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相棒のスライムを連れて  作者: 野生のスライム
旅をする遺跡
40/43

~新たな舞台の予告状~

前半は調査団員

後半は国王バルラルド

物語は少しずつ進んでいくのです

 


 これはおよそ、マテルとショーンが調査団とは反対の道へと進んでいった頃合いの出来事だ。


 王都フィシアムに接近しつつある移動遺跡の屋上、仮設住宅とも呼べそうな調査団の拠点。その屋外にて、休息を取っていた一人の男がとあるものに気づき、おもむろに拾い上げた。


「なんだこりゃ?」


 手にした物は見た目としては封筒であった。拳大の石が上に置かれており、強風に持っていかれないようにされていた。それはまず間違いなく、誰かが意図して置いたものだろう証拠である。

 また、綱の受け渡しは地上で行われているので、遺跡の頂上であるここにはダァシャイヤス以外の部外者が立ち入ることはない。つまりは調査団の誰かが残していったものなのだろう。

 しかし男は、仲間内がこのようなものを置き残す性格ではないことを知っている。ダァシャイヤスもこれまでの調査協力で直接話す性格だと認識していた。なので全く検討がついていない状態なのだが、万が一仲間の誰かが置いていったものであったとしても、男はそれを開くのに戸惑うような人間ではなかった。


 彼の好奇心により取り出されたその中身は、遺跡上の拠点にあるものとしては場違いな、調査書とは毛色の違う便箋であった。そこにはただ簡潔に『予告状』とだけ記されている。

 誰が、何の目的で、何を予告するのか、明記されていないことが嘘臭さを漂わす。事実、男も「これは誰かのイタズラだろう」と考えた。


 休憩もほどほどに、拠点内に戻った男は作業を進める仲間達に問い掛ける。


「これ、誰が置いたんだ? やるにしてももっと詳しく書かねーと何が何だか分からねーぞ」


 だが、返ってくる反応は皆一様であり、誰一人として困惑の色を示した。中には自分とは関係ないとばかりに、便箋を一瞥した後、切り替えて遺跡の記録纏めを再開する者もいる。

 約一名、目の下に隈のある者が従魔を抱き締めたまま横になっていたが、彼にはこんなことをする暇は与えられていない。ほとんどの者に監視される形で、半ば強制的に休みを取らされているからだ。


「本当に、心当たりはないのか?」


 念押しで聞き返すも、やはり答えは変わることがなく、男自身も困惑の気持ちを持ち始める。


「じゃあ……誰が残していったんだ?」


 男が自然と目を落とす先には、何度見ようと変わることのない『予告状』だけの文字があった。どう見ようとそれ以上の言葉はないはずなのに、男はそれの答えを探してしまう。




 場を換え、人を換え、王都フィシアムの中心地。

 王城、バルラルド・フィシアムの執務室、兼私室。いつものように送られてくる他国の重鎮や自国の重要人物からの便り、それらに目を通す国王バルラルドは疲れたように目を瞑る。

 別に、堅苦しい前置きを省き疲れたわけではない。立場上仕方ないとバルラルドは割り切っているし、それはもう日頃から無意識にできるので疲労感などはない。


「捕まえてもいいですか?」


 だが、実の娘である彼女、フィシアム王国第二王女アーニスの語りようが、バルラルドにとっては手紙などよりも余程難解なものであり、頭を悩ます一因であった。


「話に前後がないぞ」

「では最初に、一昨日盗まれた『タマ・ネギ』が見つかりました」


 国宝の一つとして数えられ、民間に閲覧を許された名画。稀代の天才絵師にして、三代目フィシアム国王が描いたとされるそれは、文字通りの国宝。

 数多くの賊に襲われるも、その全てを必ず撃退、逮捕するルールル美術館への信頼の証として、唯一国から寄贈された『タマ・ネギ』。

 それが盗まれたという事実は、ルールル美術館への信頼が落ちるよりも、怪盗ホートスの存在を国中に広める効果の方が強かった。現地のセパリヌ住民だけではなく、フィシアム王国全体を驚愕させたのだ。


 そんな『タマ・ネギ』が、どうやら見つかったとアーニスは言う。


「そうか、怪盗などと名乗っても、所詮は腕のいい泥棒だったわけか。では、ホートスを捕まえたら知らせてくれ」


 庶民の娯楽には明るくありたいと考えるバルラルドは、『パッチワーク』の劇こそ見たことはないが、その書籍である『イシサヤなる怪盗』は読み込んでいた。

 故に、創作の域を出て、現実世界に怪盗を名乗る輩が現れたと聞いたバルラルドは、密かに興味を持ったのだ。無論、初代国王と限りなく似ている手配書も知ってはいるが、これは単なる偶然だろうと考える。奇天烈な答えを出すよりも、他人の空似であると考えた方が現実的だ。

 捕まえた暁には、是非ともその初代国王に似た顔と対談し、暇潰しとして怪盗を名乗った理由でも聞くかとバルラルドは考える。


「? いいえ、ホートスは未だ影すら掴めません。『タマ・ネギ』が見つかっただけです」


 しかし、不思議そうにアーニスは首を傾げる。

 バルラルドはホートスを捕まえる準備ができたから「捕まえてもいいか」と聞かれたのだと考えたわけだが、アーニスは『タマ・ネギ』が見つかったとは言っても、「ホートスが見つかった」とは述べていない。

 アーニスの言葉足らずな説明から足りない分を汲み取ろうとして、バルラルドは深読みをしてしまったわけだ。


「どういうことだ?」

「昨夜、『タマ・ネギ』が闇市でオークションに掛けられているのを発見しました」

「オっ……それで?」


 仮にも国宝が、裏でオークションに掛けられていたという話に驚きを隠せなかったバルラルドだが、アーニスの様子からまだ続きがあるのだろうと判断し、個人的な感想を口にするのは後にした。


「第二兄様が側付きに手駒を使わせて購入していましたので、捕まえてもいいですか?」


 だが、その後に語られた内容の方がバルラルドにとって衝撃は大きなものだった。咄嗟に声が出ないほどには重みのあるそれに、バルラルドはなんとか声を絞り出す。


「あの馬鹿息子……」


 もはやバルラルドにそれ以外の言葉はなく、迅速に処理する場合の対応を考えるために痛む頭を抱えるしかなかった。間違えても庇うような選択肢を持たないのは、彼自身が王族であることを自覚しているためである。


 盗品を盗品として理解している上で、私的な理由で購入するのは当然法に触れる。そして国の象徴である王族から、しかも王位継承権のある者から犯罪者が出るなど大問題でしかない。

 当人に問えば否定するだろうし、捜索の末、物的証拠である『タマ・ネギ』が出てくれば「捜査のために購入し、取り返したのだ」と苦し紛れの言い訳をするだろうが、そこは捕まえてもいいか事前に聞いてくるアーニスの方が上手となる。


「『おお、間違いない! ついにあの『タマ・ネギ』が私の物に! ハハハッ、ホートス様様だな!』」


 馬鹿としか言いようがない。恐らくは厳重な警備でもさせていたか、人がいないから大丈夫だとでも考えたのか。上擦った声からして余程嬉しかったようだ。高揚した気分でそこまで気が回らなかったというのも十二分にあり得る。

 おそらく、まさかピンポイントで自分に一匹しかいないアーニスの従魔、リプレインを宛がわれるなどとは露程も思っていなかったのだろう。


「捕まえるのは少し待ってくれ。最低限、公爵に落として継承権を剥奪する形で取り潰す」

「分かりました。では私は外堀を埋めてきますね」


 仮にだが、アーニスがリプレインの証拠を提出しなければ、第二王子が捕まることはない。探せばどうなるかは現状分からないが、証拠らしい証拠はリプレインだけなのだ。

 だから、第二王子が捜査のために『タマ・ネギ』を購入し、取り返したと宣言すれば、それは犯罪ではなくなる。第二王子の手から『タマ・ネギ』は離れるわけだが、汚名を被るよりはマシだと判断するはずである。


 バルラルドとしても好きで息子を犯罪者にしたいわけではないが、如何せん息子が敵にしたのはアーニスだ。是が非でも正攻法(・・・)で王座を取ろうとするアーニスならば、バルラルドが息子を庇おうするとバルラルドごと汚名を地に轟かせるやり方を取ることだろう。


 その後の政治をアーニスが指揮するのであればバルラルドも国の行く末を案じることはないが、それよりも自分のせいで王家の信頼に泥を塗ることは避けたかったのだ。

 だからこそ、今回の第二王子を粛々と処理しようと即決し、話を聞いて始めにその対応を考えたのである。


「怪盗ホートスか……」


 未だ影すら掴めないとアーニスに言わしめる人物。自分の息子が全面的に悪いとはいえ、その切っ掛けを作ったのはホートスである。今後忙しくなるだろうバルラルドはそんな怪盗に一言文句を言いたかった。勿論、この場で何を言ったところで、文句以上の価値は生まれないのだが。


本文書いてるときは前書きと後書きで何を書こうか思いつくに、いざ本文書き終わってこっちに来ると何書こうとしたのか分からなくなる現象に今襲われています。

何だっけ?

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