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相棒のスライムを連れて  作者: 野生のスライム
四騎士の塔
26/43

二つの問いと二つの問い

「ごめん、待った?」

私は息を切らしてそう言った。

待ち合わせの場には、一週間放置された読者が、私のことを待っていた。

私が来たことに気がつくと、読者は一言、こう言うのだ。


「茶番挟む暇あるなら次書けや」


はい、本編始まりまーす


 


 同一だと迷いなく言えるほどに、初代国王と怪盗ホートスは似ていた。しかし、同一人物はありえない。

 記憶が正しいのなら、フィシアム王国での王位継承は三十年周期だと僕は教わった。不慮の事故や病により、代替わりを余儀なくされたのなら、その限りではないらしいのだけど。とかく、おおよそ三十年だと計算すると、当代は九代目であることから、初代国王は約二百と七十年も昔の人物ということになる。

 つまり、怪盗ホートスはありえないくらい初代国王と似たそっくりさんというわけだ。だって、ホートスが初代国王であるのなら、初代国王は人間として、それだけの長い時間を姿も変えずに生き続けていることになるんだから。そういったものは創作以外にありえるわけがないのだ。

 そんなところで、現代の国王様が起き上がり、僕はそちらに向き直った。国王様は「んんっ」と喉を鳴らして調子を切り替えたようだ。


「いやはや、すまぬな。立場を忘れ、やや取り乱してしまった」

「いえ、お気になさらずに」


 本当に、向こうは申し訳なく思っていたとしても、僕は全然気にしてないというか、おかげで喉のつっかえが取れた気分だ。むしろ「ありがとうございます」まで言いたい。けれど、それは流石に失礼になりそうだから、僕は自然な言の葉を取り繕う。


「して、儂の聞きたいことは終わったわけだが、そうさな。ここまで来て、これだけで帰るのは、そなたにとって意味は薄いだろう」


 短くも生え揃えられた髭を弄りながら、国王様はそう述べる。僕は別に、もう帰ってもいいと思ってるんだけど、そんなことを言い出せる度胸はない。口外にこんなところにいられるかって言ってるようなものだし。


「ふむ、では特別に、二つ。儂に問うことを許そう」

「いいんですか?」

「なに、急に呼び出して問い掛けた詫びのようなものだ。互いに二つなら文句もあるまい」


 国の頂点に立つ人物に、質問をすることができる重要性は、一応僕は理解しているつもりだ。無論、ゴネットみたいに有効活用とかできそうにないし、気になって仕方ないとかの衝動に駆られる疑問も、今は特にない。

 国王様がわざわざ僕を呼んだのはお爺ちゃん関連だろうし、怪盗ホートスは顔が似てるってだけでほとんど関係ない疑問だし。

 取り敢えず一つ、本当のことが返ってくるかは分からないけれど、聞きたいことを僕は口にする。


「あの、それなら、一つ。失礼を承知して聞きたいんですけど、ダァシャイヤスさんを雇ったのは戦争をするためだって噂は本当なんですか?」


 言ってしまった。質問してしまった。でも聞きたかった。少し前の噂。ここに来る前、平原をゴネットと歩いていたときにも話題にした大騒動。今、目の前にいる国王様自らが多額の差を付け、ダァシャイヤスを門番として雇い入れた裏話。嘘か真か、戦争準備のために戦力強化を始めたと、当時は火の手のように話が広まって騒ぎとなった。


「ははっ、中々に遠慮がないな」

「すみません。駄目な質問でしたら別のに」

「いや構わん。噂は所詮噂だ。本当に、あの門番は反省のために雇い入れたのだからな」

「そうですか」


 うーん、見え透いた落とし穴を踏み抜いたかと思った。そして国王様の言っていることが本当なのか嘘なのか分からない。戦争を起こす気なら僕みたいな一般人に言うわけもないし、でも、嘘だとしても安心はできた。むしろ戦争の準備だとか肯定されたらどうすればいいか僕には検討もつかない。


「では二つ目を」


 やはり、こういった分野は苦手だ。こんな場面を喉から手が出るほどに望む人だっているんだろうけれど、無駄に使うことしか思いつくことができない。だからもう、やけくそというか、昔、授業でふと「何でだろう」と思ったことを僕は問うことにした。


「四騎士の塔って何であんなに高く造ったんですか?」


 外壁のみでも充分に高くて、こと防衛に関しては壁だけで完結しているように僕は思えていた。四騎士の守護領域は壁から区分けすればいいし、わざわざ壁よりも高い塔を建てる理由が分からない。学校で先生に聞いてみたときは、「見栄だろうな」と言っていた。だが、それは正式な解答ではなく、先生の所感で憶測だ。

 四騎士の塔は知られていても、建設理由は防衛のため以外に公開されていないから、一般人にはそこまでしか知ることはできないのだ。で、その建設理由が僕には納得できるものではないから、気になってしまう。

 四騎士の塔は初代国王から三代目国王にかけて、およそ八十年間掛けて造られたものだ。だから少なくとも、真実はその三人が握っていると僕は思った。今はその延長で、もしかしたら王家にその理由が受け継がれていないかなぁ、なんて考えたのだ。なら現国王様も知ってるかもなぁとか思ったりして、僕は質問をした。


「ふーむ、そうか、それか……」 


 国王様は渋るように考え込む。理由を公開されなかったということは、それを公開しなかった理由もあったはずなのだ。だから、こんな質問をして素直に答えが返ってくるとは考えていないけれど、そこまで悩む必要がある理由なのかとも僕は感じた。


「望む答えにできなくてすまないが、伝え聞いた話では、宇宙(そら)を観るためだと儂は聞いている」

「宇宙ですか」

「流石に、それ以上は秘匿法の範囲故な。王家以外に漏らすことはできん」

「あぁいえ、不満に思ったわけではなくて、少し意外だったというか」


 宇宙。星々が輝く遠方の頭上。そのために造られた四つの塔。できるだけ星を大きく観るのなら、高い場所だった方が良いのだろう。だけど、そんなことのためにお金と八十年の時間を使ったのかとなると、些か疑問が浮かぶ。やはり、話せることではないから、適当なことを言われたのかな。

 疑問は始めから解けるとは思っていなかったし、内容が嘘か本当かはともかく、きちんと答えてくれた国王様は人が良いのだろう。答えられないものは最初から、教えられないと突っぱねられたっておかしくないのだから。


「さぁ、短き時間ではあったが、儂は充分に楽しめた」


 机の引き出しからだろう。国王様はそこから、革袋の小さな包みを取り出して、机の上に乗せた。


「だが、問い二つでは足りるものではないだろう。マテルよ。そなたに時間を取らせた詫びだ。旅路の資金にすると良い」

「あっ、ありがとうございます!」


 一度、僕は予想外の言葉に躊躇してしまう。けれど最初に遠慮はしなくていいと言ったのは国王様だ。だからありがたく、僕は歩いて近寄って、国王様からそれを受け取る。

 詫びだなんだとは言うけど、形式として見れば、これはまず間違いなく下賜の類いなんだろう。ジャラジャラ言ってる現金な下賜だけど。下賜ってもっとこう騎士として認められて王様から剣を~っていう印象なんだけどなぁ。いや、僕の場合、ただの一般人だから賜ること自体奇跡だし、多くの場合、貰って嬉しいのはお金なんだろうけどさ。うーん、現実的。


 その後、僕は国王様から引き留められるように、準備は怠ることのないようにとか、旅は気をつけるようになど、似通った注意をされた。また、注意の後は年の功というか、旅に役立つだろう知識を語られた。国王様は結構豆知識が豊富なようで、静電気は一度壁や地面を手をつければ痛くないとか、ナメクジは塩や砂糖を掛けると小さくなるなど、色んなことを教えてもらった。


 僕は、どちらかと言えば雑学は好きな方だ。無駄だと感じる知らなかった真実は、それでも「へぇー」と驚くことができるから。だから国王様が語る知識には、無意識にも食いついてしまう。まるで久々にお爺ちゃんと話しているみたいで、その短い一時は非常に楽しいものだった。


「では、マテルよ。達者でな」

「はい!」


 だから別れの時も、いつかまた会えると思えたのかもしれない。一国の王様相手に何をとも思うけれど、それでもやはり、また昔のようにお爺ちゃんに会いに行く気分で、僕は国王様の部屋から去った。





いや、ほんますまんかった。

リアルな事情が進行形で忙しいってのと古戦場が忙しい。あと明日明後日辺りに指の骨の固定に刺したピン抜く予定が入ってもう辛い。治るのは良いけどさ。


取り敢えず、次回も一週間頻度か、一週間以内に更新します。一日一文以上は書くようにしてるからね。私が死なない限りいつかは完成する理論。

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