人間
黙っていると次の瞬間、玄関の扉が吹き飛んだ。
「…やっぱここになるよなぁ。やれやれ、せっかく会いに来てやったのに歓迎もないとは、つれないなぁ」
扉の先には「死神」が立っていた。
「なんでここが…」
そう僕の口から言葉が漏れたのとほぼ同時に、桔梗さんも叫ぶ様に言葉を発した
「何故お前にここが分かったっ!」
「何故?何故だって?まさか天下の花屋様が俺の能力を知らねぇってのか?」
「私が聞いているのはそこじゃない!何故お前にここを知っている記憶があるんだ!」
「…そりゃ当然だろお前の父親であり、最初の喰らう者を殺したのは誰だと思ってんだ?」
「っまさかっ!」
「そのまさかだよ。おかしいと思わなかったのか?俺ら喰らう者には寿命も無い。にも関わらずお前の父親は死んだ。さぁ、なんででしょうか?」
そう言った死神と僕の視線が交わる。
「俺が殺したからさ」
「そんな馬鹿な」
「たしかにあいつは強かった、お前でも敵わないくらいにはな!だが能力を数多く得た俺の前には敵じゃなかった」
「そんな…じゃあ死神は桔梗さんよりも…」
「あぁそうだ。今の俺は花屋の父親の血で喰らう者となり、その父親の血すら得た。つまり俺は限りなく完璧な喰らう者だっ!」
そんな…
僕が絶望していると、死神の発言を一蹴するように桔梗さんは笑い、話し始めた
「一つ忘れてないか?」
「あ?」
「たしかに私ではお前には敵わないかもしれない。だが私には蓮という希望が居る!」
「え?」
「…?ふっふはははは。何を馬鹿な事を、そんなガキ一人に何が出来る」
「お前こそ馬鹿じゃないのか。蓮は確かにまだ若い。しかし私の姉の子孫、ひいては最初の喰らう者の紛うことなき子孫であり血筋だ。そんな蓮は純血のおまえの血で喰らう者となった」
…っあ、そうか!
「言うなれば蓮は私やお前と同じ純血。いや、それ以上の純血の最強の喰らう者だ!」
「何を馬鹿な理屈を言っているんだ。確かに素質だけなら最強かもしれない。しかし経験や実力が無ければ意味は無い。現に俺に対してそのガキは怖気付いている。机上の理論で勝てる程俺は弱くは無い!」
そんな事を話していると、どこからか別の声が聞こえてきた。
「おい!どうしたんだ!大丈夫か!」
しまった
僕と桔梗さんは同じ事を思ったに違いない。彼は間違いなく人間だ。
しかもきっと僕らの大声を聞いて様子を見に来るほどの善人。
ここは町から少し離れているからと油断していたが、人間の格好を見るに猟師なのだろう。その可能性は全く考えていなかった。
「あ?」
「逃げろ!」
そう叫んだ時にはもう遅かった。
人間を殺しに行った死神を止めようとしたが、人間に対し死神より遠かった僕と桔梗さんの手はあと一歩届かなかった。
手が届いた時には人間はもう動かなくなっていた。
「…桔梗さんすいません。僕はどこまで行っても人間らしいです」
「そうか、まぁいいんじゃないか」
「おい、死神。僕はお前を人間として倒す」
「はぁ?何馬鹿な事言ってんだ。お前はもう喰らう者だろうが」
神無、菫さん、水さん。ごめん。
僕にはやっぱり人間が…父さんや母さんとの記憶は捨てられない。




