およそ彼方の────から
前半ゴチャゴチャしています。
取り敢えず、ご覧の小説は『相棒のスライムを連れて』で合っています。
分かりづらさを分かりやすく書いたつもりですが、よろしければ一緒に混乱してやってください。
それと、累計PV数2000突破しました!
ありがとうございます!
では本編どうぞ!
人は目で見た時に限り、物を色で識別する。
別々の色の物が、そういった配色の一つではなく、隣り合っている個々として見える場合。それは影からなる色合いが要因となる。
ならば、ここにはおよそ何もないと言えるのではないだろうかと、僕は思うのだ。
真っ暗な、黒一色でしかない背景が僕の視覚に映る。遥か彼方には無数に輝く光があるけれど、気が遠くなるほどに手が届かない。
唯一、すぐ側に、青々とした球体がある。あまりにも懐かしく、あまりにも美しい。ここに逃げ込む以前は見たことすらなかったけれど、それが故郷だと理解はできる。
故郷に帰りたいと、僕は切に願う。けれど、身体に力が入らない。あの光達に比べれば、比べようもなく近いのに、眺めることしか叶わない。
本体は未だ、核として眠っている。久しぶりに目覚めた僕は、故郷へと手を伸ばした。いつもの癖ではあるが、実際に体の一部が動かせるのだと気づいたのは、数秒遅れてのことだった。どうやらそれができる程度には、回復できていたらしい。
伸ばした僕の手は限界まで伸びきって、為すがままに千切れる。今はこうすることでしか帰れない。僕は僕と分離する。
すべからく、生命体の到達でき得なかったこの地から、僕は勢いのままに離れて行く。
ゆっくりと、確実に故郷へ近づくに連れて、僕はいつかの記憶をふと思い出した。従魔学だかを専攻していた研究者の言葉。確か、共鳴という単語をあいつは使ってけれど、今になってなるほどと納得がいった。
記憶が混在しそうだけれど、この程度は問題ない。共鳴する条件からしても、おそらくはマテルも──。
「ん? 急ぎすぎたかな。大丈夫かい?」
はたとショーンに声を掛けられて、僕は遺跡の中にいるのだということを思い出す。
宙に浮き、浮遊しながらもそれ自体が光源として機能する割れた欠片の鏡。それらが七つ、ショーンの周りを囲んでいて、暗闇の中で異彩を放っている。
だが、間違えてもそれは星だとか、無数にあると感じるものではない。しかしなぜか、僕は先程までそうだと信じるしかない光景を見ていたように思えてならない。
「あー、うん。でも少し休憩したいな」
「勿論いいとも。僕は区切りをつけるのが苦手だから、僕の休息も君に合わせよう」
ありがたい言葉に僕は感謝する。
あの九つの分かれ道から先へ進み、まだ半時間も経っていない。移動だってずっと警戒しながらの歩きだ。肉体的疲労はほぼなかった。
けれど正直な話、耐え難い時間を僕は感じていた。いや、この言葉だと語弊がある。決してショーンと一緒にいることが、ではないし、警戒することに張り詰めすぎたわけでもない。
耐え難いのは途方もない時間量そのものだ。実際はそんなもの体験した覚えもないのに、ついさっき、一瞬の内とも言える時に、僕はそれを知ってしまった。
ある日を境に、ずっと動けないまま意識だけはあるような状態。望みからあと一歩足りないもどかしさと、その一歩を無慈悲に現した年月。それらの上に成り立つ、文字通りの孤独。
つい、ため息を吐く。身体的にはまだ元気が残っているというのに、精神が疲弊して言うことを聞かない。
暗闇の中、通路の壁に背中をつけて座り込む。
(何なんだろう……この記憶)
決して僕が体験したことでも、況してや見た光景でもない。なのにそれは鮮明に頭の中にある。僕が見たし、聞いて身をもって知っていると今も実感している。他に言い様のない不思議で異様な感覚だ。
でも知ったのはそれだけ。夜空のような暗黒に、夜空よりも輝かしく見えた星々。最後は遠いような近いような球体に手を伸ばして……。
寂しい気持ちとか、どこか吹っ切れたような達観した感情も、そんな記憶に同封されていた。まるで僕がそう思ったように具体的な感覚だったけれど、そもそもが別人のような記憶でもあった。
僕に似た誰かの記憶。そんな想像がふと頭に浮かぶ。幻覚、幻聴と片付けるには安易過ぎる気がするが、同時にそうとしか思えない現象でもあった。ので間を取って原理不明の現象と予測する。
まぁ、まさか今朝食べたパンに幻覚作用が? なんて的外れな答えを出すよりかは良いだろう。もしこれが当たっていたら今頃王都は軽く騒ぎになっているはずだ。……的外れだよね?
ともかく、理解不能な出来事の方が夢があっていい。分からないから面白い、それでいいよね。うん、ショーンの様子からしてもこの辺りに幻覚作用のあるガスが充満していたとか、そういったものでもなさそうだし、他に考えようがないから、この話は終わりにしよう。
こうして考えてみると、休憩には充分な時間を取ることができたようで、心持ちは軽い。単純に悩まないようにしたから精神への負担が減ったとも言えるけど、言わぬが花だろう。
「よし、そろそろ行けるよ」
「分かった。じゃあ行こうか」
僕は立ち上がり、ショーンの方へと向く。光源がそちらしかないのだから、見る方向など実質一択だ。
再びショーンを先頭に歩き出した僕らは、確かに複数に分かれ始めた道を選びながら、綱を消費し続けた。
道中は魔物と出会うことがなく、たまに飛び込んでくる手のひらほどの羽虫をショーンが切り伏せるだけだった。
そうして最初に見たあの蜘蛛が未だ一番大きかった記憶のまま、探索は順調に進んでいく。
綱はショーンが持っていて、束になっていたそれも、目に見えて残り僅かとなった頃。僕は両手に白を抱えた状態で後をついていっていたわけだけど、どうやら道がなくなった。
「どうする? この先へ行くかい?」
ショーンの言うように、この先はある。ここで通路が終わり、代わりとして扉が存在しているからだ。調査団が設置したものではない、床や壁の材質と一致しているように見受けられる大昔の扉。威圧感もなければ、厳重そうにも見えないけれど、一応は部屋への境である。
「うん」
僕は頷き、やはりショーンが先行する。危険を押しつけているようで悪いけれど、大抵の創作物はこういうとき、後方の人間から姿を消す。別に現実でそうなるとは思ってもいないけど、どこにいたって危険性は孕んでいるのだ。後か先かの違いだけだ。
「おっと、切りが良いじゃないか」
丁度、ショーンが部屋に入ったところで、綱の先端だけがショーンの手元に残った。今回の探索はここまでのようだ。なので、今回はこの部屋を一通り見て帰ることとなる。
ここは部屋と言っても今まで見てきた分かれ道の部屋ほど大きくはなかった。精々が宿の一人部屋のような小ぢんまりとした空間であった。先には文字通り道がなく、ここに至るまでの通路はこの部屋で行き止まりとなるわけだ。ショーンが切りが良いと言ったのもそれが理由だろう。
部屋は埃っぽく息がしづらかった。ショーンが最初にズカズカと入っていくものだから、床に溜まっていた砂埃などが舞ったのだろう。呼吸に難が出るほどではないが、つい咳き込んでしまう程度には辛かった。
この部屋も一応は壁画があった。部屋がそんなに広くないことが幸いし、鏡の光が行き届いているから、僕は苦労なくそれを見ることが叶う。
だが、絵ではない。独特な形や規則的な順列からして、おそらくは文字だ。見たことのない形だから、たぶん廃れてしまった文明の言語だと思うのだけど、なんて書いてあるのかはほとほと僕には分からなかった。
「ほう、ほうほう」
フクロウかな?
いや、ショーンなんだけど、何やら何か見つけたらしい。僕は壁の方を観察していたから、ショーンの方はまだ見ていなかった。
チラリと後ろから覗き込めば、何やら石造りの机の引き出しから、本や当時使われていたであろうペン。それに色褪せた首飾りのようなものまで机上に出して観察していた。
その表情からして、一回目である今回の探索は価値あるものを得ることができたようだと、僕は察することができた。
十一月ですね。
ハロウィン……終わったんですよね。
ついこの間古戦場走った気がしたんだけどなぁ。
二ヶ月が早いなぁ。




