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第785話「リオネルの心へ、身体へ、教官の技能が綿密に、はっきりと刻み込まれて行く……」

蠅団改め、新生モノリスの本部にて、

ボス代行のマチアスと打合せをしたリオネル。


様々な指示を与えた後、急ぎ、冒険者ギルド王都支部へ戻る。


……時刻は昼少し前。


これは予定通りである。


冒険者ギルド1階のロビーで、一緒にランチを摂るべく待ち合わせ。


先にリオネル以外の、午前の講座を受講し終えたヒルデガルド、ミリアン、

アンセルムとブライム、昼休憩へ入ったナタリー、の全員が待っていた。


このメンバーで、防波堤の如き、

『逞しき、おっさん』たるアンセルムとブライムが居なければ、

麗しき女子達は絶対、ナンパされるだろう。


少なくとも、声を掛けられる事は間違いない。


……という事で、時間も限られているから、早速6名は、

『ギルド職員専用食堂』へ移動。


これは、ナンパも含め、一般冒険者の無用なアプローチを避ける為である。


ちなみに、顧問のリオネルと職員のナタリーが同席という事で、

ヒルデガルド、ミリアン、アンセルムとブライムの、

食堂使用許可は事前に取ってあった。


さてさて!

リオネル達は早速、6名分の席を確保。


思い思いのメニューの食券を購入した後、セルフサービスの為、

各自が席へ料理を持ち帰る。


ただ、ここでリオネルの存在に気付いた大勢のギルド職員達が、

入れ代わり立ち代わり、あいさつをと声を掛けて来る。


数は、一般用の食堂には及ばないが、相当なものだ。


しかし20人ほど対応したところで、

「申し訳ありませんが、食事中なので、改めて別の機会に」と、

リオネルは丁寧にあいさつをお断りした。


……こうして、一行はようやく食事に。


外部へ漏れると宜しくない内容もあるので、会話は基本、心と心の会話たる念話。


話題は、まずナタリーの退職について。


退職希望の意思を告げられ、業務課長はすぐに動いてくれたようである。


朝一番で、ギルドマスターへ話を入れたと教えてくれた。


退職の手続きはスムーズに行われそうだ。


次の話題は、各自が受講している講座である。


ヒルデガルドとミリアンは、

迫る危険を事前に察知する『索敵の中級講座』を受講。


魔力感知のスキルを磨くべく学んだようだ。


ふたりとも、リオネルから索敵の初歩の手解きは受けており、

学習及び習得はスムーズだったと言う。


今や、周囲1㎞以内の索敵が可能となり……


午後は、ガラリと毛色の変わる、『店舗経営の初級講座』を受けると、

嬉しそうに、女子ふたりは語った。


ミリアンは、イエーラの特別地区内のホテルにおいて、

カフェレストランをオープンする事が決まっている。


キャナール村でカフェ経営の経験があるミリアンだが、

自分の店を持ちたいと考えるヒルデガルドと共に、

改めて初歩から、しっかり学びたいと考えたようだ。


アンセルムとブライムは『格闘術の上級講座』、

そして午後は『護身術の上級講座』を受けるらしい。

こちらは、冒険者を引退し、ブランクの長いアンセルムにブライムが付き合う形。


そしてリオネルはと言えば、モノリスの本部へ赴く前に、

付呪魔法(エンチャント)の中級講座』を受講。


これまで、時間を作り、こまめに修行を重ねて来たので、

あっという間に課題をクリア。


ギルドから提供された、教材用のミスリルの剣と鎧へ、

付呪魔法(エンチャント)を施し、

表向き属性の『風』の武器防具を製作したと言う。


「そこそこの効果」がある『風の剣、風の鎧』を造ったとリオネルは微笑む。


ギルドの教官には告げなかったが……

ヒルデガルド達へは、武器防具以外の製作も楽勝だし、精度、強度も自由自在。

秘する他属性でも即、応用出来ると言い切った。


当たり前のように、リオネルは、中級付呪魔法(エンチャント)士に認定。


ちなみに造った剣と鎧は、冒険者ギルドが即、買い取り、購入。

リオネルへは、金貨計、500枚(500万円)が支払われたのである。


まさに、これこそ無から金を生む『錬金術』の一種かもしれない。


更にリオネルは、午後には『上級講座をも受講する』と言い、


『俺が付呪魔法(エンチャント)を極めれば、大切な家族を守るのは勿論、便利な魔道具も行き渡り、イエーラの人々の暮らしは、格段と豊かになるし、良き財源取得方法ともなる。後進の指導も出来ると思うしな』


と言い切ったので、ヒルデガルドは大喜び。

自分も『ぜひ!付呪魔法(エンチャント)を学びたい!』と言い出した。


こうなると、唯一、蚊帳の外となるのが、ナタリーだが……


『全然、大丈夫ですよ! 後、1週間勤務したら、有給休暇です。私も、皆さんと、ご一緒にギルドの講座を受講致しますわ』


と、目を輝かせ、前向きに言い放ったのである。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


楽しいランチが終わり……各自はそれぞれの場所へ戻る。


ナタリーは内勤の職場へ。


ヒルデガルドとミリアンは、『店舗経営の初級講座』へ。


アンセルムとブライムは、『護身術の上級講座』へ。


そしてリオネルはひとり、

付呪魔法(エンチャント)の上級講座』を受講する。


上級講座の教官も、当然リオネルの名声と実力を知っていた。


『初めまして、リオネル顧問。貴方のような英雄を当講座にお迎え出来て光栄です』


『こちらこそ、初めまして、教官。いえいえ、英雄なんてとんでもない。自分は、まだまだ発展途上ですので、ご指導ご鞭撻のほど、何卒宜しくお願い致します』


上級講座となれば、レベルは「ぐっ」と上がり、受講生の数も著しく減る。


そんな、数が少ない受講生達は、リオネルに興味津々。


何せ、難関の代名詞たる巨大なフォルミーカ迷宮の最深層まで、

単独で赴き、無傷で無事に生還。


同迷宮の強力な魔物どもだけではなく、

長きにわたり害を為していたアクィラ王国のドラゴンどもまでも、

あっさりと一蹴したリオネル。


そんな鬼神の如き強さの彼が、果たして、付呪魔法(エンチャント)では、

一体、どのような腕の冴えを見せるのか? という期待の熱い熱い眼差し。


対して、リオネルは最初に行う教官の手本をじ~っと凝視。


全てを吸収しようとする趣き。


すると、即座にレアチートスキル『見よう見まね』が発動。


リオネルの心へ、身体へ、教官の技能が綿密に、はっきりと刻み込まれて行く……


そう! この『見よう見まね』もリオネルが習得した当初とは、

まるでレベルが変わっていたのだ。


当時は、動物たるウサギの能力を50%とか、後はレベルにより%刻みで、

習得するなど、それなりに、とてもありがたいレベルであったものが……


何と!何と!何と!


今や、古文書に記載があった完璧な習得の10割、

つまり見るだけで、100%に近い物となっていたのである。


これは、地道なリオネルの修行&鍛錬、そして実践のたまもの、

加えて、至宝『ゼバオトの指輪』が後押ししてくれた、『奇跡』だと言えよう。


多分、魔法に限らず、様々な案件に関し、同じような事が起こるに違いない。


と、いう事で、やがて、教官の手本が終了。


と同時に、リオネルも上級付呪魔法(エンチャント)を習得していた。


先ほど『中級講座』で、提供された剣と鎧へ、

風の効果を付呪魔法(エンチャント)したリオネル。


同じく今度は、実践の課題として、

銀製のペンダント、アミュレット、指輪等々が、提供された。


そもそも銀は、この世界において、(いにしえ)の時代より、

魔を払う効果があると言われている。


加えて、各アイテムのデザインも気に入ったので、

リオネルは、付呪前の、『素』のそれらを事前に購入。


その上で、無詠唱、神速で付呪魔法(エンチャント)を行使した。


すると! 見事に一発で成功。

全てが、まばゆく輝く、高き効果のある風のアクセサリーとして、

超バージョンアップ。


高貴なる空気界王オリエンスの加護を受け、与えられた、

魔物を排除し、防御力を上げる『聖なる風』をまとう、

素晴らしき『お守り』として、生まれ変わったのである。


「おおおおお!!!!!」


と湧き上がる受講者達の大歓声。


すると早速、他の受講者そっちのけで、

教官が、付呪された『お守り』の効能効果を、

講座付きの魔法鑑定士が『お守り』の価値を確認。


当然ながら、生半可な魔物等々は寄せ付けもしない効果が確認され、

及び、伴う価値は、ひとつ金貨1,000枚から、5,000枚まで多岐に及んだ。


こうして、リオネルは、

即座に、その場で、上級付呪魔法士(エンチャンター)に認定されたのである。


加えて、やはりと言うか、ギルドはそれらの買い取り、購入を提案して来た。


しかし、事前に買い取っていた事もあり、他に用途を考えていたリオネルは、

丁寧な物言いで断り、自身の所有とした。


するとギルドは、次に、リオネルへ、

新規の付呪魔法(エンチャント)魔道具の製作依頼をする有様。


対してリオネルは、「ペンディングにさせて下さい」と一旦、保留。


そんなこんなで、時刻は午後4時過ぎ……


リオネルは教官達に礼を述べ、撤収。


事前に頼んで、貸与されていた会議室にて全員集合。


午後5時過ぎに仕事を終え、着替え、身支度を整えたナタリーをピックアップ。


6人全員で、ギルド職員用通用口から出て、宿へ戻るべく、歩き出したのである。

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