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相棒のスライムを連れて  作者: 野生のスライム
四騎士の塔
32/43

きっと多分三人目

ブクマが増え、PV数1000突破!

今度は総合評価100pt目指してレッツゴー!


あと、更新一週間空けたのは素直に謝り案件です。

鏡の前で前歯剥き出しで威嚇しながら「コラッた」って叱っときます。アローラの姿かどうかは決めてませんが。



 


 意外にも、あれから僕と彼との間では会話が盛り上がっていた。

 そして、聞くにどうやら彼は無職らしい。正確には今日、無職となるらしい。

 以前というか、今日までの職場は四年契約らしく、今日が丁度四年目なんだとか。再度契約することもできなくはないらしいが、それほど職場に未練はないそうなので、今日無職となる予定なのだそうだ。


「ちなみさ。君はどんな仕事をしてるんだい?」


 左手に持つフォークで燻製肉に刺しながら、彼は比較的整った口調で僕に質問をする。どうもお酒は飲み慣れているようで、それなりに飲んでいるのに酔った様子が窺えない。話し相手としては助かる限りだ。

 ともかく、僕はパンを片手に答えた。


「奇遇だけど、僕も無職なんだ。今日は職探しをする予定で」

「なるほど。確かに奇遇だ」


 フォークの先にある一口大の燻製肉を、彼は言葉の終わりに口へと運んだ。そして、残り少なくなっていたお酒を最後の一滴まで味わうと、言葉を続ける。


「そう言えば、お互いまだ名乗っていなかったな。名前も知らない仲なのに、会話が進むものだからつい忘れていた」


 僕も忘れていた。正直に言えば名前とか関係なく、話が楽しければそれでいいと考えていたのだけど、一度言われたら名乗るのが礼儀だろうか。

 最初こそ怪しいとか、怖いとか、思っていたけれど、会話をしてみると存外話しやすいことが分かった。だから今は、警戒心とかもそれなりになくなっている。


「では改めて、僕はショーンという。呼び方は呼び捨てでも渾名を作るでも構わない。友人は少ない方だが、君の態度が気に入った。良ければ友人になってはくれないかい?」

「うん、良いよ。僕はマテルって名前で、こっちは白って名前。よろしくね」


 確か、ショーンという名前自体は、フィシアム王国だとそれなりにありふれている名前だったはずだ。過去の英雄の名前からあやかっているんだったかな。学校にも何人かショーン君がいた覚えがある。同じ名前だから渾名で呼び分けられていて、羊が好きらしいから名前の頭に『ひつじの』とか、学年成績が七番目に良かったから『007の』とか。


 そこでプルプルと頭上の白から催促がくる。どうやらパンをくれとのことなので、一口分ちぎってあげた。パン粉は被りたくないから、しっかりと食べてほしい。


「……逢うべくして逢った、か」

「何がですか?」

「いやなに、僕の友人の言葉さ。偶然も過ぎれば必然だと言いたいらしい」


 はぁ、と僕は首を捻る。

 確かに人との縁は大切にするべきだ。それが必然だったと思えば、そこの繋がりはより強固なものになるような気がしないでもない。例を出すなら、恋人同士が糸と糸とで繋がっている、みたいな、そんなことなのだろう。つまり──。


「あっ」


 ──このタイミングで、ゴネットとトトが下りてきた姿を見つけたのも、一種の縁だったのかもしれない。


 取り敢えず僕は困った。ここには他にも大勢のお客さんがいるから、大声を出すわけにもいかない。ここのテーブルは一応まだ二人分、空いている席があるから座れるには座れる。けれどその場合、何も知らないショーンには断りを入れなければならないだろう。


「僕の友達がここに座るけど良い?」

「ん? マテルの友人か。僕は勿論良いとも。食事の場は多いほど賑やかだからね」


 よし、了承を確認したから呼ぶことにしよう。きっとゴネットは驚くだろうなぁ、僕は自分から友達を作ることはしないから。友人なんて片手で数えられる、それこそゴネットが把握している程度しかいない。

 だから今回、そんな僕に増えた新たな友人。例に漏れず相手から友人になってくれたけれど、故郷たるセパリヌ以外では初めてできた友人だ。なんだかんだ旅から抜けるゴネットは僕のことを心配していそうだし、ここらで一人でも交友関係を築くことができたと示した方が良いだろう。


(ショーンを利用してるみたいで悪いけれど、恋人のできた幼馴染み(ゴネット)を安心させるためにも、僕が頑張らないと……)


 そう考えていた。ショーンが友人になろうと言ってくれてから、そんなことを企んでいた。けれど、どうにも現実というものは、妄想通りにはならないらしい。


 僕は手を振って、二人に僕の居場所を教えた。ここが空いてるよ、と。それを最初に発見したのはゴネットで、手を振り返してくれた。

 そうなると、ゴネットの様子からも、トトが僕らに気がついた。気がついて、手を振り返そうとしたのだろう。片手を上げて、上げたまま硬直(・・)した。笑顔は引きつり、上げた手の指が心なしか下がっている。

 この反応は意外にも見覚えがあった。といってもあまりにも個人的な覚えだ。僕の母さんも台所でゴキブリを見ると、同じように硬直するといった類似性。下手に動くと刺激してしまうから、飛び掛かって来ないように、そっと後退するために、動かない。

 ついそれを連想してしまったトトの反応。いったい何を見たというのだろう。まさかゴキブリが? とも思い、見渡すが、いない。視線の先は間違いなく僕らの席だ。


 トトは手を下げて、ゴネットに何かを言うと、スタスタと一人でこちらへ歩いてくる。ゴネットは食堂へ注文しに行くようだ。

 やがて、席についたトトは口を開いた。


「何でここにいるのか聞きたいんだけど、良いよね? ショーン・ナコディ」


 小声だけれど僕らには聞こえるような声で、そして迫るように、トトはショーンに問い掛ける。

 意外も意外。まず僕は二人が知人であることに驚いた。穏健な雰囲気でないことは一目瞭然であり、トトを見て鼻で笑うショーンと、頬が痙攣してるのかといった様子のトト。そのどちらも僕の持つ二人の印象とは違ったのだ。まぁ、ショーンに関しては軽く会話をしただけだから、人と成りが不鮮明なので仕方ないのだけど。


「あぁ、良いともトト・リンメート。しかしね、一つ訂正してくれ。もう僕の名前はショーンだけだ」

「あれ? そうだっけ、ごめん。……んん? いや、今日一杯までだよね!?」

「実習も兼ねて、今は後継者に全部任せたんだ。守りも、名前もね」

「『名前もね』って教育も仕事の内だけど、それ丸投げでしょ。私が言えた義理じゃないけどさ!」


 何やら楽しそうに会話をしている。本人達はそう思っていなさそうだけれど。僕はパンを摘まみながら耳を傾けた。何の話をしているのだろうと。

 まぁ、おおよそ予想はついている。信じられない気持ちの方が強いけど。だってアーリさんにトトにって来て、ねぇ。本人は今日仕事を辞めるって言ってるから『元』が付くのだろうけど、それでも肩書きにはしては大きいものだ。

 でも信じられないとしても、トトの知り合いで、四年契約で、『ナコディ』の名前。もう決定的でしかない。


 フィシアム王国の四騎士の塔。その時々の担当者は細かく知らないけれど、受け継がれる四つの名前くらいは学校で習う。


『リンメート』

『ヘンス』

『ナコディ』

『ソディ』


 この四つだ。そして、僕はその内の三人と知り合った。普通は信じられないし、僕が他人だったら信じない。四騎士になる人はそれなりに適性がないとなれないのだから、毎年一人入れ替わるとしてもそう易々と会えるような人間ではないはずなのだ。


 そんな半ば確信している自分の考えに懐疑的になっていると、この場へゴネットがやってきた。片手には沢山の果物が盛られた器。もう片手は僕が頼んだものとは種類の違うパン。それらを持ってこの空間に進んできた。


「なぁ、トト。本当にフルーツの盛り合わせだけで良かったのか?」

「あーうん。ありがと」


 ショーンから視線を外し、トトはゴネットから器を受け取る。それからゴネットは席に座り、「それで?」と己の疑問を言葉にした。


「マテル、この人誰なんだ?」


 当然の疑問に僕は答える。彼は僕の友人で、今朝知り合った、と。

 それを聞いたゴネットはならばと自己紹介し、お返しの自己紹介でショーンも名乗る。


「僕はショーンだ。奇しくも無職でこの場にいるという巡り合わせから話が合わせやすくてね。マテルと友人になった次第だ。よろしく頼む」


 ゴネットとは握手を交わし、友好的に接するショーン。だけれど、トトは「なるほどね」と何やら納得している様子で、僕は今日もまた疑問を抱えなければならないようだった。













はい、そんなわけで、どこで出そうかと考えていたショーンをここで投入。

理由は皆さん知っているはずです。

トトはショーンの自己紹介でなんとなく察しました。マテルの立場を知っているからですけど。

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