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第40話 本番の方が楽



「球技大会ってどう思う?」


「私には縁のない行事じゃと思う」


 にべもなく俺の質問に応えるフィオ。


 いや、まぁ……確かにフィオはそういう行事は好きじゃなさそうだけど、そういうアレじゃないのわかってるでしょ?


 俺がそういう想いを込めてフィオをじっと見ると、苦笑しながらフィオが口を開く。


「私が悪かったからそんな恨みがましい目で見んでくれんかのう?」


「で、どう思う?」


「んー、それは以前から考えておるスポーツ振興の一環かの?」


「その前段階って感じかな?俺たちがスポーツをしているところを一般の民に見せるってのもありかなと」


「ふむ」


「わかりやすい球技ならいけるんじゃないかと……例えばサッカーとか」


「なるほど」


「初っ端に野球とかバスケとかはわかりにくいだろうしな」


 ってか、うちの子たちに野球とかやらせたら、一般人は球が見えないかもしれない。


 ……木製バットだと芯に当ててもバットが粉々になりそうだな。


「サッカーも細かいルール……というか、わかりにくいルールはスルーしてって感じで、どうだろうか?」


「面白い試みかもしれんが……ジョウセンたちのキックにボールが耐えられんのじゃないかのう?」


「む……」


「ボールを破裂させない程度に手加減したとしたら……絶対にキーパーに止められそうじゃしのう」


 ……確かに。


 身体能力が凄まじすぎてまともなゲームにならない……というか成立しない。


「漫画みたいな感じのすんごいゲームになるかと思ったんだが」


「やりたい事は理解できるが、道具が耐えられんのう。陸上競技なら何とかなりそうじゃが……」


「陸上競技か……走ったり飛んだり投げたりってことだよな?」


「うむ」


「うーん」


 やっぱりそういうところから攻めた方がいいのだろうか?


 個人的には球技とかの方が好みなんだけど……陸上競技の方がシンプルかつ危険も少ないか?


「というか、今の時期にそんな事やっとる暇があるのかの?」


「いいえ、私にはあまり時間がありません」


「なんで急に英語の教科書みたいになるんじゃ?」


 いや、特に意味はないけど……。


「まぁ冗談はさて置き、球技大会とかは無理かぁ」


「仮に全員に道具を壊さんように手加減を厳命したとしてもじゃ、野球は……全員ホームランで一回表が終わらんじゃろ」


「……確かに」


「サッカーはさっきも言ったが絶対にキーパーに止められるじゃろうな」


「……」


「バレーは……ラリーが永遠に終わらんじゃろう」


「……」


「テニスも同じじゃな」


「……」


 ……ボールや道具が壊れないように手加減すると、反射速度がボールの速度を上回っちゃうか。


「ラクロスやハンドボールはサッカーと同じじゃな」


 キーパーとかゴーリーとかがいる競技は守りが鉄壁すぎると……。


「バスケは意外といいかもしれんのう」


 バスケ……バスケか。


 基本的にゴールの位置より上のボールに触るのはダメ……厳密には違うけど、そういうルールに変更すれば……。


「なるほど。シュートブロックを躱せば……点はしっかり入りそうだな」


「ラグビーやアメフトもいけそうじゃな」


「あぁ、確かに」


 戦闘部隊の子たちだけで二チームは普通に作れるし、ありかもしれん。


 ラグビーもアメフトもそこまでルール知らないけど、基本の基本くらいは知ってるから形にはなるし、細かいルールは逆に持ち込んでも見ている人たちが理解出来ないだろう。


「ゴルフもいけそうじゃが、観戦には向いてないのう」


 ゴルフはなぁ……コースが広すぎて観戦にはちょっと向いてないよな。


 いや、大型ビジョンとかないしどのスポーツも見にくい部分はあるだろうけど……あぁいうのは雰囲気だよね。


 そもそもスタジアムとかもないしな……。


「まぁ、何にしても……お主そんなこと考えとる暇あるのかの?」


「……まぁ、そんなこと考えるような暇しかないというか」


 いや、わかってますよ?


 ミルオース中央皇国関係で色々やらないといけない……というか、考えるべきことがあるってのは。


 しかしながら……何処でいつ誰が何をするかは、キリクたちの手に委ねられているし、俺があーだこーだと頭を悩ませる必要性はない。


 ……まぁ、俺にも役割はあるんだけどね?


 皇都を目指し頑張って馬車の旅をしてくれている使節団のみんなが到着すれば……正確には到着する寸前までいったら、そこからは俺の出番となる。


 影武者と交代して皇都に入るのは俺だ。


 そして俺に課せられた仕事……それは、初っ端の挨拶。


 我がエインヘリアとミルオース中央皇国の正式なファーストコンタクトとなる訳だけど、そこでしっかり覇王的こんにちはをしなきゃいけないんだよね。


 それを考えると……あ、お腹痛くなってきたかも……。


 他国の王様やら重鎮やら相手に全力覇王ムーブをしなきゃいけない訳で……ま、まぁ、交渉とかをする訳じゃないからその辺は気が楽だけどね。


「その顔を見れば何を考えておるかはわかるがのう」


「……キリクたちが期待する動きくらいはしてみせないとな」


 俺が肩を落としながら言うと、フィオがほほほと笑う。


「ま、お主はなんだかんだでその辺上手くやるじゃろ。内心はともかく、外面は立派な覇王様じゃしの」


「俺自身、いざその時が来たら何とかなるって気はしているんだけどな?だけどその時が来るまでの期間が辛いというか……」


「こらえ性がないというか、焦らされるのに弱いというか、プレッシャーに弱いというか」


 そう並べられると、覇王精神的に弱すぎな感じがするんじゃが?


 もうちょっとこう……我慢できる覇王ですよ?


「その割に本番には強いからのう」


「……開き直ればどうとでもなるって感じかな?まぁ、ミルオース中央皇国相手にはそんな難しい話をするつもりはないし、初めてスラージアン帝国に行った時ほどは緊張しないかもな」


 というか、お茶会以外で帝国に行くときは基本緊張の極みであることが多い。


「初めてスラージアン帝国に行ったときも飛行船だったっけ……そういえば、飛行船の速度って前よりかなり上がってるんだよな?」


「うむ。お主を探す時に航行距離を伸ばしたくての。あの時は実験的に色々やったが……今では安定して航行距離を伸ばしておる。それに……ミルオース中央皇国の船に搭載されておった魔物に気付かれにくくする技術を応用して飛行船にも載せたからのう。昼間であっても地上から飛行船を見つけるのは困難じゃ。飛行船の存在を知らぬ者であれば間違いなく気付かないじゃろうな」


 ステルス機能までついたのか……開発部頑張り過ぎじゃない?


「それと、補給艦のお陰で海上での整備ができるようになったからのう。簡易的な整備ではあるが、発着場無しでも整備がある程度できるようになったのもでかいのう。おかげで以前とは航行距離が段違いじゃ」


 ステルス機能と補給艦の合わせ技か……。


「それでミルオース中央皇国にこっそり魔力収集装置の設置や発着場の建設をしなくても良かったのか」


 因みに今回、エインヘリアはミルオース中央皇国に対しまだ何も仕掛けていない。


 こっそり上陸して橋頭堡を作ったり、最初に到着した港に魔力収集装置を置いたり、各地に外交官を派遣したり……そういうことを一切行っていないのだ。


 勿論、理由なくそうしている訳ではない。


 キリクたち発案のミルオース中央皇国わからせ計画……それは不意打ちであってはいけないということだ。


 しっかり、きっぱり、はっきり……ミルオース中央皇国の連中にはエインヘリアという国がどういう物なのか味わって……骨の髄まで叩き込んでやる。


 そういうことらしい。


 その為の第一歩が……皇都での、覇王による挨拶というわけだ。



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