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心喰い  作者: ラム肉
第一章
12/35

人間

「いやいや、そんな…10年も寝られる訳が…」


僕がそう聞くと二人は深刻そうに顔を見合せて。


「いいか、よく聞け蓮。お前は多分喰らう者への変化、そして身体的、精神的にもかなり疲れが溜まっていたから10年も寝れたんだ」


「そんな訳…」


「残念ながら本当だ」


「お前が寝た10年前にな、ハルマキドンが起きてな」


「神無、それを言うならアルマゲドンだ」


「とにかく、それで人類が徐々に数を減らして行った結果、今この地球上に居る人類は喰らう者だけになったんだ」


「いやいや、だとしたらなんで喰らう者は生き残ってるのさ」


「喰らう者は回復力が高いからね。たとえ人間が死ぬような攻撃を受けても私達だけは生き残れたんだ」


そ、そんな…


「いいか蓮。もう一個伝えないと行けないことがあるが…聞く覚悟はいいか?」


「う、うん…」


「冗談だ」


「テッテレー」


そう言いながら菫は「ドッキリ大成功」と書かれたダンボールを手に持った


「え?え?」


「安心しろ。人間は滅んでないし、お前が寝てた時間は一週間だけだ」


なんだ、一週間だけか…


「え?一週間?」


「おう」


「それは嘘じゃなくて?」


「ほんとだよ。多分さっき言った喰らう者への変化と疲れのせいだろうね」


たしかに、心なしか体と心が少しスッキリとしている気がする。


「まぁなんにせよ起きてくれて良かったよ」


「良かった?」


「俺と菫はこれから人間を襲いに行くが。蓮、お前はどうする?」


「…人間は必ず襲いに行かないといけないの?」


「まぁ、そうだね。私達は人間の血を得ないと生きられないから」


「辛いならお前は別に待っててもいいぞ。すぐ死ぬ事もないだろうし、今なら俺や菫が血を取ってきてらやることも出来る 」


…どうしよう。


――「さて、俺達はもう行くが蓮お前は…行くんだな?」


「うん。今の僕は喰らう者だから」


「そうか」


「それに僕は堕天使に復讐しないといけないんだから、人間を襲いたくないとかそんな事言ってられないよね」


「いい心意気だけど、無理はしないようにね?」


「うん」


――「さて、ここの家だよな」


「そうだね」


「適当な家に行くんじゃダメなんですか?」


「私ら喰らう者のモットーというかね、悪事を働いた人間と家族だけって決めてるんだ」


「大抵の喰らう者はそうしてるな。一応悪事を働いた人間を成敗するみたいな正当性もあるし」


「あれ、じゃあ僕の家族も?…」


僕がそう聞くと二人は(そういえば)というような反応を見せてから話し始めた。


「菫、お前分かるか?」


「いや、私は知らないと思う…」


「おい蓮、お前の名字はなんだ」


「えっと…」


あれ?思い、出せない?…


「ごめん、分からない…」


「喰らう者になる時必要ないと判断した記憶が抜けちゃったのかもね、仕方ないよ」


「けど確かに、気にした事無かったが何で蓮の家族は襲われたんだろうな」


「まぁ、その話はまた今度にしよう今はこの家だ」


「よし。蓮覚悟はいいな?」


「…うん」


僕がそう言うと神無は自分の人差し指を噛みきった。


「え?神無?」


「あぁ、気にしないで。鍵を開けるためだから、すぐ治るしね」


菫さんがそう説明してくれている間、神無は噛みきった指の断面を鍵穴に当てていた。


「おい、開いたぞ」


「ね?あんな風に血で鍵穴の形を探って開けるんだ。指をもう治ってるだろう?」


ほんとだ。もう治ってる…


「お邪魔しまーす」


「神無こんな見た目と性格なのに、家に入る時は馬鹿正直に挨拶するんだよね」


「へぇ〜ちょっと面白いですね」


「おい、何してるんだ。二人とも早く来い」


「はーい」


「はい」


――その後寝室と思われる扉を神無が開けた。

それからはほんとに一瞬だった。神無が扉を開けた瞬間菫さんの能力で眠らせたらしい。


「これで1時間くらいは何しても起きないよ」


その菫さんの言葉に僕は安心しきって、無意識に警戒を解いていたのかもしれない。


「おい、俺と菫は血を吸うが…蓮はどうする?」



「ごめん、僕は遠慮しておく」


「そうか、まぁ無理することは無い。今どき血液パックとか、まずいし効果は薄いがそれでも血を得る方法はある。見たくなければ部屋を出ててもいいぞ」


「ごめん、廊下で待ってる」


臭いや血の見た目が無理だった訳ではない。菫さんや神無が血を吸っている姿に抵抗や不快感がある訳でもない。

ただ、どうしてもあの日の事を思い出してしまった…


「お父さん?…」


「?!」


まず、誰だ


「お兄ちゃん。誰?」


「あ、えっと、あの…怖いお兄ちゃんじゃないよ、お父さん…そう、お父さんの友達」


僕に声をかけてきたのはまだ5歳くらいだろうか、それくらい幼い少女だった


「そうなの?」


「そうそう」


そう言うと少女は僕の方へ歩いてきたので、僕は慌てて止める


「待って待って、こっち来ても何も無いよ。ほら、お部屋に戻ろう?」


「やだ、お母さん」


「お母さんも寝てるからね?」


僕がそう言って通さないように止めていると、段々と泣きそうになり始めた。


「あぁ、ごめんね。いい子だから泣かないで、ね?」


僕がそう言うと少女は、走って僕の横を通ろうとしてきた


「待って!」


僕はとにかく少女を止めようと、と思い体が自然と動いた。それだけだった。

しかし僕の力は想像以上に強くなっていたのか、僕の手に触れた少女の体は、壁へと叩きつけられた。

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