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第790話「ここで本日の仕事が終わり! と思われそうだが、まだまだ!」

ヒルデガルドの意向も踏まえ、リオネルは、ローランドへ返事を出す事にした。


ローランド・コルドウェル侯爵閣下様。


委細承知致しました。


こちらは、証拠本品を(たずさ)え、

当事者のナタリー氏、

そしてヒルデガルド様、護衛の従士達と共に王宮を訪問したいと思います。


その際、ナタリー氏の上司である王都支部ギルドマスターにも同行して頂ければ、

行き違いが無いでしょう。


お手数をお掛けしますが、スケジューリングご調整の方、

何卒宜しくお願い致します。


日程等々、ご連絡をお待ちしております。


リオネル・ロートレック。


この手紙をリオネルは、届いたのと同じ通りに、

冒険者ギルド王都支部経由で、ローランドへ託す事にした。


支部のギルドマスターに預かって貰い、ローランドへ渡して貰う形とするのだ。


そもそも、ローランドとリオネルは、

ギルドの長たる総マスターと、ワレバッド本部の幹部たる顧問の間柄。


ふたりが、直接やりとりしても、何ら、問題は無い。


だが、この王都バルドルは、王都支部の範疇(はんちゅう)


事件の当該者は、支部の元職員たるナタリー。


で、あれば王都支部の長たるギルドマスターの顔を立てるのは、

いわば上司としての気配り。


更には、もしも都合が付けば、王宮への同行も考えて欲しいと。

ギルドマスター宛の手紙も用意し、添付しておく。


このような話になれば、

ギルドマスターも「責任上、同行したい」と望むに違いないと思い、

リオネルは、先に水を向けておいたのである。


冒険者ギルド本部の総マスターたるローランド、

同顧問たるリオネルのふたりから、

「顔を立てて貰った」形のギルドマスターは、大いに感謝するはずである。


今後の事を考えても、いろいろと、やりやすくなるのは想像に難くない。


それにリオネルの宿屋プロジェクトは、ギルドマスターから、

商業ギルドのマスターを紹介して貰うという便宜を図って貰っている。


ようは、情けは人の為ならず、


または、持ちつ持たれつ、なのである。


という事で、リオネルは冒険者ギルドへ手紙を託し、

宿屋プロジェクト進行、ギルドの講座受講、料理店食べ歩きと研究、

買い物、モノリスへのフォロー等々で、これまでと同じように過ごし、

ローランドからの返事を待った。


……すると、3日後にギルドへ訪問した際、受付けから声を掛けられ、

「ギルドマスターから話がありますので」と言われ、

リオネルは、この日の午前の講座受講をキャンセルする事に。


そして急きょ面会。


あいさつされたギルドマスターより、

やはりというかローランドからの手紙、つまり返事を渡された。


手紙を渡したギルドマスターは、笑顔である。


「リオネル顧問!」


「はい」


「いつもながら、私をお気遣い頂きありがとうございます」


開口一番、リオネルへの礼を述べるギルドマスター。


心からの感謝の波動が伝わって来る。


対して、リオネルも笑顔。


「いえいえ、ギルドマスターには自分が駆け出しの頃、お世話になりましたから。それに商業ギルドのマスターもご紹介頂き、本当に助かっております」


「いやいや、顧問。こちらこそとてもお世話になっておりますよ。ローランド様から、私もお手紙を頂きましてな。顧問に同行し、王宮へ来るよう、ご指示を頂きました。最優先で都合をつけようと思います」


「そうですか。お手数をお掛けしますが、何卒宜しくお願い致します」


「とんでもない! そもそもナタリーは、元になりましたが王都支部の職員。私の部下でしたからな」


「ですね! ありがとうございます」


という事で、後は、スケジュールのすり合わせである。


リオネルはこの場で、ローランドからの手紙を開封。

内容を確かめてみた。


……ローランドからは、3日後の午前10時に王宮へ来るよう、記載があった。


この日時、一択であり、限りなく命令に近いようだ。


多分、王弟で王国宰相、フェリクス・ソヴァールの都合ありきであろう。


王族の都合が第一優先という事かと。


但し、ヒルデガルド様のご無理の無いようにとも書いてあった。


やはり一国の長に対し、ローランド様に気は遣って頂いている。


ないがしろにされてはいない。


自分はソヴァール王国民ではあるが、

イエーラの国籍も取得し、政務を任される立場としては、嬉しい限り……


ただ、まだはっきりと、

ヒルデガルド達との結婚話を明らかにするわけにはいかない。


リオネルは、柔らかく微笑み、

ギルドマスターへ、指定された日時を告げたのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


……少しギルドマスターと話した後、リオネルはギルド1階のロビーへ。


時刻は昼前、講座受講後のヒルデガルド達と合流。


全員で、ランチを摂りにギルドの食堂へ。


早速、王宮行きの話をし、情報共有する事に。


この件は、巷で軽々しく話せない、

厳秘たる内容だが、限定念話で話せば、会話が外へ漏れる事はほぼ無い。


それにリオネル達は、最初の食事開始合図くらいしか、肉声で話さないのは、

もう『いつもの事』


最近は、あいさつに来る職員も随分減ったので、良い意味で『放置』されていた。


なので、じっくりと話す事が出来る。


さてさて!


受付けでリオネルが、声を掛けられ、

ギルドマスターから呼ばれた事を知っているヒルデガルド達。


これまでの経緯、現在の状況も把握しているので、

午前中、何があったのかも、想像に難くないようだ。


時間が限られている事もあり、リオネルは、単刀直入、シンプルに話す。


ギルドマスター経由で、ローランドからの返事が来た事。


王宮訪問の日時指定をして来た事。

それが3日後の午前10時である事。


同行する予定のギルドマスターからは、その場でOKを貰った事。


当日、訪問するのはリオネルと当事者のナタリー、そしてヒルデガルド。

また、当初予定には無かったが、

リオネルは、いろいろと今後の事を考え、ミリアンも加わる事に。


そして護衛として、炎の魔人、ブライム。


更には鳥の王ジズも。


ちなみにジズとは、さすがに名乗れないので、

『ジゼル』と、リオネルから名付けして貰った。


本人は、名前の響きの良さも含め、(あるじ)からの名付けとあって、

大いに気に入ったようである。


また、当然の如く、風の魔人達4人も同行を希望した。


だが、さすがに訪問の人数が多すぎる。


なので、リオネルが優しく、丁寧に説得。


4人には、今後の為、アンセルムとともに、宿でスタンバイしつつ。

人間族の料理修行をして貰う事に。


万が一、何かあったら念話ですぐに呼ぶと付け加えて。


話はまとまり、リオネルはすぐにその足で、

ギルドマスターにOKの返事を入れ、日時は確定。


午後の講座を受けると、全員で真っすぐに宿へ帰宅。


ローランドへの返事たる手紙をしたためると、再び冒険者ギルドへ。


ギルドマスター宛で、預けておく。

多分、明日のお昼までには、ローランドへ届くはずだ。


「お願い致します」と言い残し、リオネルはギルドを後に。


ここで本日の仕事が終わり! と思われそうだが、まだまだ!


リオネルは、元蠅団、新生モノリスの本部へ赴き、

マチアスと打合せ。


ただ、情報漏洩のリスクがあるので、王宮訪問の件は告げず。


マチアスから現状の報告を受け、清掃と警備の仕事の進捗は順調。


幸い、他組織もリオネルとの約束を守り、到って平和だとの事。


対して、リオネルは安心且つ、満足し、いくつかのアドバイスをし、本部を後に。


そして、ようやく本日の仕事を終了とし、宿へ戻ったのである。

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