第788話「実現へ向け、一歩、一歩、着実に進んでいる」
リオネル達が王都の中でも、えり抜きの、
いくつかの店からテイクアウトした料理、飲み物が、
宿の食堂のテーブル上に置かれ……
人化したジズ以下、新たな従士、風の魔人達計5名を加えた、
リオネル達の夕食が始まった。
緊急時や、不可抗力時ならばともかく……
余裕がある時は、作る事も、食べる事も、徹底的にこだわる。
そんなリオネルが選んだ店が、ハズレのわけが無い。
初めて人間族の食事を摂るジズは恐る恐る……
4人の魔人達も、慎重にゆっくりと料理を口へ入れる。
その瞬間!
5人の表情は驚愕!!??という趣きへ変わった。
『おお! こ、これは美味い!!』
『お、驚きです!!』
『むう! 人間族の料理とは、このような味がするものなのか!?』
心の声、念話ではあるが、賞賛と驚きの声が満ちる食堂。
一方、そんな様子の新従士達を見守るリオネルは笑顔である。
『おお、良かった! お前達が、人間族の食事を楽しんでくれるのなら、人間族社会に馴染めるアドバンテージとなる。本当にありがたい。後日、俺達の作った料理も馳走しよう』
『本当ですか!?』
『それは楽しみです!』
『待ち遠しい!のひと言です!』
リオネルの経験上、食と音楽は、
世界の万国共通たる最高のコミュニケーションツールであるとの認識がある。
炎の魔人ブライムやルベルとのやりとりで、それは証明されていたのだが、
それは、人間と精霊でも違いはなかったと改めて証明される事となった。
そもそも、食は自分の生をつなぐ為に、
必要不可欠な物である事は勿論なのだが……
同時に、音楽と共に素晴らしいコミュニケーションツールであり、
それ以上に『生きる励み』の源となる。
自分が持つ究極の隠しスキル『生きる励み』よりも、遥かに強大だと、
心の底から、リオネルは思う。
そんなこんなで、夕食が終わり……
リオネル達は食後のお茶へ……
これは、明日以降の打合せも兼ねている。
まずは、リオネル達の基本スケジュールを伝える。
日単位、週単位、月単位、それ以降……
これで行動予定はおおよそ、共有が出来た。
そして、役割分担を告げる。
『ジズ、そして東風のエスト、西風のウエスト、南風のスュド、北風のノール、……まずお前達は、人間族の社会と街に慣れる事。そしてしばらくは、基本的に俺の嫁達の護衛役を担って欲しい。その後はお前達の適性を俺が見て、逐一指示を出すよ』
『は! かしこまりました! 我ら風の一族、リオネル様のご指示に従います!』
『リオネル様! 人間族の社会と街にすぐに慣れるよう、精一杯、努力致します!』
『リオネル様の奥様達の護衛とは光栄の極みです!』
『リオネル様! 我々は強固な盾となり、必ずや奥様達を守ります!』
『リオネル様! 全員がお役に立てるよう、粉骨砕身致します!』
決意を告げるジズ達。
更にリオネルは言う。
『……ヒルデガルドさん、ミリアン、ナタリーさん、ジズ達へ、人間族女子の生活様式等々の教授をお願いします。男の俺では説明はともかく、指導し難い部分もありますので』
女子達もいつまでも、リオネルへ頼り切りでは宜しくない。
ジズ達へ指導を行い、コミュニケーションを取るだけではなく、
自身の成長の糧とするようにという、リオネルの深謀遠慮である。
そんなリオネルの意図を、女子達はすぐに気付いた。
『分かりましたわ、リオネル様』
『了解だよ、リオさん』
『ええ、私達で彼女達へ教えますわ』
『OKです。とりあえず、ジズ達各自の部屋割りをしましょうか。宿の空き部屋は充分にありますから個室にして構わないでしょう。その後で、この食堂へ戻り、講習を行います。俺は最初だけフォローへ入り、後は女子チームへお任せします』
……という事で、リオネルはジズ達の部屋割りを行い、
各自へ部屋を割り当てると、食堂へ戻り……
人間族社会の教授を行うヒルデガルド達のフォローを行ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝……
リオネル達は、立てたスケジュールに沿って動き始めた。
アンセルム主導で皆が手伝う形で朝食を作って、摂り……
全員で外出する。
本日は、ナタリーを冒険者ギルドへ送り……
そこから、ブライムとジズ達が別行動。
昨夜の講習後に、リオネルは指示をしたのだが、
炎の魔人と風の魔人達で、人間族の王都散策を行うのだ。
人間族社会では『先輩』たるブライムが彼女達をアテンドするのである。
リオネルを抜きにし、精霊同士、共に行動させる事で、
ブライムと新参の風の魔人達のコミュニケーションをはかる意味もあった。
ブライムは直立不動でびし!っと敬礼。
『では! リオネル様! 私が彼女達を案内致します。ついでにナンパの際には、威圧のトレーニングも行っておきます』
精霊という立ち位置で、人間族社会で先に暮らしているブライム。
威圧の技も、人間族へ何度も行使している。
対して、人化して、改めて仕えるジズに、新たに従士として加わる風の魔人達。
リオネルは、双方へ、互いをリスペクトするようにと、念を押しておいたのだ。
『ああ、頼むぞ、ブライム。ジズ達も、ブライムの指示に従うように』
『は! リオネル様の仰せの通りに!』
やはり、リオネルのスケジューリングには無駄が無い。
時間を浪費せず効率的に、そして無理が無い、プラスになる段取りを組む。
一方、リオネル達は、商業ギルドの宿屋プロジェクトの打合せに臨む。
商業ギルドから提出された『仮プランへの返事』をするのだ。
ただ、打合せ開始時間には少し早かったので、以前利用したカフェへ。
ただこれも、リオネルの計算のうち。
行動を全て有効的に変換するリオネルの計算され尽くした戦略は、ここでも炸裂。
既にチェック済みで、この店の未体験のメニューいくつかを実際にオーダー、
全員でシェアし、思う存分に『試食』した。
この試食を、一番喜んだのは……当然、ミリアンである。
これらのメニューが、いずれオープンし、彼女がオーナー店主を務める、
イエーラのカフェで出す新メニューへと、つながるから。
ちなみに、会話は全て念話である。
『どうだい、ミリアン』
『うん! さっすが、リオさんの深謀遠慮! メニュー名だけ見ても、そそられたけれど、実際に食べてみたら、全部、美味しいね!』
『だな! これらの味を忘れないうちに、宿で何度か試作、試食をし、レシピを作ろう。更に俺達の手でバージョンアップするぞ』
『うん!』
片や、ヒルデガルドも負けてはいない。
『リオネル様!』
『はい、何でしょう? ヒルデガルドさん』
『ミリアンさん同様に、私が構想中のお店もご相談に乗って頂きたいのですが』
『OKです。俺の推測ですが、ヒルデガルドさんがオープンさせる店では、化粧品、衣服、ランジェリー、家具、雑貨小物を扱いたいと考えていますよね?』
『うふふ♡ お分かりでしたか?』
『はい、少し前に、ヒルデガルドさんは、自分の店を出したいと言っていましたから。それ以降、店に行く際には気にしていました』
『気にされていたのですか?』
『はい、それらの店へ行くと、ヒルデガルドさんのテンションが著しく上がっていましたので』
『わお! さすがですね。私の事を良くご覧になって頂いていますわ。リオネル様の細やかな観察力を、私も見習いますね』
ミリアンとアンセルムも同意、である。
『はい! 私も見習う!』
『ああ! 俺もだよ、リオ!』
そんなこんなで、これから行う打合せのすり合わせをし、
時間を見計らってカフェを出たリオネル達は、商業ギルドへ。
既にギルドマスター達は揃っており、すぐ打合せに臨んだ。
ギルドから提示された宿とその店舗の、改修、増築案の完成図の選択。
完成図へは、リオネル達の更なる希望も書き込まれている。
同じく提示された、プロデューサー的な進行役、工事を請け負う施工業者の了承。
当然、両名とも今回の打合せにも同席しており、
工事の施工開始たる3か月後の着工、終了たる竣工予定のスケジュールが固められ、全員に共有された。
依頼しておいた先行して仮オープンする、実験的な店舗候補リストの受け取り。
こちらは近日中にリオネル達が下見をし、ギルドへ返事をする事となった。
用意する厨房設備、調理器具、食器等々、
そして店舗スタッフが着用する衣服なども話し合う。
それに伴う人材募集の手配及び告知をする事も決定。
商業ギルド内からの紹介も合わせ、優秀な人材の確保を行うのだ。
この紹介に関しても、ギルドからは早速リストが提示され、
大勢の中から、『面接候補』を絞り込む事に。
また公募された、数多来るであろう応募者の中からも面接候補を選び、
合わせて、面接を行うのである。
宿屋プロジェクトの課題が次々とクリアされて行く。
実現へ向け、一歩、一歩、着実に進んでいる。
……そんなこんなで、打合せは終了。
次回は、先行して仮オープンする、実験的な店舗候補リストから、
リオネル達が選んだ物件を下見した後、
ギルド経由で契約をした所で、再度打合せを持つ事に決まった。
……ここで、タイムアップ。
時間切れとなる。
リオネルは、今回不参加のナタリーの為、ギルドの書記が記録していた、
議事録の複製を受け取った。
「皆さん、前回同様、ケータリングで別の会議室へランチを用意してあります。懇親を兼ね、再び食事会を行いましょう」
そんなギルドマスターの呼び掛けにより、
リオネル達は、またも食事会へ参加したのである。
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