第783話「ボスには何から何まで、お世話になりっぱなしだ!! 絶対に恩返し致します!!」
リオネルが、腕を振るった3か国料理でランチを楽しむ5人。
ソヴァール王国料理の腕前が一流のアンセルムを始め、4人全員がリオネルから、
「料理を習いたい、学びたい」と申し出た。
それを受けて、リオネルは考えをまとめて行く。
ナタリーが勤務先の冒険者ギルドへ退職を申し入れし、
スムーズに事が運んだとして、約1か月後にフリーの立場となる。
その間に、彼女はイエーラへの引っ越し作業を進めなくてはならない。
アンセルムも、同じく引っ越しである。
当然ながら、リオネル達も双方を手伝うが。
そのリオネル達であるが、その間、宿屋プロジェクトを進め、目途を立てる。
加えて、アンセルム、ナタリーの引っ越し用、
いつもの通り備蓄用、販売用の買い物をする。
リオネルが料理指南を行いながら、取材を兼ね、
王都の料理店等々の食べ歩きをする。
また、リオネルは王都来訪前には、冒険者ギルドのいくつかの講習を受講し、
学習途上の魔法を学び、バージョンアップしようとも考えていたから、
時間の隙間を使い、実行しようと思う。
更には、蠅団のケアも行う。
経営店の健常化、清掃、警備の新たなシノギとしての確立化をフォロー。
いつまでも『蠅団』のままではいけないので、
急ぎ、団名の改名もしなければならない。
……そうこうしているうちに、ワレバッドからローランドが来訪し、
会う事となるだろう。
そしてローランドと話し合い、今回のナタリーの件をクロージングさせる。
……そんなこんな、多忙な中で、全てが片付いたら、この王都バルドルを出発。
ワレバッドを経由、スカウトしたエステルをピックアップして、
イエーラへ向かう。
とまあ、こんな感じだろうか。
但し、所詮、予定は未定。
ここまで立てた予定も、ナタリーの案件を始めとして、
いろいろな突発的な発生案件により、大きく変わっていた。
何かあれば、すぐに状況が変化するから、
団体行動の際は、こまめに共有化する事が必要だと、リオネルは実感している。
考え、まとめたリオネルは順序立てて、全員へ告げた。
対して全員が、共に行動したり、私もやろう! とか、
協力可能な場合は、「全面的に!」という話になった。
という事で!
ランチ後、先ほどの方向性に基づき、修正した予定を立て、皆で一緒に外出。
まずは冒険者ギルドへ。
各自が、希望の講座を選択し、申し込み。
但し、ヒルデガルドとミリアンは、リオネルとは学ぶレベルが違い過ぎる。
それゆえ受講する『全ての講座』を、
リオネルと一緒というわけにはいかなかった。
でも、ヒルデガルドとミリアンが、
『いくつか』を同じにしたのは言うまでもなかった。
……それから、アンセルムの引っ越しの為の買い物に付き合いつつ、
各自も買い物を行う。
当然、購入した物は全て、リオネルの収納の腕輪へイン!
買い物が終わり、時刻は午後3時30分。
ここで、ヒルデガルド達4人は、ブライム先導のもと、宿へ戻る事に。
そしてリオネルは単独で、蠅団の本部へ……
昨夜の、他組織ボス達との約束は、しっかり守られており、
愚連隊らしき男達のつきまとい、尾行は一切無い。
多分、蠅団の店や関係各所への嫌がらせも無いはずである。
ここまで、あったのはヒルデガルド、ミリアンへの、
一般ナンパ男子達のアプローチ未遂くらい。
アプローチ未遂というのは……何と! ふたりは威圧の初歩スキルを習得。
自ら、彼らを退けていたのだ。
威圧のスキルは、ある意味、魔法の『無手勝手流』である。
これでトラブルになるリスクも、大きく軽減されたに違いない。
4人を見送ったリオネルは足取り軽く、蠅団の本部へ向かったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
午後4時少し前……
いつものように滑るようにスムーズな足取りで、蠅団の本部へ到着したリオネル。
既に何度も来ているし、マチアスや幹部達から新たなボスとして、
周知されたのだろう。
笑顔で門番役が取り次ぎ、同じく笑顔で団員達も、
リオネルをボス室へ案内してくれる。
つまり、もはや、顔パス。
……そのボス室には、マチアスが待っていた。
「おお、ボス! お疲れ様です! さあ、どうぞ、こちらへお座りください」
ふたりはそれぞれ、応接の長椅子へと座る。
座ったリオネルは、「ああ、マチアス、お疲れさん」と労わると開口一番。
「おいおい! 更に本部がピカピカになっているな! ここへ案内されるまでに、しっかりと実感したぞ!」
リオネルは、気付いた変化をすぐに指摘した。
対して、マチアスは「分かりますか?」という面持ちで、満面の笑みを浮かべる。
「はい! 実は、我々、全員、掃除が楽しくなって来まして、丁寧に行い、綺麗になれば、なる程、喜びを感じます!」
空気が良い。
『他組織への対処』を伝えるには良いタイミングである。
「そうか! 良き事だ! そんなお前達へ、俺が、ご褒美の朗報を持って来たぞ!」
「おお、ご褒美の朗報ですか? 一体、何でしょうか? ボス」
「おう! ズバリ言うぞ。王都の主な、他の組織のボス達と、昨夜のうちに話をつけた。ウチの店や団員へ手を出すな、とな」
「え、えええ!? ま、ま、まさか!? さ、さ、昨夜のうちにですか!? ど、どうやって!?」
「ああ、どうやってか? 実は、俺が魔法を使った」
「ま、魔法を!?」
「おう! 詳しい内容は、奥義を秘す魔法使いの理で、お前達にも明かせない。だが、蜘蛛団のボス、イレネーを始めとして、主な組織のボス達とは、話をつけたぞ」
「え!? えええ!!?? ア、蜘蛛団!?!? イ、イレネーとお!?!?」
驚き、絶句するばかりのマチアス。
言葉が……出て来ない。
「と、言う事だ、マチアス。もう奴らは難癖どころか、俺達へ近寄ろうともしないだろう。万が一、何かあれば、俺が制裁してやるわ」
「で、ですが……な、何故!? どうやって!?」
「いやいや、魔法使いの理で厳秘だと言っただろう? お前も自分の全てのやりとりを、部下へ説明していたわけじゃないはずだ。お前達は、結果だけを知れば良い話さ」
「そ、それは、そうですが……」
「論より証拠。本日、団員達から、何か、嫌がらせの報告はあったか?」
「た、確かに! ま、全く! あ、ありません!」
「だろう?」
「は、はい! お、おかしいとは思っていました! いつもは10件くらい、あったのにです!」
「うむ、奴らはな、昨夜、俺と交わした約束を、ちゃんと守っているのさ」
「な、成る程! わ、分かりました!」
「ただ、全てにおいて絶対は無い。万が一、変なアタオカが居て、約束を破ったのなら、俺はそいつの所属する組織を含め、一切を潰す。だから安心して、贖罪に励め!」
きっぱり言うリオネル。
恐れ入ったマチアスは思わず立ち上がり、直立不動で敬礼。
「イ、イエッサー!!」
「よし! では座れ」
「は、はい!」
「という事で、そろそろ蠅団という組織の名も変える。以前に言ったが、お前達で何か、良い名前を考えたか?」
「い、いえ……団員総勢から募りまして、いくつか出ましたが、すったもんだした挙句、結局は決まらず……最終的には、ボスに決めて頂こうという事になりました」
「おいおい、マチアスよ、俺に丸投げかい?」
「はい! 団員全員の総意です! 何卒宜しくお願い致します!」
「ふうむ、団員全員の総意か。お前達が自分で決めた団名は結束力等々を強めるし、良いはずなんだが……」
「いえいえ! 何卒! 何卒!」
「むう、これ以上、どうこう言っていても、互いに時間の無駄になるし、不毛だな。……よし! 分かった! では俺が考えていた名前を付けようか」
「はい!」
「……よし! では俺が考えていた名前を教えよう。一枚岩という言葉がある」
「い、一枚岩、ですか?」
「おう! 一枚岩の結束を誇ると、使われる言葉だ」
「あ、ああ! 聞いた事があります! 団結しているというイメージです!」
「だな! 一枚岩は、組織やチームが強固な結束を持つ状態を表す言葉だ」
「な、成る程!」
「マチアス、お前達はこれから、贖罪の辛い人生を歩む事になるだろう。しかし、めげず、くじけず、全員で結束し、一枚岩となれ!」
「は、はいっ!」
「そして、ひたすら真摯に働き、人々に尽くし、感謝される、新たな人生を切り開いて行け! 今後は、一枚岩団と名乗るが良い!」
「モ、モノリス!! ……おお、素晴らしいです!! 俺達は一枚岩のモノリスなのですね!!」
「そうだ!」
「あ、ありがとうございます!! 他組織の件も含め、すぐに全団員へ周知します!! ボスには何から何まで、お世話になりっぱなしだ!! 絶対に恩返し致します!!」
「おう! 楽しみにして待っているよ」
時間はそう無かったが……
そんな会話を交わした後、リオネルはいろいろとマチアスと相談。
いくつかの提案を、託す事が出来た。
そんなこんなで、時刻は、午後4時30分を過ぎ、
リオネルは新生モノリスの本部を出て、
ナタリーを迎えに、冒険者ギルドへと向かったのである。
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