生き方
神無に連れられ、というより無理やり引っ張られながら神無の目的地に着いた頃には、僕は限界だった。
「ごめんごめん、君はまだ喰らう者になったばかりなのを忘れていたよ、大丈夫か?」
「なんか、空を飛んだり地面を引き摺られてた気が…オエッ」
「ははっ。キノセイ…そうキノセイダヨ」
なんか、嘘な気が、うっ…
そんな事を考えながら地面に横になり休んでいると、突然誰かが話しかけてきた
「そこで倒れてる君、そう君、大丈夫か?」
そう聞いてきた人に対して僕が答えようとしたところ、遮るようにして神無が先に答えた
「来る途中にたまたま見つけてな、こいつ新入りっぽいからとりあえず説明ついでに連れてきたんだが、無理させすぎたのかこの有様だ」
「なんだ神無の連れか。よくそんな不審者丸出しのやつに着いてきてくれる奴がいたもんだな」
確かにそれ以上の衝撃が多く、神無の勢いに圧倒されて気付いていなかったが黒いズボンと靴、更には黒いパーカーを着て、フードで顔を隠している。
(確かにこれ以上無い位不審者だな)
そんな事を考えている間も二人は、時折笑いながら何かを話していた。
「そういえばそいつ、なんて名前なんだ?」
「あぁ、こいつか?こいつはな…」
そう言った神無は一瞬こちらの方を見て
「こいつの名前は神在だ」
適当な嘘をサラッと言った神無に対して思わずツッコんでしまった
「神在じゃない!蓮だ!」
「そう、蓮だ」
「はは神無、お前も相変わらずの様で何よりだよ。そしたら私も自己紹介をしようか」
「必要ない」
「神無にじゃねぇよ。蓮に対してだ、初対面の相手には必要だろ?」
「それもそうか。おい蓮、こいつはこんな女みたいな見た目だが生物学的には男だ。以上」
神無がそう言うと、神無の頭を叩きながら自己紹介をしてくれた
「なんだその説明は。改めて、私は菫だ今こいつが言ったが一応男だよろしく頼む」
「あ、よろしくお願いします」
(見た目と声と一人称から女だと思っていた。世の中不思議なことがあるもんだ)
「おい、菫。なんで俺の頭を叩いた」
そう聞く神無を無視しながら
「ところで、どうせ神無の事だ。ろくに説明も何もされてないだろう?なにか気になることがあれば答えるから聞いてくれ。」
「はん!俺はちゃんと説明したからな!その心配はない、なぁ?蓮」
「菫さんお願いします」
「なんでだよぉ!」
神無は少し不機嫌になりながらそう言い残し、どこかへ歩いていってしまった
「安心しな、あいつは多少馬鹿だしどこか馬鹿だし挙句の果てには大馬鹿だが、面倒見はいいし良い奴だ。神無の自称親友として私からもあいつの事よろしく頼むよ」
そう言われた僕はどう反応すればいいのか分からず一言だけ
「はい」
と答えた。
「いい返事だ、ありがとう。そしたらあいつから何か説明された事とか今聞きたいことはあるかい?」
そう聞かれたので僕は、ひとまず今までの事、神無に教えられた事を話した。そして心喰い…いや、喰らう者について聞くことにした。
「そうか思ったよりもあいつしっかり教えてたんだな、後で褒めてやらねぇとだな」
(神無さんこれでしっかり教えてたと褒められるなんて、どんだけ普段は適当なんだ)
「さてそしたら結論から言おうか。今の君は喰らう者だ」
「でも僕は産まれた時も、今朝も人間だったはずなんですが」
「そうだね、それは間違いない。喰らう者ってのは全員元は普通の人間なんだ、もちろん私もね」
「じゃあ何で喰らう者になるんですか?」
「喰らう者は人間の血を得る事で少しずつ強くなったり、メリットが多いんだ。まぁ、ここら辺はいつか神無が教えるだろう」
「神無さんが教えてくれるでしょうか?…」
「あいつ信用ないなぁ、まぁ多分ね。聞けなかったら私が教えてあげるよ。昔は人間の肉ごと食べて血を得ていたらしいんだが、それだと胃袋が満腹になるとすぐ限界が来るんだ。そもそも人間の肉を喰う必要も空腹になる事も無いんだけどね」
空腹にならない?
「そしたら喰らう者は何も食べなくても生きていけるんですか?」
「それもまた違っていてね、結局のところ私ら喰らう者は血が全ての源なんだ。戦い、再生し、そして生きる、これに必要なのが血だ。だから人間を襲って血を得るんだ」
菫さんがそこまで話した所で突然神無が戻ってきて話しかけてきた
「そろそろ三強が来るから早めに終わらせろ」
「あれ、もうかい?今日は早いねぇ。そしたら少し急いで君の疑問の答えだけ話すね。人間の血を吸う時、吸うばかりだとそのうち血が無くなって体に巡らなくなる、だから代わりに喰らう者の血を入れていくんだ」
そうか、襲われた人間は血が変化しているんじゃなくてそもそも別の血と代わっているのか。
「けど喰らう者の血は人間の体には合わないから感情が無くなったり、意識が無くなったりするんだ」
あれ、でもそれだと
「それだと僕は何で感情が戻ってるんですか?」
「ここからは仮説だが、喰らう者になるにはまず意識を失う時に強い感情を持っている必要がある。これは多分怒りとかだけで、悲しみとか恐怖だとならないっぽいんだ。君も心当たりはあるかな?」
思い返せば確かに僕はあの時襲ってきたやつに対して怒りと憎しみ、怨みの感情が大半だったな
「確かにうろ覚えですが、当てはまってると思います」
「そう。そして喰らう者の血に適応する必要がある。この時に1番強い感情に引っ張られて逆の感情が消えたりする事がある。君が家族を襲ったのも悲しみをあまり感じなかったのも喰らう者への変化のせいだ」
そうなのか…やはり僕は喰らう者になってしまったのか。
否定出来なくなると…僕があいつに対して感情を抱かなければ、父さんと母さんは…
「大丈夫君のせいじゃない」
菫さんはそう優しく声をかけながら、僕の事を抱きしめてくれた。
菫さんからは花のように優しく、どこか懐かしい香りがした。
そして僕の目からは自然と水が零れてきた…
「おい、そろそろ説明の時間は終わりだ三強が来たぞ」
「馬鹿、空気読め神無」




