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第787話「とても勉強になります」

高貴なる火界王パイモンが派遣した炎の魔人ブライム、ルベル。

ふたりの活躍に業を煮やし、他属性の精霊従士に負けじ! 

と、空気界王オリエンスが、リオネルに送って来た、人化した風の魔人4名。


その魔人全員が、人化、つまり妙齢の人間族女子に擬態していた。


加えて、全員が、端麗な顔立ちをした美少女である。


ジズからの簡単な紹介に続き……

改めて、宿の食堂にて、本人達各自より、自己紹介を行う事に。


ちなみに会話は全てが念話。

肉声でも会話は可能との説明が同じく人化した鳥の王ジズからあった。


リオネルは、この場の全員へ紹介が伝わるよう、

限定共通の念話で行う事を頼み、承諾された。


最初に紹介を行うのは、『東風のエスト』である。


エストは、身長は170㎝くらい、金髪のショートカット、かつ碧眼。

抜けるような白肌の、スレンダーでスタイル抜群な美しい少女である。


『初めまして、リオネル様。双子の妹ウエストと共に、温かな春、そして暑い夏の風を司る東風のエストでございます。風の魔法全般、変身魔法、飛翔魔法、転移魔法、剣技、体術をひと通り、こなす以外には、広範囲の索敵、天候を使う攪乱(かくらん)の魔法が得意でございます。以後、お見知り置きを』


続いては、『西風のウエスト』

双子の姉妹なので、エストと激似ではあるが、髪型がセミロングで唯一違う。


『初めまして、リオネル様。双子の姉エストと共に、温かな春、そして暑い夏の風を司る西風のウエストでございます。風の魔法全般、変身魔法、飛翔魔法、転移魔法、剣技、体術をひと通り、こなす以外には、神力たる雷撃の魔法が得意でございます。以後、お見知り置きを』


次は、『南風のスュド』


彼女も身長はやはり170㎝くらい。

髪は栗毛のロングで、瞳は濃いブラウン。

健康的な小麦色の肌をした、スレンダーでスタイル抜群な美しい少女である。


『初めまして、リオネル様。豊かな秋の風を司る南風のスュドでございます。風の魔法全般、変身魔法、飛翔魔法、転移魔法、剣技、体術をひと通り、こなす以外には、治癒士として、回復魔法、状態異常回復魔法、葬送魔法が得意でございます。以後、お見知り置きを』


そして、『北風のノール』

4人の内で、彼女が一番小柄であり、身長は150㎝と少し。

髪は銀髪で、深紅の瞳。

エスト、ウエスト以上の抜けるような白肌をした華奢な美少女だ。


『初めまして、リオネル様。厳しい冬の風を司る北風のノールでございます。風の魔法全般、変身魔法、飛翔魔法、転移魔法、剣技、体術をひと通り、こなす以外には、凍気の攻防魔法が得意でございます。また付呪魔法の心得もございます。以後、お見知り置きを』


風の魔人4人は、冒険者クランで言えば、

シーフ職兼支援役がひとり、攻撃役がふたり、

そして、回復役がひとりという立ち位置が明確であり、

オリエンスが「使い勝手が良い」と誇るだけの事はある。


最後は、4人の魔人達を統率する立場となった、人化した鳥の王ジズである。


『改めまして、リオネル様! 全世界全ての鳥族を統率するジズでございます。人化した私は、元あった能力に加え、4人の魔人全ての能力も授かりました。今後も存分にお使いくださいませ』


対して、リオネルは、5人へ軽く一礼。


『了解だ、ジズ。今後とも宜しくな。で、4人の風の魔人達、エスト、ウエスト、スュド、ノール、初めまして。俺がリオネル・ロートレックだ。人間族の魔法使いで、全属性魔法使用者(オールラウンダー)であり、冒険者ギルドに所属する冒険者でもある。今後とも宜しく頼む』


更にリオネルは、話を続ける。


『リーア様へはお伝えし、既にご了解を頂いたし、オリエンス様もご承知だろう。ジズは良く分かっていると思うが……俺の従士となるからには、定めたルールはしっかりと守って貰う。


俺の指示には、きちんと従う事。決して驕らず、切磋琢磨しつつ、互いにリスペクトし合い、先輩従士達とは仲良くやる事。


それと俺の判断により、各従士は適材適所で起用する。

だから、えこひいきはしない。それゆえ、そのようなクレーム等々は、基本的に受け付けない。


但し、相談事は気軽に受け付ける。報告、連絡、相談は密に行おう……どうだ? 守れるかな?』


対して、ジズ以下5名。


『『『『『厳守致します!』』』』』


直立不動で敬礼。

一斉に唱和したのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


こうして、総勢11名となった一行。

宿の部屋は充分にあるので、収容は可能。


改めて全員で、夕食の買い出しへ行く事に。


冒険者ギルドの所属登録証を所持しているとはいえ、

ジズを始め5名の魔人達は、人間社会での経験があまり無いと言う。


であれば、まずは人間族社会での暮らしに慣れて貰わないといけない。


街の散策を兼ねた、買い物同行における『見学』はもってこいの機会である。


リオネルが道すがら、ジズへ聞けば……

人化し某国の冒険者ギルドにて、所属登録証を取得した際は、

その日限り、いきなり赴いてのぶっつけ本番。


事前に人間族の街で暮らした事など無かったそう。


今回の経緯をジズは淡々と語って行く。


まずは、リオネルと風の魔人4人のみの限定念話だ。


『リオネル様! 高貴なる火界王パイモン様が、ティエラ様の麾下たる地の眷属、魔獣兄弟ケルベロス、オルトロスの働きぶりをご覧になりまして、それでは! と人化した炎の魔人達を人間の国へ送り込み、冒険者ギルドのランク判定試験を受けさせました。それをオリエンス様がすぐ耳にし、我が風の一族も、遅れを取ってはならぬと、我々にも同じ事を命じました』


『成る程』


『その後の、炎の魔人達の起用状況をお知りになったオリエンス様が、人化し、改めてリオネル様へお仕えするよう、私へ命じたのです。同じく人化した4人の魔人を、リオネル様の下へ連れて行けと』


『そうか。それで、お前は、オリエンス様からのお呼び出しで、一時的に風の谷へ赴き、4人の魔人達を連れ帰ったという事か』


『おっしゃる通りです。連絡を受け、急ぎ風の谷へ赴いた私は、更なる能力をオリエンス様から与えられ、魔人4人を連れて来たのです。事後報告となりましたが、無断で離脱し、申し訳ございませんでした』


『分かった! 今回は特殊なケースだから、仕方が無いが、離れる時は出来る限り、事前に俺へは教えてくれ』


『かしこまりました!』


ここでリオネルは、会話を『場のメンバー全員への限定念話』へと切り替える。

 

『じゃあ、ジズ。俺達が、持ち帰りの夕食を購入するから、お前達5名は、最初から最後まで見ていてくれ』


『はい、学ばせて頂きます』


……そんなこんなで、いくつかの店を回り、夕食を購入したリオネル達。


その、一部始終を見守るジズ達。


「うんうん」と頷いている。


『成る程。このようなやりとりを行い、こちらが所持する対価となる貨幣を渡し、こちらの欲する品物を受け取るのですね』


『ああ、そうだ、ジズ。明日以降からは、俺達も付き合うから、存分にトライしてみてくれ。但し、自分が客だからといって、上から目線ではなく、物言い、態度は丁寧にな。サービスを受けさせて頂くという謙虚な気持ちで言葉を選ぶんだ』


『了解でございます』


『よし! 買い物も終わったし、戻ろうか。む、そう言えばお前達は、身の回りの生活物資は持参しているのか?』


『はい、我々全員、空間魔法を行使出来ますので、必要最低限と思われるものは、各自がそれぞれ所持しております』


『そうか! 必要最低限か! よし! だが足りない物も、まだまだあるだろう。明日の夕方、ヒルデガルドさん達女性陣と皆で、店を回ると良い。人間族社会の場慣れと、彼女達の護衛訓練を兼ねてだ』


『は! 了解です!』


返事をするジズへ、リオネルは更に言う。


魔人4名も神妙に聞いている。


『それとジズ。大事な事があるぞ。この人間族社会ではな、過剰防衛という言葉がある』


『過剰防衛ですか?』


『ああ、まず正当防衛という言葉がある。急迫不正の侵害に対して、自分または他人の権利を守るためにやむを得ず行った行為の事だ』


『成る程。侵害に対し、守るのは当然の行為ですね』


『だな! そして過剰防衛とは、正当防衛の範囲を超えた防衛行為の事だ』


『成る程。言葉の意味は分かります』


『では、分かりやすく例を挙げよう。仮に、俺の嫁が見知らぬ男性に声をかけられ、暴言も浴びせられ、加えて暴力、連れ去りなどの行為をされそうになったとする。当然ながら俺は嫁を守る。しかし、俺はすぐ戦ったりはせずに、まず威圧を使う。当該相手の肉体へはダメージを与えず、無力化して排除するよう心掛けるんだ』


『ふむふむ、成る程。イメージが湧きました。ようは守護対象者へ害が及ぶ前に必ず防ぎ、害を為そうとする当該相手の肉体へダメージを与えず、無力化し、追い払えば宜しいのですね?』


『ああ、それと精神的にも加減をする。当該相手が正気を取り戻せなくなったりしたら、過剰防衛となり、人間族の法律で罰せられるからな』


『成る程、成る程』


『俺は基本、法と言うルールに定められた人間族社会で生きているし、それはアールヴ族が定めた法により国家運営されているイエーラでも同様であり、つまらないトラブルは出来る限り避けたいというのが基本スタンスだ』


『それゆえ、リオネル様は、ケースバイケースで、適度なレベルの威圧技を使っていらっしゃると』


『その通りだ』


『成る程、威圧技を使い、害為す暴漢へ肉体的なダメージを与えず、加減しつつ、懲らしめた上で排除するのですか。それが人間族の法律を破らない事となる……』


『だな! これもイエーラでも同じだ』


『成る程! たとえ相手に非があろうと、出来うる限りトラブルに発展させないように排除する、というスタンスは、人間族、アールヴ族の社会で上手く折り合う為なのですね。とても勉強になります』


リオネルとジズの会話を聞き、炎の魔人ブライムが、

その通りだと言うが如く、「うんうん」と頷いていた。


『そうか。ところで、ジズ。お前達は、威圧の技は行使可能なのか?』


『はい、多少は……』


『おう! ならば、好都合だ。今後、人間族を排除、無力化する際は威圧のスキルを使ってくれ。後で俺や嫁達が手本を見せる』


『了解です! もろもろ、かしこまりました!』


という会話の後……


ヒルデガルド、ミリアン、ナタリーへ加え、

5人の美少女達も加わった感のあるリオネル一行へ、

早速、ナンパ男どもがアプローチ。


対して、リオネルとヒルデガルド、ミリアンが威圧の技を行使。


不心得者達へ、肉体へダメージを与えず、懲らしめ、

無傷で、排除する『手本』を見せる事が出来た。


……こうして、リオネル達一行は、無事夕食の購入を終え、

滞在先の宿屋へと戻ったのである。

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