血
「やぁ、おはよう」
「おはようございます菫さん」
「おはようと言っても夜だけどね」
僕らはあの後菫さんの拠点にお邪魔していた。
神無は基本どこかで過ごしている訳ではなく、その日毎に寝る場所を決めているらしい。そして僕はと言うと今あの家に帰る訳にもいかず、消去法で菫さんの拠点で陽が沈み、月が昇るのを待っていた。
「あれ?神無はどこかへ行ったんですか?」
「ん?あぁ。神無は起きたと思ったらどこか行ったよ。まぁ、あいつは大人しくしてる事の方が珍しいから」
「あれ、じゃあ僕の能力を見つける話は?」
本当は今日、僕は神無と一緒に能力を見つける予定だったのだ。しかしその神無が居ない…
「「…」」
僕と菫さんはしばらく無言で見つめ合っていた。理由など無い。ただ二人とも神無に呆れていただけだ。
「ま、まぁ、私と一緒にやろう。戦闘を教えるのは私には無理だが、能力を見つける程度は…ね?…」
「…すいません、お願いします。」
その後神無を探しつつ菫さんのオススメだという場所へ向かった。
「よし、ここだ。着いたよ」
菫さんに連れてこられた場所は、街に囲まれた山の様な場所だった。
「街の真ん中にこんな山があるんですね」
「そうだね、私が産まれた頃はここら辺は全部山だったんだ。けど、人間が街を作る為に周りの山を数百年間少しずつ削っていった結果、ここだけが残ったんだ」
数百年…菫さんは一体何歳なんだろうか…
いや、気にしたら負けか。
「たしかに良い場所ですね」
「そうだろう?ここなら大きい声を出されても気付かれないし人もほぼ来ない。人間の死体を捨てるにはもってこいだ」
「…へ?」
その発言に一瞬、驚きと恐怖を見せてしまったのが失敗だった。
「ほら、君の足元にも。いるよ」
「?!??!?!??!」
僕は咄嗟に全力で飛び跳ねた。
…結果頭を木にぶつけた。
「あははっ。ごめんごめんつい面白くなっちゃって、まさかそんなに怖がるとは」
「昔から心霊系だけは無理なんですよ!」
僕は若干怒りながら菫さんにそう言った。
「ごめんごめん。けど、能力を知るにはいちばん手っ取り早いと思ってね」
そう言うと菫さんは、僕が跳んだ時の地面、そして頭をぶつけた木に指を指し
「喰らう者は基本的に人間より数倍身体能力が高い。しかし君のこれは明らかにその範囲を逸脱している」
菫さんはそう言いながら今度は僕を指差した
「ズバリ!君の能力は身体強化系だ!多分!」
そう菫さんは自信満々に言い放った…
「多分?」
「そう、多分」
「何で多分なんですか?」
「君は確かに普通の喰らう者より身体能力が高い。しかし今の君レベルなら、三強とまではいかなくとも、強い奴ならこれ位の身体能力を持っている事もある」
「つまり?」
「つまり私が言いたいのは、君は堕天使の血を得ている、しかも人間2人分ほどね」
…?あ、父さんと母さんの事か。
「その血によって大きく底上げされている可能性もあるってことさ。だからまだ多分の域を出ない」
なるほど、理解は出来た。しかし僕には新たな疑問が生まれた。
「もう一つだけ聞いてもいいですか?」
「ん?なんだい?」
「何で僕が堕天使の血を得ている事が関係あるんですか?」
「…え?あ、神無それも教えてないの?」
「はい…」
もしかして喰らう者達の中では常識なのだろうか。
「それじゃ花屋はともかく、何で堕天使にも配下が沢山いたと思う?」
「え、えっと…堕天使に守ってもらうため、とかですか?」
「それもあるね。だが血と力の関係が大きく関係しているんだ。人間の血を得ると強くなるって話は前に少し話したよね?」
「はい」
「じゃあ、喰らう者が喰らう者の血を得るとどうなると思う?」
「えっと…強くなるなら争いばかりになりそうだし、何も効果は無いとか?」
「不正解!争いがほぼ無いのは花屋のお陰なんだ。まぁ、その話はまたいつかするとして。強者と弱者によって喰らう者の血の価値は大きく変わるんだ」
「強者と弱者?」
「そう、強者と弱者。例えば私や君は弱者だし、三強は強者。神無とかは私らから見たら強者だ。けど三強レベルから見ればそこら辺に居る有象無象と同じ弱者。見る者によって変わるかな。そもそも喰らう者の強者と弱者ってなんだと思う?」
「え、戦いの強さ…とか?」
「半分正解!実際戦いの強さとか能力の影響はかなり大きい。けど一番は血の強さなんだ」
「血の強さ?」
「そう。結局能力が強くても血が強くないと弱いんだ。例えば神無みたいな能力でも、鎌を作るためのそもそもの材料の血がしっかりしてなくて、相手に当たったとたんに崩れたりしたら弱いだろ?」
「そりゃまぁ。そもそも戦えないよね」
「そうだろう?だから血の扱いの練度等で強弱の差はかなり大きくなる。そして強者の血を弱者が得るとその分強くなる。逆に一定以上格下の血を強者が得ると弱くなる」
菫さんはそう話すと僕の胸に人差し指を当てながら
「同じ強者の血を一度で大量に得た場合は何も問題は無い。しかし、同じ量でも回数を分けると少しずつ血に適応していって効果が弱くなるんだ。つまり?」
「最初に人二人分もの大量の、しかも三強の一人の血を得ている僕は他の喰らう者より強くなっている?」
「そう、その通り。だからそれで身体能力が上がっている可能性もあるからまだ確定は出来ないんだ」
「あれ、でもそれだと襲われた人間の血を得れば強くなれませんか?」
そう僕が聞くと菫さんは一瞬驚いたような顔をしてから嬉しそうな顔になり
「やっぱり君は賢いね。確かにそれも一つの手だけど格下の血を得た時のリスクが高いから基本的にする奴は居ない。
だから弱者は強者の配下になって確実に強者の血を得ようとするのさ」




