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第47話 三人目は



View of エクスタ=カレンツォ ミルオース中央皇国 四大公 統制卿






「あれが魔法で作り出した椅子!?嘘でしょ!?」


 私の説明にウェティカが叫びながら立ち上がる。


 驚いて立ち上がったのではなく、あの椅子を見に行こうとしているのだろう。


「椅子を見に行くのは構わんが、とりあえず最後まで話を聞いてくれ」


 私の言葉にしぶしぶといった様子でウェティカが椅子に座り直す。


 本人としても椅子を見に行きたいという想いもあるのだろうが、それ以上に話が気になるのだろう。


 しかし、スケリアットがこの話を聞いたら飛び出すと思ったのだが、意外と落ち着いて……いや、奇妙なくらいに落ち着いて話を聞いている。


 そのことに内心疑問を覚えつつも、私は玉座の間でのやりとりを二人に説明する。


 一通り説明を終えたところ……スケリアットは表情を一切変えず、ウェティカの方はこちらを馬鹿にするような表情を浮かべる。


「それじゃぁ、どこの誰とも知れないヤツに良いようにされたってことね。四大公も大したことないわね!私たちがいないと何もできないじゃん」


「……」


 確かにその通りだが、今回の問題はそこではない。


 そもそもの失敗は……。


「情報収集に失敗したせいだな」


「はぁ?それも相手の狙い通りってことじゃん?」


「……」


 その通りだが……この者が英雄でなかったら、その顔面に拳を叩きこんでいたかもしれない。


「カレンツォ卿。実は謁見のあいだに第七艦隊の者を拘束するように指示を出していました」


 普段通り何を考えているのか読めない表情でゼパストル卿が口を開く。


 謁見の間に?


 そんな様子は全く伺えなかったが……この男が口に出したのだから間違いなくやったのだろう。


「しかし、使節団と共に皇都へやってきた者もカレンツォ卿が話を聞いていたロモロスも既に姿を消していました」


「何それ、完全に動きを読まれてるじゃん。その第七とかいう連中、死んでるか匿われてるか知らないけど、もう手が届かないんじゃない?」


 それはウェティカの言う通りだろう。


 既に向こうは、第七艦隊の連中の裏切りにこちらが気付いたとわかっている。


 こちらの情報が何処まで漏れたのか、そして握っているエインヘリアの情報をこちらに渡さぬために口を封じたと考えるのが妥当なところだろう。


 手にしている情報の差が如実に出ているといえる。


「で?どーすんの?」


「……スケリアット。件の魔法使いは英雄だと思うか?」


「英雄だな。あの椅子は城壁どころじゃないくらいの堅さだ。あんなもん、ただの魔法兵が出せて堪るかよ」


「そうか……まぁ、その方が安心出来る話だな。アレがエインヘリアの一般的な魔法兵の使う魔法だったら絶望的と言える」


 海戦では魔導銃が強いとは思うが、連射性こそないものの魔法その物も脅威だ。


 エインヘリアの魔法がこちらよりも遥かに高いレベルであれば、数の多い魔導銃を有していても海戦で不利になる可能性がある。


「謁見の間は諦めろ。アレをぶち壊すには部屋を壊さないようになんて考えてたら無理だ」


 先程までとは違いスケリアットが不機嫌そうな様子で言う。


「仕方あるまい。アレがいつまでも謁見の間にある方が問題だ。修繕費は……大使とやらに送りつけてやろう」


「カレンツォ卿。良ければその役目私にまかせて貰えませんかな?」


「む?」


 修繕費の件はただの皮肉だったのだが……ゼパストル卿が笑みを浮かべながらそんなことを言う。


 本来であれば国相手の交渉は私の領分ではあるが……。


「情報は私にも渡すと契約してもらうが、それでも宜しいか?」


「えぇ、構いません。大使から得たエインヘリアの情報は全てカレンツォ卿に委細漏らさずお渡しいたします。契約書もすぐに」


「……ではそちらはよろしく頼む。スケリアット、ウェティカ。二人でエインヘリアの使節団を処理できるか?」


「……相手も見てねぇのにわかるかよ」


「あら?自信ないの?スケリアット。アタシ一人で行ってこよっか?」


 いつになく慎重な様子のスケリアットと普段通りのウェティカ。


 恐らくスケリアットはあの謁見の間に作られた椅子……それを作った魔法使いに対し思うところがあるのだろう。


「単独で行くことは許可できない。向こうには最低でも二人の英雄がいる……万が一があれば今後に障る」


「あたしが負ける訳ないじゃん。遠くから一発叩きこめば終わりでしょ」


「お前こそ、初撃防がれたら終わりだろ」


「はぁ?あたしの魔法を防げるわけないじゃん。馬鹿なの?」


 ギシリと部屋の空気が音を立てたような気がする。


 英雄二人の私闘……巻き込まれれば私もゼパストル卿もひとたまりもないが……。


「二人ともやめろ。ウェティカ、お前が英雄すら一撃で倒すことができることは百も承知だ。だが、現在我々は情報の少なさに四苦八苦している最中。何らかの方法でお前の魔法を防げないとも言い切れないのだぞ?」


「……」


 私の言葉に黙るウェティカ……憮然とした様子ではあるが、本人もその可能性を考えなかったわけではないのだろう。


「謁見の間にあった椅子は、エインヘリアの者が魔法を使い一瞬で作り出した代物だ。お前の魔法の威力を減衰させられるだけの防御魔法を使えないとも限らんだろう?」


「……まぁ、この脳筋が壊せなかった壁だしね。多少威力は削がれる可能性は否定できないわね」


 ウェティカは英雄ではあるが、魔法に特化した英雄であり身体能力はそこまで高くはない。


 勿論英雄にしては……という但し書きはつくが、それでも魔法を防がれた場合、敵英雄……エインヘリアの王に距離を詰められれば、恐らく手も足も出ずにやられてしまうだろう。


「特殊な能力を持った英雄だと厄介だな」


 スケリアットの言葉にウェティカが嫌そうな表情を見せる。


「連中の情報は探れるのか?」


「……厳しいな。こちらは向こうの言葉がわからないし、連中の大陸の位置も第七艦隊の者しかわからない。海図は提出させているが、連中が裏切っていることを考えれば間違いなくでたらめだろうな」


 つまり、こちらからエインヘリアを攻めるには、連中の大陸を発見するところから始めなくてはいけないということだ。


 防戦するつもりではあったが、攻めずに守り切るというのと攻めることができず守ることしかできないというのでは話がかなり違う。


 せめてあの謁見の間でもう少し情報を得ることができていれば……いや、ほぼ不意打ちと言えるような状況で、あのエインヘリアの王から情報を得るのは不可能に近いだろう。


 せめて大陸の位置だけでもわかっていれば、圧を掛けることも可能だが……。


 一つ可能性としては、第七艦隊の連中が調査していた海域の情報からエインヘリアのある大陸の位置を割り出すことだな。


 ルデアクタス卿であればその辺りの情報も持っているだろう。


「監視とか調査っていうなら、ガルラにやらせればいいじゃん?っていうか、アイツは呼んでないの?」


 王都にいる三人目の英雄……未だに呼び出しに応えないが……。


「呼び出しはかけた」


 二人とも呆れたような顔をしているが、お前たちも呼び出しを掛けた時間を考えればかなり来るのが遅かったからな?


 それに普段はお前たちよりもアレの方がよっぽど扱いやすい。


「どうせ寝てんだろ。だが、エインヘリアとかいう連中を監視するならガルラがいいだろう。俺たちはそういうコソコソした動きは苦手だからな」


「そういうのは陰気なガルラにお似合いよ」


「……もう一度ガルラを呼び出すか」


 いざ仕事が始まれば、この二人よりしっかりと働いてくれるからな。


 始めるまでに手がかかるが……。


 しかし、今回の相手は英雄たちの我儘を許してどうにかなる相手ではない。


 スケリアットは相手のことを認めたようなふしがあるが……他の連中は……エインヘリアがどうこう以前に、頭の痛い問題だ。



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― 新着の感想 ―
そうか、戦う専門の人が居なかったから正確な戦力差が理解できて無いんですね。せめて誰か1人でも英雄が居たら少しは理解出来たんでしょうが、普通の人からしたら英雄っていう大きな括りでしか判断出来ず数を揃えれ…
侵略しまくって権力も分散したのかね? 上の人間のまとまりがない気もする
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