第4話:『パツパツの糸が切れる音』
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第4話をお届けします。
ここまで3人(+リーダー)でワイワイやってきたフラボーですが……今回は、いつも裏方で支えてくれている「あの男」の限界が訪れます。
クリエイターなら誰もが一度は経験したことがある(?)あの絶望の瞬間から、物語は急展開へ。
それでは、第4話どうぞ!
「おい原始人! 見ろ、これが一万円札の力だぞ! このシルクハットの中に入れば、お前も一瞬で大富豪だ!」
動画撮影の余韻が残りまくっている狭いマイルームで、かずとさんがシルクハットをブンブンと振り回しながら大声を張り上げている。
「成金、甘いです。ブルーシートで起こした火の粉が、今そのシルクハットの中に飛び散りました。大富豪、大炎上です」
たくみはたくみで、体にブルーシートを巻きつけたまま、死んだ魚のような目でシュールなボケを被せていく。
「ぎゃあああ!? 熱い熱い! 嘘つけ、火なんか出てないだろ! おい暴れるな、たくみ!」
ドタバタと狭い部屋でもつれ合う二人。その騒音を鼓膜の奥で聞きながら、俺――たけるは、限界を迎えた目で液晶画面を睨みつけていた。
カチ、カチ、カチ。
重いエンコードのプログレスバーが、一分に一ミリの絶望的な速度で進んでいく。もう三日、まともに寝ていない。頭の芯がジリジリと焦げるように熱かった。
「……おい、マジで静かにしてくれ。今、一番重いデータの書き出しをやっているんだから……」
ヘッドホンの隙間から掠れた声を絞り出したが、お祭り騒ぎの二人の耳には届かない。
「あ、すいま……おわっとっと!」
たくみの体が、かずとさんに突き飛ばされて派手に後ろへよろめいた。
スローモーションのように見えた。たくみの泥だらけのスニーカーの踵が、床でピンと張り詰めていた、メインPCの電源コードに引っかかる。
(あ――)
声にならなかった。
――ブツンッ!!!
鈍い音が部屋に響き、コンセントからコードが勢いよく引き抜かれる。
次の瞬間、俺が何十時間もかけて編集していた世界が、一瞬で真っ暗な画面へと沈んだ。
静寂。
さっきまでの喧騒が嘘のように、部屋の空気が一瞬で凍りつく。
「……あ」
「……抜けましたね。コード」
俺はゆっくりとヘッドホンを外し、デスクの上に置いた。自分の手が、怒りと疲労で小刻みに震えているのが分かった。
マウスを何度もクリックする。だが、PCは冷たい沈黙を返してくるだけだ。自動保存のバックアップファイルごと、データが完全にクラッシュしていた。
「……バグった。全部消えたわ」
「え、あ、いや! たける、すまん! わざとじゃなかったんだ! たくみがブルーシートで……」
「いや、かずとさんが押したからで……」
「うるせえよ!!!」
机を思い切り叩く。激しい衝撃音が響き、二人がビクッと肩を跳ね上がらせた。普段、裏方として声をあらわにすることのない俺の大声に、部屋が完全に静まり返る。
「わざとじゃない? いつもそうじゃん! お前らが現場でヘラヘラ暴れて、面白いボケを思いついたって騒いでいる間、俺がどれだけの時間を削って、この画面に向き合っていると思っているんだよ!」
「……たける。でも、そんなに怒らなくても……」
「怒るだろ! もう終わりだよ。お前らのアホな介護をするのは、もう疲れ果てた。……フラワーボーイズは、今日で解散だ」
限界だった。人気度の格差も、ワンオペの仕事量も、全部のパツパツの糸が切れた。俺は床に転がっていたリュックを掴むと、財布とスマホだけを押し込んだ。
「たける」
ずっと部屋の隅で黙って見ていたリーダーのしょうたが、初めて声をかけてくる。
「しょうたさんも、あの二人のアホに付き合って、そっちばっかり見ていればいいじゃん。俺の頑張りなんか、最初から誰も見ていないんだからさ。……じゃあな」
ドアを思い切り叩きつけるように閉め、俺はマイルームを飛び出した。
あとに残されたのは、通夜のような重苦しい沈黙。
かずとさんは頭を抱えて床にへたり込み、たくみはブルーシートを握りしめたまま、完全に言葉を失って立ち尽くしていた。
第4話を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
まさかの解散宣言……!データが消えた瞬間のあの空気、書いているこちらも胃が痛くなりました(笑)。
バラバラになってしまったフラワーボーイズは、一体どうなってしまうのか!?
たけるの怒りは収まるのか……?
次回の第5話で、この大ピンチの続きを描きます!
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