴方がたをご案内したいのは、山々ですが、こちらからは担当が代わり、フェリクス宰相殿下の専任騎士が、ご案内致しますので、何卒宜しくお願い致します」


騎士はそう言うと、同僚へ指示をし、

フェリクス専任の騎士を、やはり5人呼んで来た。


元の持ち場へ戻るのであろう、去って行く騎士達へ、礼を告げ、

新たな騎士達に連れられて、リオネル達はフェリクスの専用棟内へ。


フェリクス専任の騎士達も、やはり満面の笑み。


先ほどの騎士達もそうであったが、

リスペクト、憧れという心の波動が伝わって来る。


まあ、中には、畏怖という念もあったが。


但し、騎士と言う職業柄、意地でも表には出せない感情ではある。


やはり、単身フォルミーカ迷宮探索からの無傷の帰還、

アクィラ王国のドラゴンども討伐という冒険譚が、

隅々まで伝わっているようだ。


フェリクスの専用棟は、さすがに王弟の住まいだけあって、

外観、内部とも造りは豪奢。

置いてある調度品、掛けてある絵画も、一流のものばかり。


しばし、歩き……リオネル達一行は、ある部屋の前へ。


「こちらは、フェリクス宰相殿下の来訪客用のお部屋です。こちらへローランド・コルドウェル侯爵閣下が、ご滞在されております。……という事で、中でお待ちになっておられますよ」


「いろいろと、ありがとうございます」


リオネルが、案内と説明の礼を言うと、騎士は改めて笑顔。


こんこんこん!とリズミカルにノック。


大きく声を張り上げる。


「ローランド・コルドウェル侯爵閣下! リオネル・ロートレック殿、そしてヒルデガルド・エテラヴオリ様ご一行をお連れ致しましたあ!」


対して、聞き覚えのある声が、リオネルの耳へ。


「おう! お疲れ様! 今、扉を開ける!」


そう、ローランドの凛とした声が、扉越しに伝わって来たのである。

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