第782話「分かりました。では俺も、この王都滞在で、更に多くの料理を習得します。お互いに頑張りましょう!」
「ふう! これで良し!と」
翌朝、目覚めたリオネルは笑顔となり、軽く息を吐いた。
結局は、都合、数回の夢魔法を行使。
蠅団と、王都の縄張りを争い、敵対関係にある、
蜘蛛団を始めとした、他の愚連隊組織のボス達へ、
「申し入れ」をしたのだ。
更には彼らの『横のつながり』を使い、
全ての組織へ「話をつけた」のである。
但し、全ての他組織へ、均一な対応をしたわけではない。
何度も、『ちょっかい』を出していた悪意に満ちた他組織へは、
ちょっかいの取りやめ、及び、けじめをつけさせる『戒め』として、
そのボスへ、厳しい地獄の責め苦を体験させた。
そして初めて会見し、敵対的な気持ちを持つ組織へは、問答の結果、
受け入れ、方針を変えた者には、戒告を行った。
だが、話を聞き入れず、敵対心を変えない者へは、
やはり地獄の責め苦を与えたのである。
ちなみに、最初から手を出さないつもりだった組織へは、
注意の戒告のみに止めた。
そう……リオネルは剛柔、様々な言い方、処置にメリハリをつけ、
相手へ全面的な降伏か、もしくは平和的に共存共栄する事を迫ったのだ。
体験させた『地獄』が、よほど怖ろしかったのであろう。
また、その凄まじい魔法と同じく、
リオネルの柔らかな笑顔と、悪鬼となった著しいギャップも。
更には、心を読み、呼び出した全員の『致命的な弱み』を握ったから、
愚連隊のボス&幹部どもは完全に畏怖。
終いには、リオネルを『大ボス』と呼ぶようになり、
極めて従順となった。
結果、歯向かう組織は全く無くなり、いくつかの他組織は、足を洗い、
蠅団同様、カタギになる事を決めたのである。
ただ、更生に向けての蠅団を導いたように、
さすがに全ての組織の『面倒』は見切れない。
ローランド経由で、王国へは「奴らへ話をした」との状況報告だけ入れ、
「後は、各組織の自己判断に任せる」つもりだ。
そこから、所業等々が改善されず、更生への努力も見られず、
結局はドロップアウトしたら、さすがにやり直しのチャンスは、
ほぼ無くなるだろう。
ちなみに、蠅団も軌道に乗ったら、
ボス代行としたマチアスに、「全てを仕切らせよう」と考えている。
そんなこんなで……とりあえず、真っ当な組織になろうとする蠅団は、
第三者的外部の妨害を受ける事は無くなった。
事は、まだまだ終わりではないが、とりあえず、ひと息ついたリオネル。
翌朝、起床し、朝食の席では、その場の全員へシンプルに話す。
魔法を使い、蠅団と敵対する愚連隊の各ボスへは「協調しようと話を入れた」と。
また、念には念を入れ、しばしの間、事態の様子見という意味もあり、
「一応、敵対しないという約束は取り付けた。だが、全員、当分の間、警戒を怠らずにお願いしたい。自分は各組織の動向を注意深く見守る」と。
いわゆる「勝って兜の緒を締めよ」で、
各自が、決して油断しないよう、気を引き締めたのである。
話の内容が内容なので、リオネルは99%外部へ漏れぬよう、念話で通達。
昨夜の今朝でと、既にそこまで!?と、更には、どこでどうやって!?と
ナタリーとアンセルムは、大いに驚いたが……
ヒルデガルドとミリアン、そしてブライムは、
「いつもの事」という感じで慣れたもの。
普通に、笑顔で『了解』と返したのみであった。
そんなこんなで朝食が終了。
先述の通り、ナタリーは冒険者ギルドへ出勤。
直属の上司である業務課長へ、退職の意思を申し入れするのだ。
そしてリオネル達はといえば、万全を期して、
安全確保の為に、ナタリーを護衛して、冒険者ギルドへ送った後、
アンセルムの宿へ戻り、日中は、宿屋プロジェクトの精査を行う。
明後日行う商業ギルドの打合せの為、提案した内容の改めての確認と、
修正、追加の是非を考えるのだ。
そしてリオネルはその合間に、蠅団の本部へ顔を出し、
他組織と話をまとめた事を告げ、動向を見守ると同時に、
更生のフォローを行う。
という事で! こういうのも『同伴出勤』と言うのであろうか……
先頭にリオネル、次にヒルデガルドとミリアンに左右をガードされたナタリー。
最後方を守るのはブライム。
そんな、いつものフォーメーションで、ナタリーを冒険者ギルドへ送り、
午後5時少し前には迎えに行くと告げた後……
戻る途中で買い物を行いつつ、
リオネル達は、アンセルムの宿へ帰還したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
様々な諸問題が片付きつつあるので、
リオネル達はまず、自分達の当面の課題である、
宿屋プロジェクトにじっくり取り組む。
今後の為にと、心と心の会話、念話で、やりとりするようになったリオネル達。
冒険者ギルドから提示されたこの宿と隣接するレストランの改築、増築の設計図、
及び企画書に目を通しつつ、全員でディスカッション。
改善案、前向きな意見も出て、明後日行う商業ギルドの打合せが、
更に良い物になる予感がする。
ヒルデガルドは、アクィラ王国のフォルミーカ、
ソヴァール王国王都オルドルで進めている、これらのプロジェクトを、
『ぜひ、イエーラでも行いたい』と意見した。
そうこうしているうちに、昼となり……
『じゃあ、今日は、俺が昼飯を作りますね』
昼食の準備をするという、リオネルの申し出に『おお!』と全員が反応。
世話になったアンセルムの影響で、料理に興味を持ち、数多の経験を経て……
今や、超一流の料理人レベルへ到達したリオネル。
「ちゃっちゃっ」と手際良く作ったのは、祖国のソヴァール王国料理、
アールヴ料理、アクィラ王国料理の3種。
『このプロジェクトで、リニューアルオープンする宿屋、レストランにおいて、食事をするイメージで作ってみました。料理同士の相性も、俺なりに考慮してみました』
見た目が全く違う料理3品が並び……
アンセルムは一瞬、非日常という感覚に囚われたが……
食べ始めると、絶妙という味の組み合わせにびっくり。
全く、違和感無く、3国の料理が食べられたのだ。
『どうですか? アンセルムさん』
『いや! すげ~よ、リオ! こんなに美味い料理が食える宿やレストランならば、客が絶対に押し寄せるぜ!』
と絶賛。
対して、リオネル。
『そう、おっしゃって頂けると嬉しいです』
と言い、更に、
『俺は旅に出てから、新たな国へ行くごとに、人、景色、料理、音楽等々、様々な要因に触れ、新鮮な気持ちになりました。
ですが、様々な事情で旅が出来ない方も数多居ます。
そんな方々にも、俺達が造る宿、レストランで異国情緒という非日常を味わって欲しいと願っています。
フォルミーカで進めているプロジェクトも、そのコンセプトを反映しています』
そんなリオネルの言葉を聞き、料理の雰囲気、見た目、味等々で、
新鮮な非日常さも感じたアンセルムは、『全くだ!』と大いに同意。
ヒルデガルド、ミリアン、ブライムも、
激しく同意なのか『うんうん』と頷いていた。
そのブライムが挙手。
発言を求めて来た。
対して、リオネルが頷き、許可をすれば、
『お願い申し上げます、リオネル様。フォルミーカで山猫亭の手伝いをしている妹ルベルには絶対に負けたくありません。どうか、私にも料理をご教授ください』
ここで乗り遅れたくないと、アンセルムは、
『おお、俺もぜひ習いたいぞ! 頼むぜ、リオ!』
と、大声で懇願。
すると、ヒルデガルド、ミリアンも、お願いポーズ。
『リオネル様! 私達女子も、改めて料理を習いたいですわ!』
『そうそう! ヒルデガルドさんと私だけではなく、ティエラ様も、ブレンダさんも、そしてナタリーさんだって、リオさんから習いたい! と言うと思うよ!』
そんな各自の声に応え、リオネルも、
『分かりました。では俺も、この王都滞在で、更に多くの料理を習得します。お互いに頑張りましょう!』
と力強く返した。
そして、更には、この場に居ないナタリーが、
帰宅してから、疎外感を覚えないようにと配慮。
『ならば、今夜の夕食も俺が作りましょう。ナタリーさんを慰労する意味でもね』
と、柔らかく微笑んだのである。
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