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相棒のスライムを連れて  作者: 野生のスライム
旅をする遺跡
39/43

二度目の分岐

グラブルにて

ついにニーア加入!

そして久遠を取り忘れてて絶賛後悔中!

後悔先に立たずってやつですね!

以上!


 


 肩に届くか届かないか程度に切り揃えられた茶髪の女の子。

 遺跡の中でも動きやすそうな軽装に、胸当てなどで最低限の防具を整えている格好。僕が持っているナイフよりも幅のある短剣を手に持つ彼女は、息絶えた蜘蛛を前にうなだれていた。


 その理由はおそらく、ダァシャイヤスさんが蜘蛛を倒してしまったからだろう。

 魔物に関わらず、狩りを行う場合には最後に倒した者が獲物を獲得する権利がある。これは例えば、大量の魔物を引き連れて他人に倒させ、「これは俺が戦っていた獲物だから横取りをするな」と主張する者を発生させないためにある。聞くだけで馬鹿馬鹿しい話だけれど、明確なルールが設けられる前はそんな人がいたそうだ。

 しかし、これは一般的な決まり事ではあるが、法律ではない。理性ある人間として、これくらいは守ろうというマナーである。ので、たまに新聞紙で揉め事になる話を見たりする。

 それに、気づかない状態の悪意ない横取りや自衛のために仕方なく、といった形で横取りしてしまう場合もあるので、甲乙つけがたい話だ。まぁ、大抵はそういったとき、当人同士の示談で済ませると聞く。


 今回はそんな意図しない横取りとなった形なのだろう。少し過程が絡まっているけれど。

 まず、蜘蛛をショーンが逃がしてしまい、それをそこの彼女が発見。戦闘となり、これまた逃がしてしまう。だからきっと、蜘蛛は逃げるのを諦めたのではなく、彼女から逃げようとしていたのだろう。結果挟み撃ちになったわけだが。

 で、ショーンから逃げ、そこの彼女からも逃げることができた蜘蛛は、ダァシャイヤスさんが討伐したというわけだ。この場合、倒した蜘蛛の獲得権はショーンでも彼女でもなく、ダァシャイヤスさんにある。

 だから蜘蛛を今晩のおかずにしようと追いかけてきた彼女は、落ち込んでいるのだろう。手に入らなかったから。


「そう落ち込むなや嬢ちゃん。別に俺はいらねぇからよ。ショーンもいらねぇよな?」

「くれるんなら貰うよ?」

「やらねぇよ馬鹿」


 勿論僕もいらないというか、貰える立場ではないので断る。僕に関してはこの蜘蛛に関わってもいないからね。


「というわけだ。持っていきな」


 権利を譲渡するのであれば、そこの蜘蛛はもう彼女のものだ。例え第一発見者がショーンであったとしても、逃げられたのであれば、当人の技量不足ということになる。まぁ、ショーンの場合は壁画を守りながら戦わなければ仕留められたのかもしれないけれど、もう済んだ話だ。


「えっ!? くれるんですか! ありがとうございますっ!」


 驚きと共にバッと身を起こし、変わり身早く女の子はお礼を言う。

 そんな嬉しそうな表情を横に、ダァシャイヤスさんは「お互い気ぃつけてな」と別れの言葉を残し、奥へと進んでいくようだ。その傍ら、落ちていたというか、投げられていた石がコロコロと勝手に転がり、近づいてきたところをダァシャイヤスさんがひょいっと拾い上げた。やはり、あれはモガシャイヤスで間違いないだろう。

 そんな答え合わせをしながら、僕も蜘蛛と彼女の脇を抜け、ダァシャイヤスさんの後を追う。当然、その順序からショーンが僕の後ろにいるわけだけど、また目を離した隙にいなくなるのではと思い、ふと振り返る。

 すると、蜘蛛を嬉々として観察し、どう持ち帰ろうかと考えるあの女の子に、ショーンは目を向けているようだった。だが、それは一瞬でしかなく、すぐに僕はショーンと目が合った。


「ん? どうしたのかな?」

「ううん。何でも」


 声を掛けられるけれど、僕はそう答えるしかなかった。何かおかしいように感じる。けれど、その何かが僕には分からなかったからだ。

 きっと白なら知っている、いや気づいているのかもしれない。蜘蛛が討伐されたというのに、未だ変わらず落ち着きを(・・・・・)見せていない(・・・・・・)のだから、その対象は蜘蛛ではないはずなのだ。

 でも、それだけだ。僕にはそれしか分からない。けれど、何らかの危害があるのなら、危険を知らせるなど白としても方法はあるだろう。


 だからよく分からない。分からないから、先へ進もうと思った。この場はどうにも居心地が悪いから、この場から離れようと。


(……あれ? どうしてそう思うんだろう)


 ここには間違いなく、今日初めて僕が会った人しかいない。ダァシャイヤスさんも、ショーンも、そしてそこの女の子も。それは断言できるし、初対面だからといって居心地が悪くなる僕ではない。蜘蛛も食べたくはないが、見たくないほど嫌悪感はないし。

 こうして考えてみたって居心地悪く思う要素がないと思うのだけど、どうしようもなく僕はそう感じてしまう。


 理由はともあれ、僕はダァシャイヤスさんについていくべく、この場から離れた。

 ショーンは依然として僕を追い越すことはなく、けれどどこかへ行くこともなく、しっかりと足音が僕の後ろを追っていた。最初は一人で先行していたのに、どういった風の吹き回しだろうか。……ああいや、最初は僕が足を止めたからっていう理由な気がするから、関係ないか。


 とかくそうして僕らは、ダァシャイヤスさんの案内の下、二度目の分岐点へと辿り着く。その頃にはそわそわとしていた白も平然を取り戻し、寄る辺のない僕の心も落ち着きを得た。


「あっ、そうか」


 落ち着きを得て、冷静になった今、ふと気づく。

 何かおかしいと感じたあのときの気持ちの、その原因は実に簡単なものだった。ダァシャイヤスさんを見なければ、たぶんすぐ気づけたと思うほどに。


 あの子は従魔を連れていなかったのだ。ただそれだけの違和感。ダァシャイヤスさんも見た目からして従魔を連れていないように見えたけれど、実は懐に小さなモガシャイヤスがいる。

 だが、あの女の子はどうだろうか。僕はダァシャイヤスさんと同じように、あの子にも小さな従魔がいるのだろうと思い込んでいた。しかし、よくよく考えてみれば、蜘蛛との戦闘になった様子からして短剣しか握っていないのは不自然に思える。

 彼女はあの蜘蛛を今晩のおかず認定し、しかも他人に取られれば落ち込むような獲物として見ていた。ならば、全力を出さない理由がないのだ。

 僕が小さすぎる従魔を見つけられなかった可能性はあり得るが、もう確かめるにしたってあの子も帰っているだろうし、名前も知らない。


 取り敢えず、あのときの言い様のない気持ちは半分拭えた。たぶん今の僕は清々しい表情になっているだろう。あの居心地の悪さこそ説明しようがないが、分からないことは分からないのだ。

 だから時が経てば今のように閃くことだってあるさと、僕はそれを清々しさと一緒に呑み込んだ。


「さてと、ここから妙に入り組み始めるんだが、どうする?」


 どうやら内部構造が複雑化するのはここからだったようだ。

 一つ前の分岐点と同じように、部屋として成立する空間。しかし、違いとして前方と左右、それぞれに三つずつ。計九つの道が存在していた。

 道の入り口、その片隅にはブロック状の石に突き刺した金属製の棒のようなのがある。たいして高くはなく、頂点は僕の腰辺りに止まるが、頂点は輪のような形をしていて、穴があった。


「調査団は左の手前にある道を進んで、未だ突き当たりを確認していない。途中途中高頻度で分かれ道を発見したが、全て左を選択して進んでいる。調査団の見解としては、おそらくここの分岐のどれかと、もしくは全てと道が繋がっているってな話だ」

「なるほどね。じゃあその辺も確かめないといけないわけか」

「そうなるな。んでこれが迷い防止の綱だ。向こうの輪に結んで使え」


 幾重にも糸が絡まり合った頑丈そうな綱。ぐるぐるに束ねられたそれをダァシャイヤスさんはショーンに渡す。向こうの輪とは道の片隅に設置されているあれだろう。


「伸ばしきったら無理せず帰ってこい。綱の補給はいつでも受け付けてるからな」

「あの、事前に綱を複数貰えないんですか?」


 そうすれば行ったり来たりを繰り返さなくてもいいのではないか。僕はそう考えたのだけれど、意味は別にあるようだった。


「いや、各自一本だ。あれは定期的に報告に来させるためのものでもあるからな。じゃないと、こいつみたいな馬鹿が入り浸って死んだのかそうじゃないのか、こちらとしては区別がつけづらいんだ」


 なるほど、そういった意味があったのか。確かに帰らないといけない理由が頻繁にできれば、調査団としては事細かに報告を聞けるのだし、帰ってこなくなれば残った綱を辿って理由を知れる。調査団からしてみると僕が思ったよりも便利な代物のようだ。


「うーん、右に行こうかな?」


 それはそうと、ショーン。調査団とは正反対の道を選ぶのは些か挑戦的過ぎると思うんだ。だってその先、調査団も進んでないんだから真っ暗闇なんだよ。光源とか、どうするのだろう。

 そうして、あてはあるのかなとか考えている間に、ショーンは綱をきつく締めて堅結びを完成させた。ほどく気はないのか。












次回、視点変わる回

誰にしようかな

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