第39話 今のは痛かったぞってなるかもしれん
エインヘリアとして相手をする以上、現時点の魔導銃はそこまで脅威ではない。
オスカーの話を聞く前からそこは理解していたつもりだけど、改めてしっかり話を聞いても同じ結論だった。
しかし、魔導銃はまだ改良の余地があって将来的にはわからない。
今は十秒に一発だけど、将来的には秒間何発……みたいなことになる可能性はゼロではないわけで、そこまでの火力が出れば恐らく英雄には確実に届くだろうし、俺たちもやばいかもしれない。
魔導銃一丁ならどうとでもなるだろうけど、この武器は選ばれしものの武器ではなく一般兵の持つ量産武器、数こそ力だからね。
まぁ、こんな感じに今まで魔導銃のいい点をつらつらと上げて来たわけだけど、当然万能という訳ではない。
それはコスト。
オスカーが言うには生産コストは一般的な魔道具と同等らしいけど、魔法使いでなくても魔法を撃つ魔道具が使用者自身の持つ魔力だけで燃料を賄える筈もない。
魔導銃から放たれる魔法に必要な魔力は、魔石から直接供給されているとのこと。
銃の持ち手の部分に魔石をはめたカートリッジのような物をセットすることで魔法を撃つことができる。
魔石の質にもよるらしいけど、カートリッジ一個で四発から七発ほど魔法が撃てるらしいけど……エインヘリアの魔石と違ってこの世界の魔石は鉱石資源。
無限に採れるものではないし、そもそも採るのも結構大変だそうだ。
まぁ、鉱山一つ掘りつくしたとしても、何十年かしたらまた同じ場所で採れるようになるらしいけど……それでも普通の生活で消費する分に合わせて戦争でバカスカ消費すれば、すぐに資源は枯渇するだろう。
ミルオース中央皇国がガンガン外征をしているのは、魔石を求めてのことかもしれないね。
魔石を使って魔石を求めるって永遠の自転車操業って感じがするけど……まぁ、戦争なんてそんなもんか。
というわけで、魔導銃は結構コストがかかる。
一度の戦争でどのくらいカートリッジを使うかわからないけど、魔石の消費は千や二千では済まないだろうね。
これが問題の一つ。
次に……問題と言っていいかわからないけど、魔導銃で撃てる魔法は切り替えることができないということ。
火の魔法を飛ばす魔導銃は火の魔法しか撃てず、防御魔法を撃つ魔導銃は防御魔法しかだせない。
銃のサイズも火縄銃みたいなサイズ感なので一人で何個も所持するのは難しく、ひたすら同じ魔法を連打することしかできないということだ。
汎用性には乏しく一芸特化……まぁ、一般兵が持つには十分なんだろうけど、個人的には色々な状況に対応できる方がありがたい。
特に属性攻撃が一種類しかないとか……耐性を持った相手には手も足も出ないじゃん?
……ゲーム脳過ぎるか?
まぁ、一人でダメでも大人数いれば色んな属性が使えるか問題ないのかな?
最後にもう一つの問題点は生産性。
魔道具を作るには、うちの大陸で言うところの魔道具技師による手作業が必要となる。
オスカーたちが作る魔導回路とはまた違う技術みたいだけど、それでもハンドメイドというところに変わりはない。
魔導銃造り自体は簡単なものだけど、カートリッジや本体の魔道具部分はかなり複雑な物だそうだ。
先遣隊に千丁支給できる程ミルオース中央皇国は銃を保持しているわけで、量産体制は整っているということだろうけど……どうやってそれを実現しているか興味深くはある。
もしかしたら、純粋な技術者じゃなくても魔導銃を作ることができる生産体制を作り上げたのかもしれない。
というか、そうじゃないと量産なんて無理だと思う。
ミルオース中央皇国はやはり超大国と呼べるだけの国力があるということだろう。
それにミルオース中央皇国の武器は魔導銃だけではない。
魔導銃のワンランク上というか……携行武器ではなく設置型の兵器、魔導砲というものがある。
こちらは船に四門ずつ載せられていた兵器だけど、砲門とは別に設置されている大型の魔道具と繋げることで魔導銃を遥かに上回る火力を出すことができるとのこと。
大型の魔道具は四門全てに繋がっており、一つで全てをまかなっている……という訳ではなく、四門同時どころか二門同時発射もできない仕様のようだ。
そして御多分に漏れず連射もできない。
しかも発射間隔は魔導銃の比ではなく、五分以上の冷却時間が必要らしい。
何か宇宙戦艦の主砲とかを思い出すね。
しかしその威力は侮れない。
魔導砲による砲撃は、召喚兵も一撃で消し飛ばされてしまう程のものだ。
それに射程も長く、儀式魔法と同じくらいの距離……数キロ先まで届くらしい。
連射ができず、船から動かすこともできないけど、数キロ先まで届くということで海の近くでは無類の強さを誇るだろう。
照準は目視と感覚だから、海戦での命中精度はひくいだろうけどね。
しかし儀式魔法程の威力はないにしても、儀式魔法は半日から一日以上も準備に時間がかかることを思えば十分に一発ってのはかなりの連射速度と威力といえる。
それに船は一隻じゃないからね。
海岸に船を並べて順次撃てば……相当な殲滅力だろう。
海近くの砦とか港とかは簡単に制圧できそうだね。
キリクたち的には、魔導銃よりも魔導砲の方が面倒だと考えているらしい。
まぁ、魔導銃は俺たちには殆ど効果を成さないし、船だけじゃなく砦なんかにも設置されている魔導砲を警戒するのは当然か。
威力も十分過ぎる程あるみたいだしね。
俺たちでも直撃すれば……多分ダメージを喰らうだろう。
多分だけど。
さすがに実験で喰らってみる訳には……訓練所でならワンチャン?
運び込むのが大変だろうけどね。
「ありがとう、オスカー。助かったぞ」
「いえいえ、お役に立てたようで何よりです」
「しかし、やはり中々強力な武器のようだな」
俺のシンプルな感想に、オスカーは深刻そうな表情で頷く。
「こちらの大陸では戦いに使う魔道具ってのは殆どありません。俺もそういったものは考えたことすらなかったですしね。ですが、ミルオース中央皇国の魔道具は……戦いに特化したものが多いのかもしれません」
俺たちの大陸も、別に平和って訳じゃなかったけど……魔道具に関しては生活に根差した物ばかりだったよな。
俺としては、その方が好感が持てるというか……まぁ、魔法に関しては攻撃魔法ばっかりだったけど……もうちょっと便利な魔法とか色々発展して欲しかったよね。
その辺りはこれから色々出てくるといいよねとは思ってるけど……ミルオース中央皇国は魔法も魔道具も戦闘用に舵を切ってるって感じかな。
まぁ、それが全てではないかもだけどね。
「俺としては魔法や魔道具は平和的な方向に発展してくれる方が嬉しいがな」
「……兄貴」
俺の言葉にオスカーが嬉しそうに笑みを見せる。
「だから、魔導銃や魔導砲は解析こそして貰ったが、それらをうちで作る予定はない。流用できる技術や盗める技術は存分に取り込んでもらっていいがな」
「了解です。まぁ、解析自体は面白かったですが、やっぱり武器を作りたいとは思えなかったですし……兄貴がそういう考えでいてくれるのはありがたいです」
「俺が今一番欲しいのは鉄道だからな」
俺がにやりと笑ってみせるとオスカーも嬉しそうに頷く。
「試作一号は……三か月以内には完成予定です!」
「あぁ、そうらしいな。実に楽しみだ」
俺はその試作一号……見学できないかもしれないけど。
今頃……かなり大変な馬車の旅をしてくれている人たちもいるし、どう考えても向こうが優先だよね。
今回オスカーに教えてもらった話は……しっかりと覚えておくべきだろう。
本国にはもっと高性能の魔導銃や魔導砲がないとも限らないしね。
敵としては……スラージアン帝国以上に大変な相手だろう。
……いやぁ、俺が戦略とかを考えるんじゃなくて本当に良かった。
ミルオース中央皇国は確かに強敵だろうけど、キリクたちなら……問題ないしね。




