元三強
「よし、そんじゃ話も終わったし続き頑張れよ」
そう言ってまたどこかへ行こうとする神無の肩を菫さんが掴んで止める
「私は戦闘系の能力を教えるのは苦手なんだ、そして神無は今ここに居る。言いたい事分かるよね?」
「…。…?…!頑張れ!」
神無が殴られた
「なんでだよ!」
「神無?」
ヒェッ…
菫さん。圧が…圧が強いです。
しばらく二人はそんなやり取りを続けていた。先に折れたのは神無の方だった。
「ハァ〜仕方ねぇ。やるか」
そう言いながら神無は少し離れて眺めていた僕の場所へ歩いてきた。菫さんはいつの間にか、手に持っている本を少し離れたところにある石に座って読み始めている。
「そしたら蓮。まず菫の事を全力で殴ってみろ」
「?!」
(?!)
僕と菫さんはほぼ同時に驚き、反応をした。
「冗談だ。とりあえずそこの岩でも殴ってみろ」
「い、岩を?…冗談?」
「いや、本気と書いてマジだ」
(あ、これほんとに本気だ)
「大丈夫。怪我したって俺たち喰らう者はすぐ治るし、お前は堕天使の血が入ってるらしいし、気にすんな」
僕はそれでも嫌だが…やらない事には何も進まないので、仕方なく全力でやる事にした。
バキバキッボキッ
そんな音が辺りを包み、森に響く。
僕の手の骨は絶対折れてる。
「いった!くはない…?」
「岩に傷一つ付いてねぇじゃねぇか」
「無理だよ、いくらなんでもこんな硬い岩」
僕がそう言うと神無はやれやれ、といったジェスチャーをしてから菫さんの方に行き、何か話をしていた。
少し話すと二人はまた僕の方へ戻ってきた。
「よく見とけよ」
神無はそう言いながら僕の横に来て、菫さんは岩の前に立っていた。次の瞬間
「えいっ」
そう、まるで女子が出したかのような声を出して岩に拳をぶつけた。声とは裏腹に岩は
ミシッ、パキパキバキ
と音を立てた後、見事に砕けた。
「これでいいかい?」
「あぁ。と、まぁこんな感じに強い訳でも無い菫の素の力でもこれくらいなんだ。お前の能力が身体強化系ならこんなのは指一本で出来るくらいにならねぇと堕天使には勝てないと思うぞ」
(指、一本?…)
「指、一本で?僕が出来るの?」
「出来ると思うよ。神無は身体強化系じゃない戦闘系だけど本気を出せばこの程度の岩、塵になるよ」
塵…
「まぁ、身体強化系は珍しいし、あんま目立たねぇから実際どこまでどうなるのかは俺らも分からねぇけどな」
「えっ。じゃあ僕の能力は凄い弱い可能性も、凄い強い可能性もあるって事?」
「そうだね〜もしかしたら三強にも歴代最強にも手が届くかもねぇ」
おいおい、まじですか菫さん。そんな事言われちゃったら僕やる気一杯になっちゃいますよ
「ま、菫すら越えられない喰らう者界最弱になる可能性もあるがな」
おいおい、まじですか神無。そんな事言われたらさっきのやる気が相殺されちゃいますよ。
「とりあえずまずは血の感覚を掴む所からやるか」
「血の感覚?」
「俺らは何もせずに身体能力が高かったり、鎌を作ったり香りを出せると思ってたのか?俺ら喰らう者は自分の血を感覚で操るんだ。だから体外でもそのまま血の形を維持出来たり、菫みたいに見えない粒子状にすることも出来るんだ」
「自分の血を、操る…」
「体内の血を操る事で、体内に巡る血の速度を上げたり、体を血で内部から動かすようにする事で身体能力が上がったり。毛細血管レベルまで無意識に意識できるようになれば腕を切り落とされるレベルの損傷なら一瞬で再生出来るよ」
「まぁ、俺も一瞬で再生は出来ないがな。今そのレベルなのは三強とかそいつだけじゃねぇか?」
「菫さん凄っ」
「いやいや、私も多分今は無理だよ。今はせいぜい腕を切られた瞬間に切り口から再生して、腕をすぐに繋ぐくらいしか出来ないけどね」
「それも十分凄いですよ」
「けど昔と比べたらね〜」
(昔どんだけ凄かったんだ菫さん)
「こいつ全盛期の時は戦闘系の能力でも無いのに頭吹っ飛ばされても一瞬で再生してたからな」
「頭?…」
「正確に言えば、俺が見た事あるのは首を切られてたり、頭爆散してたり…」
(頭爆散…怖)
「まぁ昔は人を沢山襲ってたから血も多かったし血の練度が高かったしねぇ」
意外だ
「菫さんも人を襲ってた事あったんですね」
「そりゃまぁ、生きていけないからね」
「なんかイメージと違うと言うか、沢山ってのも」
「綿毛の至りってやつだな」
「神無、それを言うなら若気の至りだ。まぁ昔は今ほど喰らう者の事分かってなかったから、人を食わないと死ぬと思ってたしね」
そうか、菫さんの言う昔の頃は人間の血の事もよく分かってなかったのか。
「よし蓮、血の話もしたことだしそろそろお喋りはおしまいだ。再開するぞ」




