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相棒のスライムを連れて  作者: 野生のスライム
四騎士の塔
23/43

イチゴジュース

一週間以上空けてすみません。

指の骨折ってから入力しづらくて仕方なかった。

さて、本編は久しぶりなので、簡単なあらすじをば。

「王城向かう最中、トトとゴネットがくっついた。以上ッ!」

ちなみに骨折ったことと並んで話の展開が遅いってのが最近の悲しみ。




 


 しばらくして、もう王城も間近というときだ。ようやく二人は落ち着いたようで、ゴネットに倒れ込むような形の体勢だったトトは、ゆっくりとその身体を起こした。

 実際に時間を測れば、そんなに長いことはなかったのだろうけれど、僕としてはかなりの時間量を感じた。特に、馬車の中という狭い空間だからこそ、気まずかった。

 まぁ、トトはそんなことはないようで、しっかりと密着した唇をゴネットから離すと、楽しそうに笑っていた。


「えへへ、勝手にキスしちゃったし、この場合、私が責任を取ってゴネット君と結婚ってことになるのかな?」

「よかったねゴネット。独り身人生じゃなくなるってさ」


 トトの言う理論に首を傾げたくなるけれど、僕は敢えて触れなかった。その方が面白そうだったからだ。


「あっそうだ。なんならこの後、式場でも手配しようかな」

「手配って、そんなに簡単な話なの?」

「うん、親戚に結婚専門の仕事をしている人がいてね。四騎士の給金ってそれなりに良いから、資金は結構貯まってるんだ」

「へぇ、そうなんだ」


 何やら話がどんどんと纏まりつつあるけれど、可笑しな話、ここまでゴネットの意思は一切介入していない。一瞬、可哀想だなんて思ってはみたが、よくよく考えればトトは美人だし、四騎士っていうしっかりした仕事も得られそうな勝ち組人生の道に、僕は僅かながらに羨望を覚える。

 そこで、ようやく主役の一人であるゴネットは話に交じってきた。唇に残る感触が信じられないのか、指で沿うようにして押さえている。急なことだったし、気持ちは分からないでもない。経験したことないけど。


「えっと、その、なんだ。別に、俺には好きなやつとかいないから、トトがいいんなら俺も断る理由はないんだが、いいのか? 俺なんかで」


 自信なさげにゴネットは問う。奥手だ。鈍感だとか言われる由縁はそんな性格だからなのかもしれない。少なくとも僕は鈍チンめと評価する。トトの表情だとか、話している内容で気づかないのだろうか。そもそもなんでキスをしたのかとか考えないのだろうか。

 いや、ゴネットの場合、それらを考えた上で、好意に否定的な意味をつけてしまうのだろう。半ば頭が良いから、僕が思いつきそうもない理由を考えついたのかもしれない。

 そんなゴネットの頬をトトは摘まんで、引っ張った。


「いいのっ! それとこれから、『俺なんか~』ってあんまり卑下しないこと。君を貶める発言は、君に好意を向ける人を貶める発言にもなるんだから」


 思い返せば、ゴネットは何かと自分を過小評価していることが多い。旅に出るときだって、「お前を守りきれるか分からない」とかなんとか言って素直に僕を同伴させようとはしなかったし。でも結局は身を挺して魔物から守ってくれた。だから、発言に予防線を張る癖がついているんだと、幼馴染みの観点からは窺える。

 あとでそんな情報をトトに流しておこう。早いけど、結婚祝いのつもりで、友人代表のような感覚で、友の情報を売ろう。


「それに、普段の言葉は自己暗示になるんだから、常に明るくないと憂鬱になるよ。ほら笑顔笑顔!」

わはった(分かった)わはったって(分かったって)!」


 人生のちょっと先を行く先輩からのアドバイス。ゴネットは無理やり頬を引き上げられ、歪んだ笑顔を作らされていた。

 それは無視して、トトの言葉は参考にしようと、僕は覚えるために心で反芻する。そして、トトのさっぱりとした性格に、ゴネットは覚悟を決めたようだ。トトの両手を握って顔から離させると、やつは照れくさそうにこう言った。


「ただ、あれだ。いきなり結婚とかは早いから、こ……いや、友達から──」

「うん、そうだよね。結婚してからの恋とか貴族にさせればいいし、私達は恋人から始めよう!」


 まるでその言葉を待ってましたと言わんばかりに、トトはにこやかな返答を渡す。僕の耳にはしかと、友達からと言うゴネットの言葉が聞こえたのだけれど。もしかして、トトは最初から恋人関係になるつもりだったのだろうか。ここまでの流れを、結婚式云々の話で狙っていたのだろうか。怖いなぁ。

 一方当人は、意見として結婚からではなくなったという一致があり、トトの提案には反論できないようだった。まぁ、ゴネットも何か言いかけていたし、不本意ではないのだろう。あぁ、早くも幼馴染みが尻に敷かれる未来が見える。


 そして、丁度良いというか、僕は分かってはいたことなのだけれど、やっと馬車の揺れが止まった。窓から見えた景色からしても、到着までの時間なんてそう長くは見えなかったから当然だ。むしろ、二人の唇が離れるのとどちらが先なのだろうと不思議に思っていたほどだ。

 馬車が止まると前方、御者台の方から物音がする。出発前、外の警戒をしようとアーリさん自らが御者を勤めていたから、きっとアーリさんが降りた音なのだろう。

 やがて、アーリさんは半円を描くようにして僕側の扉を開くと、「降りてくれ」と皆に声を掛けた。当然、僕側の扉が開かれたのだから、一番先に降りるのは僕だ。白を右腕で抱え持ち、僕は外に出た。


「おや、顔色が優れていないな」


 僕が明るい空の下に出た直後、アーリさんは僕を見て、そんな感想を述べる。ということは、やっぱり酔いが治ってないのだろう。けれど酔い止めの薬も飲んだし、心配することはない。


「えぇ、まぁでも大丈夫ですよ。トトから薬を貰いましたので」

「薬? ……ほう、トトから薬。ちなみにトト、マテル君に何を飲ませたか聞いても?」


 トトの方を向いてアーリさんは問う。目が据わっている。逃げも、言い訳も許さなそうな目だ。そして、そんな問いに僕は薬じゃないのかと疑問を思う。だから僕もトトを見た。

 じっとアーリさんに問い詰められたトトは、しかし、それに臆することはなかった。何でもないかのように、そよ風に言葉を乗せるようにして、馬車を降りながらふっと答えを口にする。


「イチゴジュース」

「ふむ?」

「イチゴジュースを飲ませたの。果肉を()した市販のやつ。こっちは果肉入りね」


 腰のポーチの中から、トトは新たな試験管を取り出した。中には確かに粒やら何やらが入っている。簡単に形容するとジャムみたいな液体だ。

 トトの胸ポケットからは先程見たネズミが顔を出していた。つぶらな瞳が僕を見据えている。心なしか「騙されてやんの」と言われている気分。

 そっかぁ、イチゴジュースかぁ。道理で苺の味がしたと思ったぁ。だって苺だもーん。


「えっと、トト? 僕は酔い止めって聞いたんだけど」

「多少は気分が良くなったでしょ? 思い込みだろうけど。あの中で吐かれたら皆吐き気に襲われるからね。仕方ない仕方ない」


 吐かなかったって意味では、確かに効果がある薬なのだろう。勿論、ジュースのことではなくて、状況というか、薬だと僕が思っていた事実が薬になっていたらしい。こりゃ参ったね。

 それはそれとして、苺って結構値段の高い果物だったと僕は記憶しているのだけど、トトの様子からして常備しているみたいだし、そこは流石四騎士ってことなのかな。


「はぁ、その程度のことなら問題無いが、マテル君、気分が治らないようなら言ってくれ」


 丁寧にも心配してくれるアーリさんには悪いけれど、僕は本当に大丈夫だと思う。酔いの原因は慣れない不規則な揺れだったのだから、それが終わった今になって悪化するなんてことはないはずだ。

 でも、わざわざ気遣ってくれているし、それを無下にはしたくないので僕は返事をする。そこで丁度ゴネットもパリト君を連れて降りてきた。


「さて、これから登城(とじょう)するわけだが、二人は行き先が違う。だからマテル君は私が案内しよう」

「じゃあゴネット君は私だね」


 両手を使い、絡ませるようにして、トトはゴネットの腕に抱きついた。その様子にアーリさんは意外そうな顔をするし、ゴネットはどうすれば良いのかと困り顔で若干慌てている。

 何でだろうね。僕にはトトが獲物に絡みつく蛇に見える。そしてそんな獲物は、僕へ助けてと言いたげに目を向けた。


 改めて観察すれば壮観な景色だ。城の外装は細部にまで装飾が施されていて、職人の高い技術力が窺えた。大きさは四騎士の塔ほど高くはないが、それでも王城の威厳を感じさせる巨大な造りに僕は圧倒される。


「では行こうか」

「はい!」


 アーリさんの声掛けに即座に返事をして、僕は先を歩いていったアーリさんについていく。それに合わせ、トト達も移動するようだ。

 幼馴染みを救えなかった己の経験不足を悔いながら、僕は後ろを振り向かない。無視したのは視線に気づかなかったからであって、面白そうだからではない。そんな言い訳が後で成り立つように。





言わずもがな、トトの親戚にいる結婚専門の人は結婚詐欺師。そして式運営の方にもそちらの家系の人が。だからトトはいくつか式場を紹介してもらうことができます。まだだけどね。

それとトトがゴネットの腕に抱きついた理由ですが、率直に言えばゴネットの案内役をアーリに取られたくなかったからなんですよ。

ほら、ゴネットはこの後、お爺さんの工房に向かいますので、ええ、外堀を埋めるためにトトは行動しているわけです。


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