友の旅立つ理由
さぁ、第二章の始まりだ!
そして! GW終わったから更新頻度が落ちそうだ!
まぁやれるだけやるけど。
「ちなみにさ、ゴネット。最初はどこに行くつもりなの?」
土と雑草を踏み締めながら、僕はゴネットに質問をする。草食動物が定期的に食べているからか、草丈は然程高くなく、歩く邪魔にはならなかった。
地図を開き、方位磁石と見比べて進む道を確認をするゴネットは、僕の前を進みながら簡潔に答える。
「俺らの国の王都」
王都、王様の住んでいる城がある都。歴史の授業で聞いた話では、僕らの町から休まず徒歩五日で辿り着ける場所にあるらしい。結構近い。
馬車を使えば早いのだけれども、ただの馬では魔物を怖がるから、魔物と対峙したときに馬車が暴走するかもしれない。だから使えない。
運搬系の従魔を使った、人を運ぶ仕事を生業としている人もいるけど、やっぱり時間短縮かつ、道中の危険から身を守ってもらうということで高くつく。僕にはそんなお金はないし、そもそも一般人が気軽に手を出せる金額じゃないから頼れない。そういった仕事の客層は弱いお金持ちがターゲットだからだ。
そんなわけで僕らはやむを得ず、己の足を動かして前へと進んでいた。この調子で途中休憩も考慮すれば、早くて六日で辿り着けることだろう。
『王都フィシアム』
城郭都市として二百年の歴史を持つ僕らの国の中心地。ここを起点として放射状に町が造られていき、今のフィシアム王国が成立していったと聞く。まぁ、放射状とは言っても地形や魔物の群生地帯を避けて造られていったから、大雑把な地図でも町が並ばずに点在していることが見て分かる。
「王都かぁ、じゃああれは見てみたいよね。四騎士の塔!」
このフィシアム王国には世界的にも有名なものがある。それは魔物から王都を守るために囲われた外壁、その四隅に鎮座する塔の存在だ。
俗に『四騎士の塔』と呼ばれるその四つの塔には、それぞれ優秀な従魔を持つ騎士が一人ずつ割り当てられており、外の魔物から王都を守護する任を務めている。
要するに、四方どこから何が攻めてこようと対応できる防衛体制が敷かれているのだ。また四騎士の塔を担当する騎士の従魔は全てがドラゴン並、もしくはそれ以上の力を有していると聞く。というかそうじゃないと委任されないらしい。
四騎士の塔を受け持つのに地位は要らず、ただ守る力のみが求められる。だからこれまでの歴史の中で、塔を担当する者が王位継承権のない王子や王女と一般人だったりと、本来であれば見ることのできない組み合わせが生まれることがある。これは有名な話だけれど、四騎士の仕事を全うし、国を危機から守り続けた一般人が王女に見初められて結婚、なんてものもあった。
「どっちかと言うと俺は塔より四騎士を見てみたいけどな」
「あー、それを言うなら僕は四騎士の従魔の方に興味があるなぁ」
伝説にも数々とその名を刻んだドラゴンの従魔。とはいえ従魔も魔物と同じように、姿形に特定の法則などはなく、様々な容姿をしていて一概にドラゴンと言っても幅は広い。蛇に羽が生えて火でも吹けば、それはドラゴンだという曖昧な判断しか現在はないけれど、大抵は爬虫類のような見た目で強力ならそれを人はドラゴンと呼ぶ。
だからゴネットの従魔のような、伝承に残されているドラゴンらしいドラゴンは珍しかったりする。
まぁドラゴンは色々と名を轟かせてはいるが、従魔の種類の中で最強というわけではない。勿論弱いと言うつもりも毛頭ないが。
その証拠にドラゴンは強さの指標になったりするし、強さも歴代で安定した上位種として知られている。けれど力が安定しているが故に、何かに特化した従魔には一歩劣る。ドラゴンとはそんな存在だ。
だからある意味ドラゴンよりも強い従魔は希少価値があると言えるし、その召喚者を囲えば箔がつくとお金持ちがこぞって雇おうとしたりする。
確か最近だとドルデモルとかいう雷甲虫の召喚者が護衛会社に雇われたって新聞で騒がれてたなぁ。その甲殻はドラゴンの攻撃をも跳ね返し、体内に渦巻く雷撃は一瞬にして魔物を塵とする。だったっけ。
雇用戦争の一週間前から新聞でそんな謳い文句を並べて紙面にでかでかと飾られていた。戦闘実績も各方面の有力者が保証していて、報道陣はお祭り騒ぎで見ているだけでも面白かった。
だからそんな色々な方面が強力な従魔と召喚者を雇おうとしている中、王都フィシアムだけで四人も雇うのだから僕は興味を持つのだ。ドラゴン以上の従魔が四匹、いったいどんな従魔なんだろうって。
「あ、ところで話は変わるけど、ゴネットはなんであんなにコソコソと家を出てたの?」
「いやいやお前、何でそんな話になるんだよ」
さっきまでの会話では止めなかった足を、わざわざ立ち止まってゴネットは振り返ってきた。その顔はあまりの脈絡の無さに呆れているようで、見ようによっては疲れている風にも見える。
残念なことに早朝叩き起こされた白は僕のリュックの上で眠ってしまい、話し掛けても意味がなくなってしまった。だから僕は暇をしないようにこうして会話をしようと内容を考えていた。そしてなぜこんな話になったかと言えば。
「だって王都まで遠いし、気にならなかったわけじゃなかったし」
「はぁ、もうマテルに見られたのが失敗だったって納得するけど。話さなきゃ駄目か?」
「うーん、駄目って言うほど気になってはないんだよね。でもなぁ」
ゴネットは再び歩き出して、僕は腕を組んで考えながら前へと進む。
それで何歩目かにうーんうーんと僕が唸っている最中、ついにゴネットが折れた。
「分かったよ! 話すからそのうんうん唸るの止めろうっさい!」
うんうんじゃなくてうーんうーんなんだけどね、って突っ込みは野暮かな? やぶ蛇かな? もしかして突っ込み待ち?
と、少し歩いて大きくため息を吐くゴネットは、自分の肩に乗っかってるドラゴンの頭を撫でてながら語り始める。
「俺の親は旅立ちに反対してたんだよ」
聞くに、僕達が昔、旅の構想というか、妄想をしていた数年前のこと。彼は両親の前で外へと旅立つ話をしてしまったらしい。将来の仕事は何をしたいだとか、そんな軽々しい話題のように話したそうだ。
当時の僕達は当然子供で、所詮は子供の戯れ言だと僕の親は本気で旅立ちを反対しなかった。勿論肯定なんてされてないから今でも止めとけと止められるのは明らかだけど、それでもおおらかな対応だったと僕は思う。
でもその話を聞いて、彼の父親は怒鳴り付けたらしい。子供の話を本気で否定したのだ。
「後継ぎは俺しかいないからって、怒ってた。だからさ、気になったんだよ。俺が突然いなくなったら、親父は養子でも取るんじゃないかって。そう思えてさ」
居なければならない存在は、ゴネットではなく後継ぎとなる子供。つまり彼は子供ながらにそんな考えに至ってしまって、分からなくなったらしい。自分が、自分自身が本当に必要とされているのかということを。
「だからまぁ、こっそり町を出たのも、旅立つ最後の切っ掛けになったのも、拗ねた子供の我が儘みたいな理由なんだ」
「へぇ」
「一応礼を言っとくけど、町を出るための踏ん切りがついたのはマテルのお陰なんだぞ?」
「え? 何で僕?」
「知り合いが道中にいるってだけで普通に精神の負担が違うからな。お前は違うんだろうけど」
そう言えばゴネット、成人式の日になんか言っていたね。知り合いが一人でもいれば~って。
ゴネットは昔から変なところで繊細だからね。慣れないものに色んな感情を抱え込み過ぎて一杯一杯になっちゃって。
あれ? もしかして今、僕軽やかに馬鹿にされた? それ、受け流しが上手って意味で、僕が無神経って言いたいわけじゃないよね?
「俺だけだったらたぶん、柵の前で引き返していただろうからさ。うん、改めてありがとうなマテル」
「はいはいどういたしまして」
案外面白味のない真剣な理由に、僕は茶化せなくて適当な言葉を口にした。それをいつものように「お? 照れてるのか?」なんて返し玉を投げてくるのだから、本当にゴネットの立ち直る早さは羨ましくなるよ。いや、あんまり本気で落ち込むことないんだけどね、僕。
今、次話書いてるんだけどさ、一日千文字ちょいが限界っぽい?
だから目安として三日に一話更新になりそう。




