仲間
――「蓮、お前だいぶ強くなったな」
「そう?」
花屋に呼び出されてからはや一ヶ月、僕は変わらず神無や菫さんと過ごし、人間の血を得て能力と体を鍛えてきた。
「いや、素の筋力も鍛えたりしてるにせよ、強さと成長速度おかしすぎんだろ」
「そんな事ないと思うけど」
「けっ。無自覚かよ」
そんな話をしながら今日も帰る。菫さんの待つ拠点へ
「ただいま」
いつもなら返事があるが、その日は珍しく静かだった。
「なんだ、菫居ねぇのか」
「珍しいですね」
「…まぁ、あいつも子供じゃねぇんだ。そのうち帰ってくるだろ」
しかしいつまで経っても菫さんが帰ってくることは無かった。
「おい!蓮!どこだ!」
ある夜、外に行っていた神無が帰ってきたと思ったら、叫ぶようにそう僕を呼んだ。
「ちょ、どうしたの。今もう夜だよ」
「落ち着いて聞けよ蓮。菫が殺されたらしい」
「……え?」
神無。突然何を言っているんだ。
「俺もさっき知ったばっかなんだが…菫が居なくなったあの日三強時代の元配下の一人と会ってたらしい。そしたら急に堕天使が襲ってきて元配下を守るように菫が戦ったが、負けて殺された」
「そんな…」
「そして配下のやつも運良く狐火隊のやつに見つかり、花屋に保護され辛うじて生きていたらしい」
「じゃあなんで今になって…」
「最近まで意識が無かったらしくてな。今日の昼ようやく意識が戻り、花屋達も事の顛末がわかったらしい。そして最近菫と良く過ごしていたからすぐ俺にも伝えられた…これでも早かったんだ」
「…なんで菫さんが」
「詳しい事は俺にもわからん。もしかしたらあいつが元三強だと知って血を得に来たのかもしれないし…わりぃが暫く一人にさせてくれ…」
そう言って神無は外に出て行った。
――それから一週間程経ったらしい。僕も暫く放心状態だったが、ようやく思考がまとまった。
「…とりあえず神無を探しに行くか」
あの日出て行ってから、神無は今日まで一回も戻ってこなかった。
外に神無を探しに出たが、僕は一つの目的地に向かって歩いていく。
それは神無のトレーニング部屋だ。
建物の前に着き、中に入ると神無の声が少し聞こえてきた。
階段を静かに降りて、そっと扉を少しだけ開けて中を覗くと神無は何度も何度も鎌を出しては壁に投げ、消しを繰り返していた。
どれだけの期間繰り返していたのか、投げている壁はまるでクレーターの様に穴が開いていた。
その様子を少しの時間眺めていると、神無は僕に気付いたのか出入口に近づいて来た。
しかし神無は僕に気付いていないかの様に何も反応しない。
「神無」
声をかけたら一瞬反応した。気付いていないのでは無く、気付かないふりをしているだけだ。
「ねぇ、神無。どこ行くの」
「…お前には関係無いだろ」
そう答えた神無に僕は思わずビンタをした。
力加減を誤って神無の頭が吹き飛んだが、神無の回復力なら蚊に刺された程度だろう。
「何すんだお前!」
当たり前だが神無は僕に対して怒りを露わにした。
「どこ行くの神無」
「どこでも関係ねぇだろ!」
「関係あるよ!」
「ねぇ!」
「堕天使の所に行くんだろ」
「…っちげぇ!」
一瞬反応が遅れた。図星かな。
「違わないでしょ」
「違わなくてもお前に関係ねぇだろ!」
そう言って神無は僕の胸ぐらを掴んできた。
「関係ない訳無いだろ!」
「ねぇんだよ!」
「僕だって菫さんにお世話になったんだ!」
「だからどうした!お前が菫と過ごしたのはせいぜい数ヶ月だろ!俺は何百年の付き合いなんだ!」
「だとしても!堕天使は僕の親の仇でもある!だから堕天使の所に行くなら僕も行く!」
「お前が来たって何も変わらねぇ!無駄死にするだけだ!着いてくるな! 」
「だからこそだろ!僕が行って何も変わらないなら、着いて行ったっていいじゃないか!一人で勝てるのなら僕は指くわえて待ってるよ」
「屁理屈言うな!」
「勝てるか分からないから一人で行くんだろ!なら僕も連れて行け!どうせ生き残ったって神無が死んだらもう仲間も居ないんだ!」
「っ」
「それに僕はなんのために鍛えてたんだ!神無と菫さんは何のために僕の面倒を見てくれてたんだ!」
そこまで僕が言うと、神無はゆっくり僕の胸ぐらを掴んでいた手を離した。
「…わりぃ俺が悪かった。冷静になりたいからもう一発ビンタしてくれ」
「全力で?」
「全力で」
僕は迷いなくもう一度神無にビンタした。全力とまでは行かないがかなり力を入れたので神無の体ごと壁に飛んで行った。
「全力でとは言ったけど…もうちょい躊躇とかあってもいいだろ…まぁ、お前の全力を見誤ってたよ。お前は成長した。」
「だろ?」
「あぁ。死ぬかもしれねぇがほんとにいいんだな?」
「あぁ、一緒に行こう堕天使の所へ」
「ふっ。そう来なくちゃな。よっしゃ行くぞ!」
「僕の親と」
「菫の」
「「弔い合戦だ」」




