スライムの苦労
一日1000文字ちょっと。
三日経つから3000文字?
残念だったな! +αで5000文字だよッ!
二日空き続いてたからね。アクセス数の伸び方見たらなんかフェイント掛けたみたいで申し訳ないです。
なかなか話が切れなかったんよ。許して。
それとあらすじ部分書き直しました。前より分かりやすくなってるといいなぁ。
周囲に肉の香りが漂う中、白と名付けられたスライムは、マテルから与えられた焼き肉を取り込んでいた。全身で味わうそれは、間違いなく美味という言葉が当てはまる。故に、白は召喚者マテルの「美味しいな」という賛同に肯定を返す。
だが、肉続きというのも飽きるもので、四、五枚も食べればその身体が満足だと遠慮を始める。そして満腹となった白は、マテルの膝の上から転がり降りた。マテルは白に与えることを優先していたからか、今から本格的に食べ始めるようであった。
そんな召喚者をよそに、食後の余韻に浸る白はすぐそこにいる一匹の前に進んだ。白にとってこの家で唯一会話らしい会話ができる相手。丁度あちらも食事を終えた頃合いで、白はそんな従魔に向かい、疑問を口にした。
「君は分かってるんでしょ? いいの? このままだとマテル、この家から出ていくよ?」
「いいのよ。私が分かってるんだもの、ジェシカだって分かっているわ。それでも止めないのだから、私が止めるだけ無駄よ、無駄」
つまらなさそうに狼は唸る。飛び去る鳥を眺めるように、狼の眼はマテルを静かに捉えていた。今さら召喚者の意向に逆らうつもりは、狼にはなかった。
彼が産まれてから、ずっと成長を見守り続けていた狼にとって、いつもの場所にマテルがいないということがどれほどの喪失を感じるのかは知らない。
狼に彼が出ていくことを阻止する正当性があれば話はまた別だったのかもしれないが、それでも旅立ちという成長を止めるのに、身勝手以外の理由を狼は見つけられなかった。
だから、狼は見送ることにしたのだ。ペチという名前をつけた召喚者が、自らの息子を止めず、しかし背中を押せない不器用なままに見送るというのなら、せめて私が代わりとして、マテルの背を押してあげようと。
「まぁ、マテルは僕が守るから安心しなよ」
「そうね、なら私はタンポポと一緒にあの子の帰る家を守っておくわ。……マテルのこと、頼んだわよ」
「この命に代えても、ってね」
互いの召喚者が親子関係であるからか、自然とその従魔も似た関係のように、親しげに言葉を交える。
やがて誰もが寝静まった真夜中、残り数時間で夜が明けるというときに、白は叩き起こされた。まさか自然覚醒を待たずして出発するとは思っておらず、白は寝惚けていないのに呆けてしまう。だが秘密裏に出ていくのであれば納得の時間だ。不満を覚えつつも置いていかれないように、マテルの背中へと白は跳びついた。
既に白とペチは食後に別れの言葉を済ませている。ならば、マテルが出ていこうとするその場所で、ペチが待っていた理由は一人しかいない。
別にペチは引き止めたいわけじゃない。子供とはいつか一人立ちをするものなのだ。だから、息子のように思う子のために、ペチは伝えに来た。
「いってらっしゃい、マテル」
言葉は短い。けれどそれすらも人間であるマテルには伝わらない。だが一つだけ、明確に伝えられたものがある。
『あなたの旅に幸運を』
人間が旅立つ者に送るハンドサイン。言葉という壁が乗り越えられないのなら、言葉にしなければいい。ただそれだけに至る狼は、小さく微笑んだ息子の背を穏やかに見送った。
暗い道が流れていく。白はただ揺られて後ろを眺めた。リュックサックの上から落ちないように、バランスを取りながら、遠くなるマテルの実家を見つめていた。たった一日だったが、そこは明確に白の家でもあったのだ。だから視界に映る家には、白にとって僅かな物寂しさが残っていたといえる。
それからマテルがゴネットの家に着くまで、白は町のあちこちを眺めていた。マテルがナイフを買いに出掛けようとしたときも、勝手に張りついて辺りの観察を行っていた。その大部分は自分の命に等しいマテルを一人にできないというものだったが、多少の好奇心だって含まれていたのだ。
だから今回も大人しく、マテルの歩調に合わさった速さで過ぎ去る風景を眺めていた。
「なんか元気そうだね」
「おん? あぁ水の従魔じゃッ!?……とと」
白はゴネットの肩にいるパリトを見つけるなり、開口一番にそう言った。
マテルはゴネットを見つけるなり、ある程度近寄って言葉を掛けた。そんなことだから、言葉を返そうとしたパリトは、驚いて振り替えるゴネットにつられ、遠心力で彼の肩から落ちかける。
なんとか前肢を引っ掻けて、手繰り寄せるようにして身を捩る。そうしてパリトは頭まで登り切ったとき、静まった空気が一拍、二拍と続いていることに気づいた。
いったいどうしたんだとパリトが考える頃にはマテルとゴネットとの会話が再開された。
「あー、それで、何だって?」
「なんか元気そうだねって言ったの。僕は叩き起こされて寝不足なんだよ。あと僕の名前は白になったから」
「ほーん、白ね。でもまぁ、元気っつってもなぁ。夕暮れには眠っとけって言われてたし」
「なるほどその違いか」
白は己の召喚者について一つ理解した。
マテルは間違いなく、ゴネットの計画を知っていた。だからそれに合わせて起床ができたのだ。それは過去にゴネットがマテルに計画を漏らしたからなのだが、それからもう何年も経つ。それでも計画に大差がなかったのだからマテルはゴネットに会うことができたのだろう。
ではマテルとゴネット。お互い同じ計画を知っておきながら、自分とパリトのこの違いはなんなのだと、白は考える。そして結論として、自己中心的な人間か、協調性があるか、その違いだと察した。今苦労をさせられているのは、自らの召喚者が前者であるからだと、理解したのだ。
だが、白は知っている。マテルは協調性はないのかもしれないが、思いやりはそこそこにあるのだと。そんな自身の考えを証明するかのように、白はマテルの頭の上へと移動する。もしかしたらその行動には、パリトの方が高い位置にいるのが気に食わないから、という気持ちが含まれていたのかもしれないが、それでも結果は変わらなかっただろう。
マテルは白が構ってほしいから頭の上に来たと考えたか、パリトの前で白を撫でたのだ。
自分の考えが正しかったと確認できた白は、何も言わず満足気に身体を伸ばした。その様子を自慢されたと捉えたパリトは、悔しくゴネットの頭に噛みついた。勿論甘噛みだ。
そんな光景が白には面白く映ったのだろう。ついつい笑ってしまった。
「ふっ」
「あぁああーッ! ゴネット! ほら撫でろ! 腹見せてんだろうが! 服従のポーズじゃねぇか! 撫でろよぉー!」
こんなやり取りがあったなんて露程も知らないゴネット。片腕にパリトを抱えて、なんで噛まれたんだと困惑しながら相手をする姿は、やはりマテルから鈍感系男子と呼ばれるに恥じない様であった。
町の外、日が顔を出すような時間帯、マテルが背負うリュックサックの上で眠っていた白は、うるさい雑談を前に覚醒した。寝不足の体を癒すための睡眠は、最初と同じく自然覚醒ではない形で終わりを迎えたのだ。
「多少ましになったけど、まだ気だるいなぁ」
プルプルと体を振動させて白は僅かな疲れを吹き飛ばす。人間でいう背伸びのようなものだ。
「白、水筒取って」
マテルの要望に、白は雪崩れるようにして、隙間からリュックサックの中へと潜り込んだ。骨があるわけでもなし、軟体動物以上に自由自在に体を動かし、白は言われた水筒の下へと辿り着く。それから簡単に体を巻き付けて、バネを伸ばしたかのような形で白は水筒を上へと持ち上げた。
「寝起き早々大変そうだなー」
「君は撫でられていてご満悦って感じかな?」
水筒を渡し終えた白は、再びリュックサックの上へと移動する。するとそこへ横からパリトが声を掛けてきた。ゴネットの肩にだらしなく垂れ掛かり、その背を撫でられていたパリトは伸びきった声をしている。
「そうなんだよー。ゴネットのやつ、ようやく俺を撫でるようになってよぉ。ここまで来るのに苦労したぜ」
「それは良かったね。これ以上噛まれないで済むって君の召喚者も喜ぶんじゃない?」
「あぁ、そうかもなぁ」
およそ話を聞いていない。白はパリトの上機嫌な今に何を言っても無駄だと判断し、会話はそれで終わった。
パリトが寛いでいるのだから、自分ものんびり景色を楽しもうかと、白はぼんやり考える。だが、落ち着いた空気はゴネットの焦る声色で瓦解した。
「ゴネッ、ゴネットォ、あんまり回るな。酔う、酔うから止め……うぷ」
「何かいるね。というか大丈夫? パリト?」
前肢で口元を押さえるパリトは、気分を悪そうにしてその両翼を下げていた。そして、ゴネットは己の従魔の名前を叫ぶ。要するにパリトの出番というわけだ。
「え? 何? 今行かなきゃ駄目?」
「明らかにそうでしょ。ほら、召喚者守らなきゃ」
「くそっ、後で散々撫で回させてやるッ!」
そう吐き捨てたパリトは飛ぶ元気もないようで、滑るように落ちていった。
周囲からは何かが這う音が鳴り響く。まるで円を描くようにして近づいてくるそれに、白達はどこから来ても対処できるように気を配る。
やがて音の正体が姿を現した。どこまでも平らな蛇の魔物。それが最初にゴネットに迫ろうと近づいたものだから、パリトは睨みを効かせた。いわゆる捕食者の目だ。
蛇の魔物からすれば、生態系ピラミッドの絶対的頂点と遭遇した。そんなことを今更ながらに察して、慌てて急ブレーキを掛けた。それ以上近づきたくなかったから、すぐに収まらなかった勢いは体を持ち上げて上へと逃がしたのだろう。結果、マテルらを見下ろす形となってしまった。
この蛇の魔物は、最近平原の王者として君臨していた。ただの動物も、他の魔物も、この蛇が飲み込んだ。ここら付近の頂点にまで登り詰めた個体だ。今はもう、パリトの存在で頂点ではなくなったと蛇も理解している。
だからそれはプライドだったのだろう。ゴネットにはパリトがいる。ならば、そうではない方でも腹に納めなければ無様に逃げるだけで終わるのだ。それが我慢ならない蛇は、隣にいるマテルへとにじり寄る。すぐに食いつかなかったのはパリトが怖かったからだ。
「こっちに来たら食べるよ?」
マテルの影から、半分身を乗り出して白は姿を見せる。白はパリトと違い、器用ではない。相手を殺す方法なんて溶かして食べるくらいしか手段がなかった。
この魔物の肉はマテルらの食糧として使いたいというのが白の考えである。ならば溶かして自ら食べてしまってはいけないだろうと、ご丁寧にも忠告をしたのだ。
ここまできて、蛇は察することができた。ゴネットに近づけば情け容赦無く殺される。マテルに近づけば本当に自分は食われてしまう。
襲う前までは腹の足しになるかと蛇が考えていた小さきそれらは、あまりにも恐ろしい怪物であった。しかも片方は蛇を逃がさんと少しずつ歩みを進めている。今まで獲物を恐れさせていたその長い巨体では逃げ切ることも到底不可能な話だろう。もう笑うしかない。
「お前がいなきゃよぉ、俺振り回されなかったよなぁ? 撫でられることも中断されなかったよなぁ?」
蛇はパリトの言葉を理解している。意味は通じている。しかし、意味が分からないと困惑をしていた。なぜそんな理由で殺されなければならないと、目の前の理不尽に恐れを抱く。
「何よりも、てめぇゴネットに手ぇ出そうとしたよなぁッ!」
声を荒立てて、パリトは蛇に唾を吐く。それは勢いよく飛ばされて、丁度蛇の眼球に狙いを定められていた。
単なる唾。しかし、蛇の魔物はそれを避けなければいけないと反射的に思う。蛇の中には毒を飛ばすものもいる。この平原にもかつてはいた。だから蛇の魔物もそれを知っていて、それでも対応に遅れたのは唾が吹かれる炎に隠されていたからだろう。
目に入るのは止まぬ激痛。蛇に手などないのだから、抉り続けるような痛みを押さえることもできない。先程まで見えていた景色も、蛇はもう見えないでいた。
そして痛みにも不条理にも悶えた挙げ句、追い撃ちをくらって終了。身体中に回ったそれが蛇の命を断ったのだ。
「よしっ! ざまぁねぇや!」
「あぁーあ、それ毒が回って食べられなくなってない? どうするのパリト」
「毒? 今度から使わなければ良いだけだろ? ほらゴネット! 褒美として撫で回せ!」
はしゃいだ犬のように駆け、ゴネットに飛びつくパリト。その要望が伝わらないが故に、もう一度ゴネットが噛まれたのは御愛嬌というやつだ。
「……僕も何かできたらいいんだけどね」
そんな様子を少し羨ましそうに眺める白は、ただ小さく悔しさを口にした。
ジェシカは別に誤字とかではないです。はい。
マテルが嘘を言っていた訳でもないです。
今回はただ知らない秘密って色々あるよねって話。
あと凄い今更なんですが、評価をつけてくれた人が現在一人いるんです。
本当にありがとうございます! と私はその人に言いたい。
いやほんと遅れてごめんね。言うタイミング忘れてた。




